会頭Message


 現在の産業や経済などについて、犬山商工会議所 会頭が
思ったこと・話したことを月に1回程度掲載します。

 四代会頭 日比野 良太郎(現名誉会頭)の会頭メッセージは
スクロールしてご覧いただけます。
(掲載期間 平成26年10月1日~令和元年10月31日)


中小企業の稼ぐ力の強化

2024年11月 1日

 今回のメッセージは、過日、日本商工会議所におきまして、全国515の商工会議所会頭が集結した139回通常会員総会が開催されました。その際での日本商工会議所小林会頭(三菱商事㈱相談役)のご挨拶からその一節をご紹介させて頂きます。
 はじめに、大規模自然災害に見舞われた被災者・事業者の皆様に、心からお見舞い申し上げます。能登半島地震で被災された皆様を含め、一日も早い復旧・復興に向け、政府への要望や支援を継続して参ります。
商工会議所を創設した渋沢栄一翁が肖像となった新1万円札が、7月3日に発行されました。渋沢翁は、公益を尊重する「道徳」と利益をもたらす「経済」は、ともに重視すべきものであり、これらを両立させることが重要であるとする「道徳経済合一の考えを生涯追求しました。我々、民間企業が成長の原動力としてのイノベーションを絶え間なく起こしていくことで、より良い社会づくりに貢献し国の繁栄につなげていく、「企業経営者の社会的責任」の大きさを説いたものと受け止めています。
 渋沢翁の肖像を見るたびに、企業経営者や商工会議所会頭としての取り組み姿勢を問われている気がして、身が引き締まる思いです。
 我が国経済が持続的に成長するには、企業数の99.7%、雇用の約7割、3大都市圏を除くと約9割を占める「中小企業の稼ぐ力の強化」が不可欠です。
 中小企業にも賃上げの動きが広がっていますが、依然として約6割が防衛的な賃上げを強いられており、持続的な賃上げには原資の安定的な確保が不可欠です。
 中小企業は、円安や物価上昇によるコスト増や人手不足などに直面する中、原資の確保に資する「稼ぐ力の強化」に向け、価格転嫁の浸透に加え、生産性向上やイノベーションにより、物価上昇率や借入金利を上回る付加価値を実現することが求められています。
 価格転嫁は、政府の「労務費転嫁指針」や価格交渉促進月間、Gメン等の監視強化により進みつつありますが、まだ緒に就いたばかりの状況です。ここで手綱を緩めず、大企業と中小企業の共存共栄関係の構築を目指す「パートナーシップ構築宣言」の実効性を高め、中小企業にも成長の果実を転嫁の形で配分するなど、「価格転嫁の商習慣化」に向け、官民あげて粘り強く取り組むことが必要です。
 中小企業が元気になれば、地域やわが国の経済も元気になります。発注側はもとより、全ての企業の経営者は、強いリーダーシップにより社会的責務として、価格転嫁に取り組んでいただきたいと思います。
付加価値拡大については、社会のニーズを的確にとらえたビジネスモデルの変革に取り組みつつ、税財政支援を活用しながら、省力化やデジタル化による生産性向上、設備投資や販路開拓、知財経営リテラシーの向上や知財の活用・保護などに取り組み、新たな付加価値を積極的に創造することが重要です。さらには、人材の確保・育成・省エネ・脱炭素への対応、新分野への進出、事業継承・M&A、創業などに、チャレンジすること が求められます。
 我々、商工会議所は、全国515商工会議所と126万会員、役員、議員のリーダーシップ、青年部・女性会・海外の商工会議所等とのネットワークという、類まれな強みを持っています。日本商工会議所は、全国の商工会議所の皆様とともに、希望が持てる日本を次世代に引き継ぐために、「日本再生・変革」に向け、積極果敢に取り組みます。
 皆様の一層のご理解・ご協力をお願い申し上げ、私の挨拶とします。

危機管理 減災に備えて!

2024年10月 1日

 7月から実施いたしました、桃太郎プロジェクト「クラウドファンディング」におきましては、大変多くの皆様からご支援賜りまして誠にありがとうございました。目標金額を上回り106%を達成いたしました。これもひとえに会員皆様のお力添えとご協力のお陰と感謝申し上げます。
 今後は、犬山を始めとする木曽川流域の商工業・観光活性化を進めて参ります。これからもご支援賜りますようよろしくお願いいたします。
 さて、この8月以降、日本列島では多くの災害が発生しております。私は8月8日から9日にかけ、三重県伊勢市に出張しておりました。今年1月に発生した能登半島地震の際にご支援させて頂いた支援物資搬送時の様子を話してほしいとの依頼で、午後4時半頃に宿泊ホテルに到着し、テレビニュースで地震発生のことを知りました。日向灘でのマグニチュード7.1の地震、最も揺れの大きかったのは、宮崎県日南市で震度6弱を観測、日南市と当市は姉妹都市であり、商工会議所同士も毎年交流していることもあって、即座に現況確認いたしました。幸いにも大きな被害には至っておりませんでしたが、その後、政府は今回の地震を受けて、「南海トラフ地震臨時情報、巨大地震注意」を発表いたしました。これにより、「関東から沖縄県の太平洋側の広い範囲で、今後1週間、強い揺れや巨大な津波に襲われる可能性がある。」と発表し、更に自治体などには、迅速かつ正確な情報の伝達を行うことや備えの再確認を呼びかけることなどを求めました。以来、様々な行催事が1週間自主規制されました。その後に、列島各地に大雨や交通機関への影響をもたらした台風10号は、夏台風の特徴の一つである「超ノロノロ台風」でした。非常にゆっくりとした速度で進みながら日本付近に強い暖湿気を送り込んだため、台風から離れた地域でも大雨の被害が発生いたしました。
 トヨタ自動車では、従業員の安全確保に加え、部品輸送に影響が出たため、国内14工場が6日間の稼働停止になり、多くの企業に連鎖いたしました。また、農作物も大きな被害を受けています。当社の静岡県湖西市にある湖西工場も、膝下位まで浸水いたしました。幸い大事には至りませんでしたが、従業員の車を水没から守るため避難駐車場へ誘導するなど大変なことでした。
 そんな中で、❝ほっこりする❞出来事がございました。「不安な方は立体駐車場へ」と、台風の中、大分市にあるパチンコ店「マルハン大分古国府店」が、公式Xを通じ2日間の駐車スペース約300台分を近隣住民に開放したことです。車両を水没などから守るため、広大な駐車場を近隣住民に開放するというもので、「X」での投稿はみるみる拡散し、駐車スペース約300台分が満車になり、台風通過後、同店は「地域の役に立った」と胸をなで下していました。
 非常に残念なのは、世界自然遺産の島・屋久島の樹齢3000年と言われる屋久杉の「弥生杉」が暴風の影響でしょうか、太い幹が根本から折れて倒れるなど、観光事業において大きな被害が出ております。とにかくこのところ続く、浸水、突風、崖崩れ、農作物、停電による体調不良、その他多くの災害被害が発生しております。幸いにも犬山では大きな災害被害は免れておりますが、今後に備え、常日頃からの養生を心がけて、少しでも減災できるよう心掛けて、経済に影響が出ないようにしたいと思っております。
 これからも10月中頃までは台風シーズンが続きます。皆様、準備の程お願い致します。

祝 石垣市商工会設立50周年

2024年09月 1日

 過日、8月10日に沖縄県石垣市商工会設立50周年記念式典に参列いたしました。今回のメッセージでは、石垣市商工会と当所との姉妹提携に至った経緯について紹介させていただきます。
 犬山市商工会当時、昭和55年頃の日本の経済動向は、高度経済成長期が始まり経済環境の変化等中小企業者にとっては極めて厳しいものがありました。このような情勢下において、石垣市商工会は地域経済の拡大と高度化に対応するため、会員の固い団結のもとに積極的な振興事業として、県外商工会との交流計画とその推進を重要な施策としたのであります。この計画は、石垣市商工会長から沖縄県商工会連合会にも提案され、本土先進地との交流について重点事項として取り上げられました。このような背景のなかにあって、石垣市商工会は、犬山城、明治村、モンキーセンター等、犬山市の観光地を訪れ、その優れた自然景観と歴史、文化に富んだ観光資源に深く感銘を受けると共に、沖縄最南端離島として、観光開発に力をそそぐ立場から、犬山市商工会と共通点である観光開発や将来的見地より相互の文化及び産業の交流を通じ、提携する格好のパートナーとして、犬山市商工会に白羽の矢をむけられたのであります。そして、石垣市商工会は、観光開発を通じ、共に犬山、石垣市両市に最も縁の深い、名古屋鉄道㈱取締役社長を通じ、犬山市商工会に石垣の産業、観光の実態と開発の意欲を紹介し、姉妹提携希望の縁談が持ち込まれたのであります。
 その架け橋に、犬山市商工会は、再三に亘る理事会協議の結果、視野を広く求め中小企業を取り巻く経営環境の拡大、或は体質改善強化策のうえからも、提携の機運が盛り上がったのであります。
 昭和56年3月、犬山市商工会は、実態を調査するため犬山市商工会長を団長とした訪問団を石垣市に派遣し、名古屋鉄道㈱取締役社長の紹介により対談、双方代表の心のなかに固い提携に向う契の握手が交わされたのであります。
 また、同年4月には、石垣市商工会長を団長とし犬山市商工会に表敬訪問、市内一色の満開の桜に囲まれ最終的な姉妹提携の協議が整ったのであります。
 そして両市商工会は、同年5月それぞれの総代会で議決を諮り、同年6月1日、石垣市商工会は会長以下45有余名の代表団が大挙犬山市を訪問、名鉄犬山ホテルにて姉妹商工会調印式を挙行するに至ったのであります。
 このような、山、海、歴史、環境、気候、資源、風土等の異なる両市商工会が姉妹提携を結び、交流を契機として観光のみならず諸産業文化においても意欲的な活動を展開し、両市商工会の友情と親善を深め、末長く姉妹商工会として発展することを目的として提携宣言されたのであります。
 以来今年で姉妹提携から43年経過しておりその間、物産・文化・企業間交流始めイベント、記念行事への参加等々振興事業を行い友情と親善を深めてまいりました。
 その中でも、平成24年の姉妹提携30周年に合せ、犬山市と石垣市は、商工業界の繋がりを発展させるため、石垣市商工会と犬山商工会議所の交流活動を市として積極的に支援するとともに、商業や観光などの経済交流を充実・拡大し市民レベルの交流につなげていくことを目的に、「双方の経済分野における友好交流の推進に関する宣言書」を調印するに至りました。
 今後も更に経済交流を核とした地域の活性化を実現するため、市民・企業の経済活動を積極的に行ってまいる所存でございます。
 石垣市商工会設立50周年誠におめでとうございました。

新札発行の経済効果は約1.6兆円程度か、広く流通する最後の紙幣となるか。

2024年08月 1日

 20年ぶりに新紙幣の発行が7月3日から始まりました。これによる経済効果は、約1兆6,300億円と言われております。しかしながらマイナス面も我々にとっては多くありまして、以前にお伝えしましたとおり、新紙幣に対応する自動券売機・自動販売機、両替機、レジなど、当然ながら各自で購入しなければなりません。自治体によっては多少の補助があるとお聞きしますが、かなり高額な資金が必要になります。
 新紙幣への対応状況を調べてみますと、未だに進んでいないのが現状です。
 自動販売機においては、メーカーの社員が商品補充の際に、新紙幣対応プログラムの変更を手掛けており、なかなか進まない状況です。鉄道関連においては、ほぼ完了とのことですが、無人駅はほとんどが未対応です。特に驚くのは路線バスの対応です。利用者が多い福岡や神奈川においては約50%が対応できていない状況です。利用者への対応策は、先ずバスにシールを貼り、❝新紙幣に対応しておりません❞と表示し、次に、バスの運転手が旧紙幣をたくさん持って新紙幣と交換する。こんなことを当面やらなければならないとしています。これは、多額の現金を持っているとアピールしているようなもので、非常に危険です。その他、飲食店のレジにおいても約50%が未対応です。未だ対応できていないのは、道路際にあるパーキングメーターや、コインパーキングなどの有料駐車場です。
 なぜこのような事態になってしまったか。実際には、政府(財務省)より、❝日本銀行券1万円、5千円及び千円について、偽造抵抗力強化等の観点から、様式を新たに製造することとし、所要の準備に着手しました❞と、主な様式を含め2019年に発表しています。しかし対応しきれていないというのは、やはり我々側にも何か問題があり、そして政府にも問題があるのではないかと思います。
 次に現在、日本におけるキャッシュレス化がどのくらい進んいるのか。特に進んでいる韓国、中国と比較してもかなり遅れています。2013年の日本のキャッシュレス比率は15.3%、10年後の2023年では36.0%です。政府は2026年までに40%を目指すと指針を立てていますが、おそらくクリアでき、それ以上の結果になると思われます。
 参考までに、韓国の95.3%、中国の83.8%、オーストラリア72.8%、イギリス63.1%と比べると日本のキャッシュレス化はかなりの遅れです。
 今回の新札発行は、日本どころか全世界中で、最後になるのではないかと囁かれています。日本においてキャッシュレス化が大きく進むのは、新札発行ではなく、日本銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行することがきっけとなるのでは。向こう数年のうちにも正式に決まる可能性があり、2030年代には実際に発行されるのではと言われています。
 日本銀行が1885年から約140年にわたって発行してきた紙幣のうち、本格的に流通し、広く利用される最後の紙幣になるという歴史的な意義があるのではないでしょうか。

 最後に、皆様にお願いです。
 犬山を始めとする木曽川流域の商工業・観光活性化を進めていくことを目的とする「桃太郎外伝クラウドファンディング」がスタートいたしました。ぜひともご支援ご協力をよろしくお願いいたします。

猛暑酷暑における、職場の安全対策‼

2024年07月 1日

 猛暑が早くも続く毎日ですが、私は料理が好きなものですから、この間スーパーへ行きまして買い物をしてきました。よくスーパーへ行かれる方はお分かりだと思いますが、野菜の値段が本当に高いんです。TVで有名なスーパー「アキダイ」秋葉社長のコメントにもありましたが、私はこれまで、キャベツは本当に安い野菜だと思っていました。今の販売価格は、以前よりも約2倍近く値上がっています。さらにブロッコリーも約2倍、以前は99円でしたのに今では358円、一時は600円という時もありました。にんじんは約1.5倍、レタス・きゅうり約1.3倍、ネギ・トマト約1.2倍で、このところ野菜の販売価格の高騰が続いております。おまけに米の価格も高騰しています。昨年は猛暑の影響で不作であり、成育不良で形や色が良い「一等米」が減ってしまったことで流通が減り、需給のバランスが狂っています。今年の新米が出荷されるまでは、今後も米価格の高騰が予想されます。そんな中で、1つだけ安価で安定している野菜があります。いわゆる発芽野菜または新芽野菜の「スプラウトパック」です。もやし・かいわれ大根等々で、全て建物内での生産になり、成熟した野菜よりも栄養価の高い物もあり、安定したお得な野菜として改めて注目されています。
 この野菜の出荷が少ないと、私の商売には大変な影響があります。ちっとも段ボール箱がでない状況が続き、毎年の当社の出荷量は把握しており、状況を見込んで準備しておりますがちっとも段ボール箱は出ていきません。また、米も同様でクラフト紙の袋に入れての流通ですので、今回の自動車業界における問題も含め困惑いたしております。困った状態でして、問題の原因は、ほとんどが環境の変化によるもので、気候変動によるものだということをご認識頂きたいと思います。そうなると、今年のこれからやってくる夏ですね。7月・8月・9月の3か月間が、過去最大級の酷暑が予想されておりますので、何とか準備をしたいんですけれども、特に工場や倉庫、それから建築現場で働く方々には、大変危険な猛暑が予想されます。従って経営者やその場のトップは、この暑さ対策に向け今から万全の準備をして頂かないと、働く方々の命にも関わります。生産と向上の為にもいろいろ準備をして頂きたいと思います。当社の例を挙げますと、建屋の屋根に遮熱塗料を塗りまして、それから室内では風の流れを作りたいで換気設備を強化いたしました。風の流れは割と効果があるそうです。そして作業服ですね。作業服も何回も見直しをして空調設備ついたものとか、ひんやり感覚のものとか、今は良いものがいっぱい販売されております。それらを準備いたしております。レンタル設備もいろいろございまして、空調機器も低電力に優しい製品も出ておりますのでご参考にしてみてください。それから最後に、なかなか取り決めができないのが社内でのルール作りですね。作業の状況に応じた、休止時間・休憩時間の確保と高温多湿作業場所での連続作業時間の短縮等が必要です。とにかく熱中症を疑わせる兆候が表れた場合は、速やかに作業の中断などのルール作りが必要です。これらの準備を今からしておいて頂きたいと思います。ちなみに弊社では、工場内にプレハブ小屋を作って、その中をクーラーでかなり冷やして、いつでも逃げ込める箇所(クールシェルター)を設けており、休憩時間でなくても、その職場責任者の判断で危険だなと思ったら即座に入りなさいと指示するなど、暑さ対策を今から進めております。
 どうか皆様の事業所におかれましても、万全の対策をお願いして、それと同時に、あと7年位しかないと言われているこの地球温暖化に対する対策をみんなで取らないと、取り返しのつかない事になるんじゃないかと思っています。
 温暖化対策に向け、ほんの少しでも出来ることから各事業所で取り組んで頂きたいと思います。

"7月3日より新紙幣が発行されます"

2024年06月 1日

 新紙幣の発行は7月3日から開始され、一万円札、五千円札、千円札のデザインが新しくなります。2022年から準備が始まり、印刷局での紙幣準備と鉄道関連設備においてはほぼ完了ということですが、一方で対応が遅れているのが、飲食サービス業における紙幣を読み取るレジ、自動券売機・自動販売機で、また、現在では、セルフレジの普及が増えて製造が追いついておらず、中古機器を新たに改造して対応していくなど、新紙幣発行までの準備に遅れが生じています。
 しかしながら、新紙幣への転換対応を迫られているのは、飲食サービス業に限らず全ての事業者に共通しています。場合によっては、事業者が新紙幣への転換対応に間に合わず、最悪は、現金のみで対応することにならざるを得ないとなった場合、これは大きな機会損失になりかねません。
 新紙幣の発行を迎えるにあたり、改めて思うところが二つございます。
 一つは、これを機に、多くの店舗で、現金決済を受け入れず、キャッシュレス決済のみに移行することも選択肢にあります。近年のクレジットカードやQRコード、交通系電子マネーなど、キャッシュレス決済を行う人が増えていると同時に、顧客からも受け入れられています。
 レジで現金のやり取りをする手間や、新紙幣に対応するための機器導入、また、現金保管の必要が無くなれば犯罪に遭うリスクも軽減できます。しかし、対応できない顧客離れのリスクは当然伴います。"現金商売は止めよう、全てキャッシュ決済で、電子マネーにしちゃおう"という店舗は、必ず増えてきます。今以上に電子マネーへの対応準備は必要になります。
 我々消費者としては、クレジットカードやQRコード等は必ず持っておかないと何も買えなくなり、もちろんスマホ、電子マネーも含めてでございます。そんなに大した期待はしていないのですが、何が起こるかというと、こういった需要が起こるということです。
 もう一つは、戦後の日本でハイパーインフレが発生した際、時の日本政府は預金封鎖と同時に、新貨幣の発行を行いました。
 具体的には、1946年2月17日に預金封鎖、その約2週間後の3月2日に現行だった10円以上の紙幣を無効化。あわせて、5円以上のタンス預金を強制的に金融機関へ預金させ、生活費・事業費の一部のみ「新円」で引き出し可能とした措置です。あわせて実行された政策が引き出し制限です。世帯主と世帯員で上限を設定。更には、資産額に対しての課税など、戦後日本をリセットするための強制的な措置が敢行されたのです。
 当時のハイパーインフレは、政府債務比率がGDPの2倍になった時点から始まっています。
 一方で2023年における政府債務比率は、GDPの約260%です。日本はこれまでデフレであり、デフレから急にハイパーインフレへ移行するとは思えませんが、当時の政府債務比率から見れば戦後の状況に似ている点も気になるところです。
 今年7月の新紙幣発行の際、私は、「旧札」というものを使えなくしてはどうかと思います。
 なぜならば、日本におけるタンス預金は、一説には50兆円から80兆円、またその他にもあるのではとも言われており、これら含めると軽く100兆円の現金があるのではないかと言われています。新紙幣発行の機会に、タンス預金のあぶり出しによって、そのお金が投資や消費に回れば日本経済は一気に上昇へ向かう可能性が非常に高いでしょう。
 以上、今回は間近に迫る新紙幣発行を迎え、二つの思うところをメッセージにさせて頂きました。
※参考 新一万円札(渋沢栄一:日本近代社会の創造者,商工会議所創設者)
    新五千円札(津田梅子:女子英学塾,現/津田塾大学創設者)
    新千円札(北里柴三郎:近代日本医学の父,微生物学者,教育者) 

新入社員を迎えて

2024年05月 1日

~Z世代は多様性に寛容である~

 新年度に入り、4月1日から新入社員を迎えられた事業所も多いことと思います。
今年の新入社員は何名採用するのかと、いろいろ考えられてこられたことと思います。
希望通りに採用するのはなかなか難しい今の時代にあって、ここ数年の3年間では、就職内定を出してから、その後に辞退する人が多く、せっかく内定を出したのに、❝入社日には来なかったなあ❞と残念に思われた経験もおありかと思います。
 そこで、企業の新入社員採用時における内定辞退率について、ネット検索してみました。
2022年では16.7%、2023年では18.6%、そして、今年2024年3月時点での内定辞退率は、21.1%、約8人採用を予定するならば、10人以上の内定者を出しておかなければ、目標どおりの採用人数達成に届かないという統計結果が出ています。毎年の内定辞退率は増加しています。皆様方も採用内定時には、十分気を付けて頂きたいと思います。
そして、今年、入社された方の多くは、いわゆるZ世代真っ只中の方でありまして、我々の世代とはかけ離れた世代であります。
 このZ世代の特徴について、少しお話ししたいと思います。
ここ数年のコロナ禍においての学生生活では、入学式すらリアル開催されず、授業においてもオンライン、またアルバイトでは、いろいろな経験ができるかと思いきや、アルバイトできる店はかなり限られ、その社会経験も余りできない状況でした。
しかしながら、その代わり、情報処理の能力においては非常に長けていて、いわゆるZ世代はSNSネイティブ世代とも言われています。
次にZ世代は、叱られたことがないと言われています。いざ叱られると、非常に困った精神状態に陥る人も多いそうです。それから、自分の意思を非常に大切にする世代だそうです。要するに、いわゆる「頑固」かもしれません。それから、白か黒か、物事を決めつけるのに非常にハッキリしているそうです。我々はどちらかと言うと、グレーゾーンと言いますか、曖昧な処理をすることがありますが、この世代は、白黒どちらか、はっきりさせないと気が済まないとも言われています。
 これらの中でも、我々との一番の違いは、❝多様性に寛容である❞ということです。
この多様性については、働き方に対しても当然に多様性を尊重することになりますので、会社とZ世代社員との、いわゆるエンゲージメントを向上させる必要があり、Z世代を迎えるにあたっては、会社としても様々な多様性をもった仕事の仕方を用意しなければいけない。と言われています。いわゆる適切な評価や報酬の仕組みも作らなければいけないのです。また、個々の価値観や目標を尊重しなければいけない。それから労働力の拡大も必要です。いろいろな国籍の方がみえますので、フレキシブルな対応も広げておかなければいけないです。等々、非常にこれから先の新入社員採用に至って、我々は新しい時代を迎えることになります。
 どうか皆様、それぞれの会社で、これらを必要に応じて取り組んで頂き、特に多様性に対しては、寛容性を広げて頂きますようお願い申し上げます。

"日本の熱意ある社員5%、世界と広がる差"

2024年04月 1日

 今、ニュースの中での話題は、どうしても賃上げがメインになっています。しかしながら並んで話題になっているのが、日本人の仕事に対する熱意です。熱意が高ければ良いのですが、そうではないということで話題になっています。我々も自分自身のことを考えてみますと、熱意があるかどうかと問われると、いささかの疑問を抱きます。
 昨年5月に広島で開催されたG7サミット(先進国首脳会議)では、日本は名誉ある議長国でしたが、2000年7月に開かれた九州・沖縄サミットの時、日本はG7で最も豊かな国でした。しかしながら現在は、G7で最も貧しい国になっています。平均賃金も1番低いのが日本であり、トップのアメリカの約半分となっています。同時に、仕事に対する熱意が低いのも日本という結果が出ています。
 米調査企業のギャラップがまとめた「グローバル職場環境調査」によると、仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合が、2022年で日本は5%にとどまった。つまりこれは、20人に1人しか意欲がある人がいないということであります。この調査では、サンプル数が少なくデータがない国を除けば、調査した145か国の中で、日本の労働意識は最も低い結果が出ています。
 モチベーションをアップするというのは、非常に難しいことでありまして、その要因の第1に、以前であれば、毎年のように賃金は上がっていましたが、今は余裕なし。そして第2には、ある程度の経験年数があれば、年功序列により昇進し、どれくらい上ってきたということで、役職になることがモチベーションアップに繋がっていたのですが、今では、ポスト減らしなどにより、なかなか昇進もかなわないし、昇進すればするほど辛くなるだけだという風潮があります。そして第3には、会社に対する愛着や帰属意識が薄いこともモチベーション低下に繋がる要因の一つです。会社内でのイベントも無くなり社員同士の交流の機会も減っています。せっかく管理職になっても、実際には人の面倒を見るどころか自分自身が仕事を抱えてしまい、全く管理できない。或いは、デジタル化が進んで部下とのコミュニケーションが全くとれず希薄になってしまうというようなことが起こります。
 従業員の自発的な貢献意欲と言いますか、"エンゲージメント"という言葉で最近は表しますが、この社内における従業員エンゲージメントの向上は、"従業員が会社に対しての愛着や貢献の意志をより深めること"という意味になります。それでは今の時代どうすべきか。
 日本のような成熟した社会に向けては、先ず第1に、過剰な仕事の負担を軽減させてあげる。仕事ができる人に一極集中にて仕事を集まらさせてしまう、そういった過剰な負担を軽減する。第2に、当会議所もサポートを始めましたが、心身ともに健康的に働ける活気ある職場を目指す。そして第3に、上司と部下の関係が良好で、仕事に必要な情報が平等に社員に行きわたり、ある程度の裁量と権限を与える。安価な物を購入するにもいちいち上司の決裁を仰ぐといったことを未だにやっていると、なかなかモチベーションが得られないと言われています。
 意外なのが、若い人は給料はもちろんですが、給料よりも企業の"社会的な使命"に対する意志が非常に高いという事です。私自身の会社と仕事が社会に対してどのような貢献をしているか。あなたの仕事が世の中の為に、こんな生きがいがあるんだということを示している会社は、非常にモチベーションが高いという結果が出ています。
 是非とも、今後モチベーションを持っていくには、歩いていかなければなりませんので、ご参考になればとご紹介させていただきました。

"せっかちな日本人、ゆっくりペースで"

2024年03月 1日

"せっかちな日本人、ゆっくりペースで"

 今年の冬は、2月に入りようやく冬らしい季節になりましたが、過日の東京都内では、雪が8㎝積りました。8㎝の積雪は、私が学生の頃に10㎝を経験しています。都内での積雪の状況をテレビで見ていますと、交通網機能が停止するなど、東京はかなり雪に弱いということを改めて実感いたしました。その影響は、愛知県でもトヨタ自動車始め各大手企業に影響がおよび、同時に我々の企業にも当然影響がありました。
 そこで色々と思ったわけでございます。最近は、鉄道も飛行機もそして高速道路も、計画運休や計画通行止めなど、早めの警戒手段を図るようになりました。首都高速道を雪が積もる前から止めるということは、今回初めてのことだそうです。鉄道においては、2年ほど前から計画運休を実施するようになりました。これは利便性を考えれば賛否両論あると思いますが、私はそれで良い事だと思っております。
 日本人の特性として、非常に「せっかち」という特性があると思います。
 何を隠そう私も非常に「せっかち」で、良いところもあるのですが、そろそろ日本も「せっかち」な体質から世界の基準にあわせて、もう少し「ゆっくりペース」にしたらどうかなとつくづく思います。同じ1分は1分なのですから。その使い方は、ゆっくりの中の1分もやはり重要な1分であると思います。
 企業にとってこの時期は、次年度の事業計画を立てる重要な時です。特に、中長期計画を立てる場合には、計画を立てても激変する国内外の動向変化により、毎年のように変更修正があり、本当に意味があるのかと疑問になります。
 弊社では、中長期計画は立てず、そのかわり単年度計画を十分な検討のもと、従業員の納得の上で次年度計画を立案することといたしました。
 これまでの日本人は、本当に「せっかち」で、1分1秒たりとも狂ってはいけないという特性のもと、あまりに縛りをかけ過ぎると、いろいろなことで、いざ歯車が狂った際に対処できないという考え方もあります。どうか皆さん、いろんな考え方があるかと思いますが、「ゆっくりペース」もひとつ取り入れていただければと思います。
 犬山市はお陰様で新聞・テレビ等のメディアで、大変多く取り上げられるようになりました。この間も1時間番組で、犬山をバッチリ取り上げていただきました。また、過日には当商工会議所が企画しました、桃太郎プロジェクト事業の「ももちゃん」が新聞に掲載されました。この事業は「木曽川 桃太郎外伝」と名付けたストーリーの主人公は、桃太郎の「ももちゃん」、実は女の子で、「鬼」が村の女の子を連れ去ってしまうため、おじいさんとおばあさんは男の子として育てたという設定。改心した「赤鬼」、「青鬼」は、「いぬ」、「さる」、「きじ」と仲間になり栗栖地域、犬山市そして近隣市町を盛り上げるために、「ももちゃん」と一緒に活躍していくという設定です。これも、「せっかち」ではなく、「ゆっくりペース」で進めております。
 犬山市には公式キャラクターとして、2000年から「わん丸君(永遠の10才)」に活躍して頂いておりますが、当商工会議所では、今後、クラウドファンティングを活用して、「ももちゃん」を中心とした新キャラクターのグッズやフィギアなどを作成し、当地を盛り上げていきたいと考えております。是非ともご支援ご協力賜りますようお願い申し上げます。

"悲観ばかりでは物事は進まない。希望を持って前に進んでいこう"

2024年02月 1日

 この度の令和6年能登半島地震で被災されました皆様に心からご冥福とお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

"悲観ばかりでは物事は進まない。希望を持って前に進んでいこう"
 今回のメッセージは、日本商工会議所ニュースで掲載されました、2024年新春特別インタビュー(日本商工会議所会頭小林健氏〈三菱商事㈱相談役〉)から、その一節をご紹介させていただきます。

中小企業では人手不足や、後継者不在の問題も深刻です。どのような対応が必要だと思われますか?
 中小企業はオーナー企業が多いですから、企業を存続させていくためにどうしたらいいかという事業承継の問題もあります。「2025年問題」と言われているように、これから団塊の世代がどんどん75歳以上の後期高齢者になっていきます。今は元気で会社の陣頭指揮に当たっているとしても、事業承継を考え始めたり、実際に事業を承継したりする時期にきていることは否定できません。各地の商工会議所では事業承継のサポートを行っていますから、早い段階から相談してくださることが経営者として賢明な判断ではないでしょうか。後継者がいないために、黒字で廃業するというのはあまりにもったいない。第三者承継といった選択肢も視野に入れて、会社の未来を考えてほしいです。
 人手不足の問題に関して言えば、生産性の向上に取り組むという自己変革も必須です。例えば、ITなどを活用した業務の効率化、DXを導入した革新的な省力化・省人化による事業再構築、あるいは円安を逆手にとった積極的な海外展開といった複合的な施策を展開していくことが肝要であると思います。

会員企業の経営者に向けてエールをお願いします。
 昨年、1年かけて各地へ視察に出掛けました。地方の中小企業は、その地域の商業インフラの基盤になっていて、それを絶やしてはならないと強く感じました。そのためには、その地域が住みたい地域であることが欠くべからざる要素です。都会の学校へ進学する若者も少なくないのでしょうが、卒業後に戻ってきたくなるような地域であること、もしくは、何年かした後にUターンで戻ってきたくなる愛すべき地域であることが大切です。地方創生の取り組みは事業承継の話にも通じますが、地方でインフラを形成している企業に存続し続けてもらうことが不可欠です。地域に活気があれば、人々や大企業がやってきて、さらに活力が生まれるといったこともあるでしょう。
 国内を見ればデフレ経済や人手不足、物価高、円安、国外に目を向ければ紛争や戦争、分断といった問題は確かにありますが、悲願ばかりでは物事は前に進みません。将来に希望を持って前に進んでいこうではありませんか。
 商工会議所会員の皆さんの多くは中小企業です。中小企業の強みは、経営と現場の距離が非常に近いこと。
従業員は歯車の一部ではなくて、人事の業務をこなし、時に経理をやり、現場もやるというような、まるで
いくつも手がある千手観音のような八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍をしています。だからこそ、中小企業で育った人材は対応能力が高く、中小企業は従業員と一緒に変革していくことができるのではないでしょうか。
 企業トップの一番身近な目標は、従業員の賃金を上げて、従業員の家庭を豊かにすること。そうすることで、従業員は希望を持って、会社のために力を尽くしてくれるでしょうし、そのことが社会にとっても企業にとっても好循環をもたらしていくのだと思います。

新年を迎え "世の中の動きには敏感に"

2024年01月 1日

 皆様 新年明けまして誠におめでとうございます。皆々様におかれましては、心新たに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。本年は干支の「甲辰(きのえたつ)」と九星の「三碧木星(さんぺきもくせい)」が重なる年となるそうです。「甲」は大きく育つ大樹を意味しており「木」の気を持つ「三碧木星」と合わさることで金運がぐんぐん育つとされています。
また「辰年」は龍が天から膨大なエネルギーとともに降臨し人々に多くの金運をもたらすと言われています。つまり、三碧木星の甲辰年となる今年は皆様に金運が降臨するまたとないチャンスの年とされていますが、信じるか信じないかはあなた次第です(笑)。

 さて、昨年の国内経済は新型コロナウイルス感染症の5類移行により行動制限が大幅に緩和され、政府の各種政策効果により旅行による個人消費や設備投資、また、雇用情勢など経済活動が持ち直し緩やかな回復基調が続きました。一方でロシアのウクライナ侵攻の長期化に伴うエネルギー・原材料価格の高騰や世界的な金融引き締めが進む中での超円安基調、物価や人件費高騰などにより事業活動に対して先行き不透明な状況が続きました。

 そんななか、にわかに政府総務省が我々中小企業に対して新たな足枷ともいうべき税制改正を目論んでいます。それは外形標準課税の適用対象見直しに関するもので、「資本金+資本余剰金」が「50億円超」の企業を外形標準課税の課税対象とする意向との報道がありました。「50億円」の根拠もあきらかにせず、頻発する大企業の減資行為とまったく関係のない中小企業が対象となる可能性があり、「50億円なら良いか!」という意見は非常に危険であり、一度入ってしまった基準は過去の経験からの後々引き下げを行ってくる可能性が大きいわけであります。年明け早々にもこの動きに対しては日本商工会議所はじめ各地域の商工会議所が一致団結して地元選出代議士への陳情や阻止にむけての行動を行ってまいります。
 いずれにせよ今年も自分のペースを守りつつ、世の中の動きには敏感に対応してまいる所存でございます。皆様もどうかご自愛しつつ犬山商工会議所の行事には積極的にご参加いただき経営の一助とお役立ていただきますよう祈念申し上げ、新春のご挨拶と致します。

なぜ、秋は食欲が増すのか? 

2023年12月 1日

 先月のメッセージにて「NO MORE」と題して発信いたしましたが、昨今のニュースの話題は、"平和・幸せ"とは、かけ離れたニュースばかり、皆様におかれましても心労が絶えないのではないでしょうか。
 何か明るい話題はないものかと考えてみたところ、今の季節は、いろんなものがおいしい「食欲の秋」でございます。ついつい食べ過ぎが気になります。なぜなのか?と疑問が沸き、いろいろと私なりに、"食欲の秋の由来や起源、どうして食べ物が食べたくなるのか?"などを調べてみました。
【「食欲の秋」の由来は】日本人が昔から農耕をして暮らしてきたことに由来している。現代ではビニールハウスの普及やLEDによる室内での野菜栽培が可能になったことで、季節を問わずにあらゆる野菜や果物が食べられるようなりました。昔のように、秋にしか食べられないということは無くなりました。が、かつては秋に作物が実るからこそ「食欲の秋」と言われていたのかもしれません。
【「食欲の秋」の科学的な根拠と色々な説】幸せホルモンの「セロトニン」が増える。人間は、日照時間によって、日光を浴びる時間が少なくなるとセロトニンと呼ばれるホルモンの分泌が少なくなります。
 セロトニンは「アドレナリン」「ドーパミン」と並ぶ重要な神経伝達物質です。セロトニンには人の心を安定させる作用と、満腹中枢を刺激して食欲を抑える働きがあります。
夏に比べて、秋は日照時間が短くなるため、セロトニンの分泌が減少します。その影響から、秋になると食欲が増すと言われています。
 人間は、体内のセロトニンが減少すると、トリプトファンという栄養素を求め始めます。トリプトファンは肉類やチーズなどの食べ物からしか摂取できないため、必要な栄養素を補うため食欲が増すというサイクルに入るのです。これが秋になると食欲が増す科学的な根拠だと言われています。
 続いては、秋になり気温が下がってくることで基礎代謝が高まるという説です。人の身体は寒さを感じると体内に取り組んだエネルギーや脂肪を体温維持にエネルギーが消費されるため、消費されてしまった分を食事で補おうとして食欲が増すのです。
 次の説は、人間も動物である以上、冬に備えて栄養を蓄えるというもので、休眠に向けて食欲を増してエネルギーを確保しようとすると考えられます。
 最後の説は、夏の暑さで弱った体が、気温の低下と共に機能を取り戻し、回復して食欲が戻ることで、食欲が増したように感じることです。
【「食欲の秋」に食べたい旬の味覚とは】
果 物:梨・柿・栗・みかん・葡萄・リンゴ・イチジク・ラ フランス・銀杏
野 菜:かぼちゃ・さつまいも・蓮根・ごぼう・カブ・なす・玉ねぎ・人参・チンゲン菜
根菜類:松茸・椎茸・しめじ・なめこ・まいたけ・きくらげ、
魚介類:サンマ・アキサバ・アキサケ・イナダ・アジ・マグロ・戻りガツオ・牡蠣、Etc
 明確な定義はありませんが、「食欲の秋」を指すのは、残暑が去り本格的な秋を迎えてから本格的な冬に入る前の期間だと言えるでしょう。
 ついつい、食べたくなるおいしそうな食材がたくさんある秋、食欲に勝つのはなかなか大変ですが、食べ過ぎには十分注意して、すばらしい晩秋を楽しんでください。

NO MORE

2023年11月 1日

 この地球上では紛争がどこかで絶え間なく起こっています。この原稿を書いているのは10月の中旬ですが、また大きな紛争が勃発して世界中の関心が集まっています。紛争の中には内戦や国同士の戦争など様々な形があります。我々日本人は第二次大戦終結以降、幸いにも紛争には関わっていませんが、すぐお隣の朝鮮半島では休戦中ではあるものの実際は戦争中であります。いったい何故世界中でこんなにも紛争が起こってしまうのでしょうか。紛争には主に五つの原因があると言われています。
 第一に宗教の違いがあります。宗教や宗派の違いによるものです。我々日本人は八百万の神を崇拝し様々な宗教を受け入れ、ほぼ単一民族国家でありながら世界中からみてもとても宗教には寛容な人種だと思われます。
 第二に民族的な違いで紛争が起こります。アフリカ、トルコや中国がそうであるように。
 第三に政権の不安定さが引き起こす紛争です。政権が不安定であると内戦が起こりやすくなります。独裁政権であったり政権が腐敗していると国民が反発立ち上がり紛争が起こります。
 第四に大国同士の介入が原因で紛争が起こります。朝鮮半島は旧ソビエト連邦(中国)と米国のまさにそれです。過去のベトナム戦争も代理戦争でした。
 第五に鉱物や資源等の奪い合いが原因で紛争が起こります。日本も海洋資源等を考えると、いつこれが原因の紛争に巻き込まれるのか不安が過ります。紛争の解決には決め手が無いのが現状であり大変困った状況です。紛争により多くの被害が生じるのはご承知の通りで、特に民間人の犠牲はその映像を見るたびに心が締め付けられます。
 今回のパレスチナ(ハマス)対イスラエルの紛争は、多分ガザ地区へのイスラエル軍の侵攻は免れないでしょう。都市は破壊され弱い民衆から、特に老人子供は多数の犠牲者が出る事も懸念されます。人道的な措置など形式ばかりで何の効果もありません。そんな中、韓国から日本への申し出で韓国軍機を自国民救済の為にイスラエルへ向かわせるので現地日本人も乗っていきなさいとの有難い出来事があり、今朝のニュースでは51人の日本人が無事に仁川空港に到着したとのニュースがありました。
 国同士、国際関係とは常にこうありたいと願います。馬鹿げた発想ではありますが、今後はこれだけバーチャルな世界が広がっているので紛争が起こるとなったらお互いはパソコンの中でゲーム対戦して勝敗を決めてはどうかと提案したい気持ちです。日本人はジャンケンで勝負し潔く勝敗を決めています。世界中の紛争が一刻も早く解決し穏やかな日常が戻ることを心よりお祈りいたします。

ガソリン価格が最高値を更新! 政府の負担軽減策は?

2023年10月 1日

 長引く燃料費の高騰によって、みなさのお財布にさまざまな影響が広がっています。
 9月6日時点では、国の委託を受けてガソリン価格の調査をしている石油情報センターによりますと、レギュラーガソリンの小売価格は、全国平均で、1リットルあたり先週から0,9円値上がりし186.5円でした。これは、16週連続の値上がりで、現在の方法で調査を行っている1990年以降では、先週に続いて2週連続で最高値を更新しています。
 要因は、国からの補助金が今年1月以降、段階的に縮小されていることに加え、サウジアラビアの自主的な減産の影響で原油価格が上昇傾向にあること。さらに円安に伴って輸入価格が上昇していることなどがあげられます。
 政府は、石油元売り各社に支給している補助金を9月7日から1リットルあたり7.7円増やし今後も拡充することから、ガソリンの小売価格は徐々に値下がりし、10月中には175円程度の水準に抑えられる見通しです。(具体的には、レギュラーガソリンの場合、小売価格が1リットルあたり、168円から185円までの部分と、185円を超える部分で、それぞれ補助率が変わります。このうち、185円を超える部分は、9月から12月まで全額を補助します。)しかしながら、ガソリン価格に反映するまでには、タイムラグがあり、経産省の発表によりますと、補助金は石油元売りに支払われ、ガソリンスタンドは安くなったガソリンを仕入れることになっていますが、高い値段で買った在庫もあり、補助金を反映した価格になるまでには、まだ1か月程度かかるのではないかと言われています。
 ガソリン価格は、本体価格が55%ですが、残りの45%は全て税金です。このガソリン税には、本則税率と暫定税率、石油税にも消費税がかかっているため、二重課税になっていると言われています。なぜ二重課税かというと、ガソリン税と石油税は石油元売り会社が納める税金で、石油元売り会社がガソリンスタンドにガソリンを卸すとき、ガソリン税分を上乗せして販売しているためです。
 ガソリン税(本則税率)は、ガソリンにかかる本来の税率ですが、ガソリン税(暫定税率)は、高度成長期の1974年に道路整備の財源不足に対応するため、一時的に増額された税率になります。期間が定められた暫定税率ですが、期限後も延長や税率の引き上げが繰り返され、現在も25.1円/ℓの税金がかかっています。これらの4種の税金が、我々が支払ってるガソリン価格の45%に相当するものです。
 これらを調べてみますと、政府の燃料価格の負担軽減策については、ガソリン補助金ではなく、期間が定められ一時的に増額されたガソリン税(暫定税率)にこそ、手を付けるべきと思うのは私だけでしょうか。
 この補助金で年内のガソリン価格は175円程度の水準に抑えられる見通しですが、また来年も起こり得る値上がりにおいて策があるのか。という懸念と、もう一つ思うところは、本来政府は、2035年までに自動車の100%電動化と更なる安全対策を進め、ガソリン車の新車販売を禁止することを決めており、2035年以降は,HV(ハイブリット)、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、PH(プラグインハイブリット)しか売れなくなるとしている。この政策とガソリン補助金とは、本末転倒というか、政府は、ガソリンか電動化かどちらを進めようとしているのか。燃料価格の負担軽減策については、真逆の政策を長く続けているように見えます。
 将来の日本にとっては一時的な政策でしかないように思われますが、皆様にはいろんなお考えがございますので分かりませんが、この国策について一度精査していただければと思います。 

ALPS水の現状

2023年09月 1日

 お盆前にこの原稿を書いていますが、今年は特に暑い日々が続いており流石に体調管理には皆様ご苦労が多い事とお察し致します。気象データを観測以来、過去最も平均気温が暑かった年は1978年ですが、今年はそれを上回るそうです。一般的に気温が上がれば経済活動にはプラスに働くと考えられますが35度を超える猛暑日ともなりますと逆に経済にはマイナス作用があるとも言われています。街中を出歩く人も減り食べ物や飲料の傾向も大きく変わる分岐点が35度だそうです。簡単な事ではないのですが地球温暖化に対しては個々の人々はもっと関心を寄せるべきでしょう。
 さて、福島第一原発の冷却用汚染水を処理したあとの水を一般的にはALPS水と呼んでいます。冷却に使用した後、各種放射線物質を取り除く処理を行っていますが、唯一取り除けない物質がトリチウムです。トリチウムは他の放射性物質よりも線量は低くもともと自然界に存在するものではありますが我々は気になるところであります。現在、そのALPS水は原発の周りに貯水タンクをどんどん増設し134万トン(25ḿプール3722杯分)がたまり続け全貯水量の97%となり2024年2月頃には満杯となる計算です。お陰様でIAEA(国際原子力機関)の視察や検査等に、基準を大きくクリアし「問題はない」とのご判断を頂き海洋への放出に道筋が広がりました。
 世界では海洋放出に対し様々な反論を含む意見が出ています。中国や香港政府は鮮魚の輸入を禁止するとか韓国では海水から作る塩の買い占めがおこり野党は猛反対の姿勢を示しています。ちょっと待ってください。韓国はこのALPS水を毎年44兆ベクレル、米国では40兆ベクレル、中国は102兆ベクレル、イギリスは186兆ベクレル、カナダ1190兆ベクレル、フランスに至っては1京ベクレルのトリチウム水を海洋放出しているのです。今回福島原発が配管を使って1㎞沖合にIAEAの国際的な安全基準を満たして放出しようとしているトリチウム水は22兆ベクレルです。

 さて、皆さんは各国の意見や利害関係者の思惑をどの様にとらえますでしょうか?

"小田井人足" ご存じですか。・"アメリカ"との違い

2023年08月 1日

"小田井人足" ご存じですか。     (犬山商工会議所 副会頭 伊藤 正久)
 皆さま、「小田井人足(おたいにんそく)」という言葉はご存じでしょうか。
小田井とは、名古屋市西区から清州市にかけての地域で、名鉄犬山線の下小田井・中小田井・上小田井駅周辺になります。
「小田井人足」の由来は、江戸時代のこと、庄内川が増水して危険になると、尾張藩は名古屋城下を水害から守るため、役人をつかわして川向こうの小田井村側の堤を切らせることを命じました。小田井村の人々は、堤を切れば自分たちの家や田畑が大被害を受けるので、表面上は一生懸命働くふりをし、実際には少しも能率を上げずにわざと時間をのばし、ひたすら川の水がひくのを待ちました。このような史実から、怠け者を表す「小田井人足」の語が起こったといわれています。
会社でも私たちの周りにも「小田井人足」は存在します。周囲の人は大迷惑です。何の成果も得られず、悪い雰囲気を作ってしまうからです。本人にとってもいいことはひとつもありません。そこには、成長もなく満足感もないからです。
 会社や商工会議所の活動についても、最近、私が強く思うのは、どうせやるなら、楽しく、真剣に全力でやった方が絶対に良い。自分も周囲の人も幸せになれるからです。どうしても本気になれないなら、原因を排除すべきです。
 コロナ明け、私たちを取り巻く環境はうねりをあげて変化しています。立ち向かうには、積極的な思考と行動が必要だと思います。      
(一部、国土交通省 中部地方整備局 庄内川河川事務所HPより引用)
 
"アメリカ"との違い         (犬山商工会議所 副会頭 伊藤 正久)

 アメリカの飲食店においては、日本政府がコロナ禍にとった協力金や補助金支援策は無かったこともあり、かなりの飲食店が閉店しました。そんな中で、生き残った飲食店は、コストアップに伴い、大幅に値上げしました。大手ラーメンチェーン店では、とんこつラーメンが1杯22ドル(約3100円)です。日本では、同ラーメンチェーンの1杯の値段が過日、10円~40円値上げを発表したとニュースでやっていましたが、それでも1000円程度です。同じラーメン1杯でアメリカでは約3倍です。
 また、日本でのコロナ禍において、大手飲食チェーン店が急速に導入したのが、「配膳ロボット」です。AIやセンサー技術などを盛り込み、自動で配膳できるロボットで生産性向上を狙って導入した企業は少なくありません。しかしアメリカでは、このロボットを導入した飲食店は1件も無いようです。配膳ロボットを導入することはサービスではないと考えているのか。"日本の常識は、世界の非常識"なのでしょうか?
 日本の小手先、目先で行われてきた様々な施策だとか、あるいは導入してきたものが、今後無駄になるのか。本当に根付くのか。国民性にあうのか。ということを見極めていかなければいけない。そして、飲食店においての一番のサービスは、人と人との関わり合い。そこが1番大事だと思います。
 会社の大小・業種業態、色々あると思いますが、根幹はやはり、「人」です。

インバウンド"本格復活"へのカウントダウン

2023年07月 1日

 先日、東海道新幹線に乗って東京に行ってまいりました。行きも帰りも車内には、ほんとに大勢の海外の方が乗車されており、少し圧倒されるくらいでした。しかし、ここに中国の方は少ないように見受けられました。
 JNTO(日本政府観光局)の報道発表によると、今年は、桜シーズンによる訪日需要の高まりが影響し、1月から4月までの訪日外客数は約674万人で、コロナ禍前の2019年同月比の約62%までの回復していると伝えていました。そうした中、今後期待されてくるのが中国人観光客の復活です。
 先頃開催された、先進7ケ国(G7)広島サミットでも改めて明らかになったように、日中関係はきわめて緊張しているとされております。それでも、中国路線再開に期待が寄せられる理由は、巨大なインバウンド(訪日外国人)需要であり、コロナ禍前まで、日本の大都市では「爆買い中国人」などと称される中国人観光客であふれていました。コロナ禍前2019年の各国からの訪日客総数は約3190万人で、内中国が約960万人で2位の韓国約558万人を大きく引き離していました。
 残るは「中国人観光客」の来日だけ。インバウンドの本格復活へのカウントダウン、政府間対立を乗り越え、日中友好の機運を醸成していきたいところです。
 第4次観光立国推進基本計画(2023年~2025年度)として、政府がインバウンドの年間消費額5兆円超の早期達成を目指すなか、今、自然や文化などの体験型観光「アドベンチャー ツーリズム(AT)」が脚光を浴びています。「AT」旅行者は知的好奇心が旺盛な富裕層の割合が高く、コロナ禍前での「AT」の市場規模は欧州、北米、南米で、滞在日数は平均14日間と長く、少ない訪問者数で高い経済効果をもたらしています。
 人が多く集まる観光地も良いですが、インバウンドが静かな景勝地目指す「AT」が、富裕層を中心に増えるという分析がされております。
 しかし、後発国の日本においては、「AT」に必須な専用ガイドの不足、自治体と関連業者の連携の遅れなど課題は多いとされていますが、「AT」は地域を潤すだけでなく、自然や文化を維持する動機や原子にもなるはずです。現在、北海道中心に取り組みが進んでいますが、持続可能な地域の実現に向けた"武器"としていきたいものです。
 一方で、我々日本国内においては、いわば「リベンジ旅行」需要の広がりが、大いに期待されるところでございますが、ポストコロナの日本経済は、正常化を背景に内需を中心に緩やかに持ち直しをしていると言うものの、先行き不透明感から、なかなか国民の財布の紐が固くなっているのが現実です。
 しかしながら、我々は、これから通常の生活に戻り、そして我々の「商い」を順調に進めていかなければなりません。
 コロナ禍前とは違う発想をもって、商工会議所は皆様方のお手伝いをしていきたいと思います。

新型コロナ、5月8日から「5類」に移行、何が変わる! !

2023年06月 1日

 5月の連休明け、日本は大きく変化いたしました。
 ご承知のとおり、新型コロナウイルス感染症法上の位置づけが、5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しました。以後は、法律に基づいた外出自粛の要請などは無くなり、感染対策は個人の判断に委ねられるほか、幅広い医療機関での患者の受入れを目指すなど、3年半余り続く国のコロナ対策は大きな節目を向かえました。
 今年のゴールデンウイーク期間中における経済の状況と言いますか、人の移動は、連休後のニュースを見ますと、大手航空会社2社の国内線総旅客数においては、コロナ禍前と比較して、JALの利用状況は101%、ANAにおいては96%台で、これまでの平均値の利用状況に戻った傾向にありました。一方、国際線においては、まだまだ控える方が多く、JALの利用状況は56%、ANAにおいては57%であったと伝えておりました。しかしながら、今回の日本を含めた各国の水際規制緩和など、感染症危険度レベルの引き下げに踏み切ったことで、着実に需要は回復しつつあり、政府の大変大きな決断であったと思います。
 次に、飲食店においては、賑わいが戻ってまいりました。店内飲食においては、コロナ禍前と比較して、ほぼ100%の回復、そして驚くべきことは、飲食におけるテイクアウトが増え続けているということです。この流れを掴んで、店内飲食とテイクアウトの両方の戦略を練って、パーテーションや席数、人数制限も和らげながら運営して頂きたいと思います。
 コロナ禍前と5類に移行した現在と、大きく変わることが多数あります。
 政府は、これまでのように行動制限を求めることができなくなり、感染対策は今後、個人の判断に委ねられます。これまで無料にしてきた医療費の窓口負担分については、検査や外来診療の費用などが自己負担に見直されます。さらに流行状況の把握については、医療機関などが毎日すべての感染者を報告する「全数把握」から、指定された医療機関が1週間分の感染者数をまとめて報告する「定点把握」に変更されます。厚生労働省の発表は週1回、毎週金曜日。
 コロナ禍を乗り越えて成長していく「ビヨンド・コロナ」を目指すためにも、1つだけ大事なことがございます。"コロナ"は、無くなったわけではございません。
これまでのコロナ禍において、何かあれば全て国・自治体等が、手取り足取り道標を示して頂きましたが、これからは我々が、自己責任において対処していかなければなりません。
 厚生労働省の専門組織「アドバイザリーボード」での尾身茂氏は、5月8日の政府感染症対策本部の解散前に、次のとおり、5類移行後の感染対策「5つの基本」を発表した。
① 換気、3密(密閉・密集・密接)の回避
② 手洗い 
③ 適度な運動と食事
④ 体調に不安や症状がある場合は、無理せず自宅で療養するか受診
⑤ その場に応じたマスク着用や、咳エチケット
 新たな「5つの基本」では、人との間隔について具体的な記述が無くなったものの、いまだ「3密回避」が残っている。SNSでは、"一定の目安になるよね"といった賛成の声もあるが、多くは批判的な声で埋まったという。
 会員の皆様におかれましては、身近な感染対策に心がけ、きちんと自己管理をして、自分の会社、自分の家族、そして自分自身をお守り頂きたいとお願いいたします。

「観光立国推進基本計画」閣議決定 ~持続可能な形での観光立国の復活に向けて~

2023年05月 1日

 先ずは、4月1日、2日と晴天に恵まれ、第389回犬山祭が4年ぶりに完全復活いたしました。
 約40万人の大変な人出と伺っております。
関係者の皆様、大変お疲れ様でございました。ありがとうございました。
 さて、過日、日本商工会議所におきまして、全国515の商工会議所会頭、専務理事が集結して、第136回通常会員総会が開催され、参加してまいりました。
 その中で、今年度の全国商工会議所が取り組むべき重点事業の柱といたしまして、地方創生がございます。その中身は、このたび閣議決定された第4次観光立国推進基本計画(対象年度2023年~25年度)そのものです。
 コロナ禍からの観光再生に向けて、「持続可能な観光地域づくり」「インバウンド回復」「国内交流拡大」の3つの戦略とともに、観光地・観光産業の再生・高付加価値化、観光DX、インバウンド消費額拡大や地方誘客促進を目指す姿勢が、重点事業の柱と同時に、私が思い描く犬山が進めていくべく姿に、完全に一致していたことです。
 かねており、日本商工会議所では、地方創生の切り札である観光の再生には、自然・食・歴史・文化などの地域資源を最大限活用し、インバウンドの地方誘客や観光コンテンツの高付加価値化を促進するとともに、デジタル技術の活用を通じた観光産業のビジネスモデルの変革の重要性を提言してきました。まさに今次計画で示された方針と軌を一にするものであり、大いに歓迎したい政策です。
 世界的に観光需要が急速にもどりつつある中で、本計画は、訪日外国人旅行消費額5兆円、国内旅行消費額20兆円の早期達成を目指すとともに、令和7年までに、持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数100地域、訪日外国人旅行消費額単価20万円/人、訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊者数2泊等の目標を掲げており、2025年の大阪・関西万博をはじめ、各種国際イベントの開催を見据え、地域では、観光資源の磨き上げ、地方へのインバウンドの誘客と観光消費拡大に取り組む機運が高まっています。一方で、ホテルや旅館等の観光事業者は、コロナ禍の3年間で流出した人手不足や原材料価格の高騰が事業再生の足かせとなっています。
 政府においては、今次計画で掲げた目標が早期に達成されるよう、PDCAサイクルをしっかり回しながら、地域の観光需要獲得や事業者の課題解決に向けた取り組みに対して強力な後押しをお願いしたいところです。
 日本商工会議所小林会頭が言われるように、新型コロナの感染症法上の5類への引き下げが5月8日に予定されていますが、コロナ禍を乗り越えて成長していく「ビヨンド・コロナ」対策を円滑かつ混乱なく進めていくことが、最大の経済対策であると考えます。昨年度から事業活動を再開しつつありますが、新年度になり、各部会・委員会活動を活発に進めていくよう関係者に指示したところです。
 地域総合経済団体である商工会議所としても、コロナ禍からの地域経済の再生に向け、自治体や地域の事業者等と一体となって、全力で観光振興に取り組んでいく所存であります。

いま、北海道と九州が熱い!

2023年04月 1日

 厚生労働省は、2022年の日本の出生数が、外国人を含む速報値で前年比5.1%減の79万9,728人と発表いたしました。80万人割れは、前回の会頭メッセージでお伝えした国の推計数値より11年も早いペースです。出産期にあたる世代の減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で結婚や妊娠・出産をためらう人が増えたのが要因であるとしています。若い世代の経済不安を和らげ、出産に前向きになれる社会に変えていく必要があり、非常に心配な状況になってきたと懸念いたしております。
 また、北海道においては、気温が急上昇、2月下旬から非常に速いペースで気温が上がり、一日の寒暖差において、札幌は+10.6℃、江丹別は+22℃、場所によっては20℃以上も高くなっています。
 そんな"熱い"北海道の酪農家が今、経営の危機にあるのをご存じでしょうか。
北海道の酪農家では、牛乳などの原料となる生乳が余り、廃棄処分をせざるを得ない事態が起きています。
 新型コロナウイルスの影響で生乳の需要減少が長期化し、収入は得られず、生乳を廃棄しなくてはならない事態に陥っています。さらにウクライナ危機による飼料価格などの高騰でコストは膨らみ、経営危機に陥っているのです。
 政府は、生産を抑制するために3月1日から、乳牛を処分すれば1頭当たり15万円の助成金を支払う政策をスタートしています。22年度の補正予算に50億円分を計上し、年間で最大4万頭の処分を見込んでいます。
 なぜこうした事態に陥ったのでしょうか。2014年ごろから起きたバター不足。当時、政府は輸入を制限し、国産バターを増産するよう、生乳の生産量を増やすための設備投資などに補助金を出し、後押し政策を実施。これにより多くの酪農家がこれに応える形で生乳の増産に踏み切ったのです。
 酪農団体は、乳製品の輸入に反対。輸入しすぎると牛乳の供給が増えて価格が下がる。そうすると酪農家が大変になり、農水省は批判を受ける。その批判を受けないようにするために十分なバターを輸入しなかったといわれています。今回の政策は、"生乳が余った"、しがって牛を淘汰する、税金を使えばいい。ではない。国民が税金を払って、需給調整の失敗を国民が負担している。根本的な政策は、酪農業界の体質を強化して、価格やコストを下げて世界と張り合うことができるように、競争力ある農業、酪農をつくることだ。今の農政はそんなこと全く頭にない"行き当たりばったり"で、中長期的な計画とは程遠い現実である。
 北海道が"熱い"ということで、もう一つのニュースは、いよいよ、次世代半導体の国産化を目指す新会社Rapidus(ラピダス)が、千歳市に半導体工場建設に向け動き出しました。新工場の事業費については、国の助成金700億円などを活用。技術の確立までに2兆円、量産ラインの準備に3兆円の合計5兆円規模の投資が必要で、自動運転やAI=人口知能など、先端半導体を4年後の2027年をめどに量産化することを目指している。その一歩手前、九州では、半導体受託生産会社(ファウンドリ)として世界最大である台湾の「TSMC(台湾積体電路製造)」が、熊本県菊池郡菊陽町に半導体工場建設の誘致を決定している。日本政府では総投資額およそ70億ドル(約8,000億円)の半分ほどを補助する歓迎ぶり。日本初となるTSMCの工場は、ソニーグループとともに建設することとしており、約570億円を出資し、総額で約1兆円規模の工場となる。
 いずれにしても、世界中が半導体不足に陥ってるなか、日本国土の北と南に、それぞれ半導体生産工場が誘致されることにより、関連産業等の集積、人口増加、新たな技術開発研究の推進などによる学術・教育の活発化など、経済効果だけでなく、様々な分野における活性化が期待でき、これらによる波及効果は計り知れないものと期待しております。
 季節の変わり目でございます。春本番を迎えるにあたり、我々のムードも変わり目として、暖かく、そして"熱く"なっていったらいいなあと思っております
 ※Rapidus(ラピダス、本社・東京)
 トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行、以上8社が出資

わたしの憂い"静かなる大きな問題"

2023年03月 1日

 青年部会報「意論波」(会議所だより4月号同封)において、「齢60の憂い」のタイトルにて挨拶文を掲載いたしますが、今回の会頭メッセージでは、"わたしの憂い"(うれい)について語らさせいただきます。
 世界・日本経済の展望を語る前の話として、今後、経済界にとって大変ネックとなる問題が、少子高齢化、いわゆる人口減少問題です。
 日本の少子化対策は、古くから静かなる大きな問題として、言われ続けてまいりましたが、効なく今まできてしまっています。岸田首相は、年頭の通常国会で、異次元の少子化対策が柱となる施政方針演説を行い、「こども・子育て政策」を最も有効な未来への投資と位置付けています。
 今まで実施されてきた各種の少子化対策、例えば給付の拡大や待機児童対策が、出生率の向上に繋がってこなかったという事実を踏まえ、十分な検討を経たうえで、全く新しい視点に基づく政策を打ち出すのが本来の「異次元」なのではないでしょうか。日本政府は、今年4月に発足する「子ども家庭庁」において、少子化対策費の予算規模を2倍に増額するだけでは、今更ながらの対策になってしまいます。
 振り返ってみますと、明治維新の頃の日本の人口は、3,330万人、そして第二次世界大戦が終わった1,945年には、倍以上の7,200万人、そして、日本の人口が1番のピークに達したのは2,008年で、1億2,800万人、この時すでに高齢化率は20%となっていました。そして、間もなくの未来ですが、推計数値で、2,030年には減少して1億1,220万人、高齢化率は32%。そして、いよいよ2,050年になりますと1億人を軽く切りまして、9,500万人、高齢化率は40%、もうほぼ2人に1人がお爺さんお婆さんになり、超高齢社会が始まります。その先の2,100年になりますとどうなるか。人口の推定値には高位、中位、低位の3仮定ありますが、中位推定人口では4,770万人となり、明治維新後の大正時代程度の人口(国力)になるということが推定されています。人口というのは、国力に比例していると、私は自論で申し上げます。
 お隣の中国を見ますと、2,018年頃からもうすでに人口の減少が始まっていると言われていますが、昨年、中国の人口が発表され、61年ぶりに減少に転じたということで、このままでいくと、今後10年間で9%から10%、1割近い人口が中国からも減るという推計がなされており、急速な少子高齢化の進展を食い止める為の支援策を次々と示しています。そんな中、インドだけが経済発展はすごいですが、それ以上に人口も若年者が多いということもありまして、今年中には、中国の人口を抜いて世界最多になると予想され、続いて、アフリカ諸国、エジプトと言われています。
 国内を見てみますと、新型コロナの感染症法上の扱いの見直しが、5月には現在の2種相当から、季節性インフルエンザと同じ5種への引き下げになれば、"やれやれ"ということでございますが、このコロナ禍で、日本でお亡くなりになられた累計死者数は、69,477人で、ほぼ当市の人口が消えていったことになります。
 これまで日本は人口減少問題について、政府は子育て支援に重点を置き行ってまいりました。
 因みに、弊社の新入社員におきましては、多額の奨学金返済を抱えているケースがあり、これから返済となると、結婚して子育に対して慎重にならざるを得ないわけてございます。社会人としてのスタートラインから数百万円の借金を背負うのは大変な重荷です。借金苦を避けるため、学びたくても進学を諦めざるを得ない子どもも後を絶ちません。長期に及ぶ返済の負担は、若者ばかりではなく、子どもの奨学金返済の肩代わりで、老後の生活資金を失う親も増えており、世代を超えた社会問題になっています。
 今回は、"静かなる大きな問題"として、多くを皆さんに問いかけてみました。
 

"得るべき利益を賃上げにつなぐ, 好循環の構築へ"

2023年02月 1日

今回のメッセージは、日本商工会議所ニュース特集で掲載されました、2023年新春特別インタビュー(日本商工会議所会頭小林健氏〈三菱商事㈱相談役〉)から、その一節をご紹介させていただきます。 

「持続的に賃上げできる環境整備」に関しては対応が厳しいという中小企業も少なくありません。企業はどう取り組んでいけばよいでしょうか?

 中小企業の強みは経営者と現場の距離が非常に近いことです。環境変化へ対応する力も大企業よりも優れており、柔軟に自己変革する能力を有しているはずです。

 弱みは、残念ながら生産性の低さだと思います。中小企業の労働分配率は約8割と高く、余力に乏しい中でも賃上げせざるを得ない「防衛的賃上げ」を強いられています。生産性をもう少し磨いて、まずは原資を稼ぐことで少し余裕を持たせて、次の投資や従業員の処遇改善に結び付けていく必要があります。そのため、取り組むべき課題は「民間による生産性向上・付加価値向上」、そして「取引価格の適正化」であると捉えています。生産性を上げるために商工会議所もさまざまな取り組みを講じているところです。これからの未来を見据えると、一番大きな要素はデジタル技術による変容、つまりDX(デジタルトランスフォーメーション)でしょう。合理化だけを目指すIT導入であれば相当程度広まっています。必要なソフトウエアを買って導入することも容易にできるようになりました。問題は、それ以上の経営の効率化や人手・時間がかかっていた業務を一瞬で置き換えられるような革新的なDXの推進で、単なる合理化に終わらないように導入していくことが重要だと思います。取り組むべきもう一つの課題、取引価格の適正化については、日本はずっと値下げを是としてきて、「値上げなんてもってのほか」という考え方もあるなど、モラル的な固定観念がありました。そのため、中小企業が生産性向上に励んでも、その果実は大企業に吸収され、付加価値として価格転嫁できないという構図になっています。ここを正常化し、適正な価格で販売すべきだというマインドを広めることが必要でしょう。

 そのためには、大企業と中小企業の共存共栄の実現が重要です。日本は、大企業と中小企業が相協力し、共に高め合うことで世界に誇る技術力・競争力を確立してきました。他方で、コスト削減を重視し、企業やサプライチェーン全体で生み出す付加価値に見合った価格とする意識が薄かった点も否めません。

 大企業と中小企業の双方が付加価値に基づく適正な取引を宣言する「パートナーシップ構築宣言」も緒に就いたばかりで、今後魂を入れ、実効性が上がるように取り組んでいく必要があると意気込んでいるところです。 

昨今相次ぐ物価高騰により企業は厳しい立場に置かれていますが、どう対応すべきでしょうか?

 長年、「安い方が良い」という価値感が浸透していたところ、相次ぐ値上げに伴い、消費者からも苦しい声が上がっています。しかし、消費者の生活に対応するために賃上げを実現するには、企業の実入りを良くしなければなりません。適正な利潤を確保できるだけの適正価格を設定し、得た利益を賃上げに回すという好循環を促していくべきです。

 原材料やエネルギーなどが幅広く高騰しているものを、全体でどうシェアしていくかが課題です。供給側だけで吸収しようとしていては、どこかの負担が大きくなり、ゆがみが生じてしまう。各企業の努力だけでは難しい。

 価格転嫁に関しては、国民全体の機運醸成も必要です。企業が適正な利潤を確保し、賃上げに踏み切れるような良い循環にしていくためにも、適正な価格を消費者側に求める勇気を持ってもらいたい。日本全体でコストアップをシェアして、総合的に大きなパイにしていき、最終的にわが国経済の底上げにつなげていかなければならないと思います。従って、賃金を論じる際には物価の高騰も加味すべきだと考えます。賃上げだけ対応して商品・サービスの値上げができなければ、中小企業は生き残れません。中小企業といってもさまざまな規模・業種・業態があり、企業の支払い能力も千差万別です。商工会議所としても、一律に賃上げの号令をかけるわけにはいきません。全ての企業が一斉に賃上げするのではなく、各社、各地域の状況を加味した支払能力を基に労使で議論してほしいと思います。自社の懐事情、生産現場の改善方法、賃上げだけではない労働者への分配手段など、こうした場面でも経営者と現場が近いという中小企業の強みを生かし、お互いが腹を割って話し合うことで、理解を深めていけるのではないでしょうか。

国を挙げたデジタル化の推進

2023年01月 1日

 新年あけましておめでとうございます。
 平素より、会員をはじめとする皆様は、当会議所事業に対し、一方ならぬご支援とご協力をいただき誠にありがとうございます。年頭に当たり、厚く御礼申し上げます。
 さて、日銀が発表した「経済・物価情勢の展望」によると、"日本経済の先行きを展望すると、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる"としている。しかしながらリスク要因をみると、引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性は極めて高く、そのもとで、金融・為替市場の動向や国内経済、物価への影響を十分注視する必要があると言えるでしょう。
 再び日本経済、「メード・イン・JAPAN」を復活するためには、直ちに進めなければならないのが、世界に大きな後れをとっているデジタル技術の利活用能力,"DX"の推進です。
 スイスの国際経営開発研究所(IMD)によると、世界デジタル競争ランキング2022において、日本は63カ国中29位、上位5カ国は、米国、デンマーク、スウェーデン、シンガポール、スイス。 東アジアでは、韓国8位、台湾11位、中国17位である。IMDによる日本の評価は、ワイヤレスブロードバンド利用者数やソフトウエア著作保護の項目では高い評価を得たものの、ビックデータ活用・分析、ビジネス上の俊敏性の項目では調査対象国・地域の中で最下位となっています。
 経済産業省によると、2025年に既存のシステムを利用し続けることによる年間の経済的損失が最大12兆円に達すると指摘している。これはDXのキーとなるデータを活用しようとしても、過去のシステムが適合しないことや、その改修に必要な高度なIT人材の不足が生じることが原因と推測しており、DXの遅れが将来的なリスクになることを示唆しています。
 河野太郎デジタル大臣は、昨年12月に、「我々が目指すデジタル化は、ぬくもりを生み出すデジタル化だ」と強調している。デジタル庁は、発足時からのミッションとして、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を掲げ、マイナンバーカードの普及拡大による、国や自治体から民間に至る全てにおいてデータの標準化を行い、マイナンバーや法人番号の整備と利用拡大を進めており、企業運営にもデジタル化が必須となっています。
 経済産業省では、民間企業がDXを推進するための「DX推進ガイドライン」を策定し発表しています。このDXガイドラインでは、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」「DXを実現する上での基盤となるITシステムの構築」にわけて、企業戦略の策定と体制の整備、そしてDXに必要となるシステム構築に必要なガバナンスや実行プロセスなどについて説明されています。
 わたしたちを取り巻く環境は刻一刻と変化しています。パソコンのないオフィスを想像できないのと同じように,電子決済やECの利用、スマートフォンと連動したサービスなどが浸透している社会では、すべての企業においてDXは避けて通ることができないものなのです。
 本年も、中小企業の地域の発展に向けて、先頭に立って頑張ってまいります。皆さまの多大なるご支援、ご協力をお願いし、私の年頭メッツセージとさせていただきます。

円安を活かせ「メード・イン・ジャパン」復活に道!!

2022年12月 1日

 過日開催の第12回臨時議員総会において、11月からの第12期犬山商工会議所役員・議員体制がスタートいたしました。
 全国515商工会議所の全てが、11月から役員・議員の3年の任期が始まりました。
 その中で、日本商工会議所会頭が9年ぶりに、日本製鉄㈱名誉会長三村明夫氏から三菱商事㈱相談役小林健氏に交代されました。日本商工会議所100年の歴史の中で、大手商社出身者が会頭に就くのは初めてのこと。商社マンとして日本経済の変遷を目の当たりにされ、ほとんどの産業との接点を持たれる、まさしく今の日本、或いは世界におかれた日本経済の今後の情勢を踏まえての人選だと私は思います。
 我が国の中小企業の当面の最重要課題は、エネルギーや原材料など高騰するコストの取引価格への転嫁である。小林新会頭には、是非、国際感覚あふれる采配をふるって下さることに期待いたしております。
 さて、私も会頭に就任し、早3年が経ちました。新型コロウイルス感染症、ウクライナ、ロシア問題、そして円安の問題等々、悩ましい様々な難問が次々と起こっております。
 その中でも、32年ぶりの1ドル=150円突破と、急激な円安を受け、政府・日銀は「ドル売り、円買い」の為替介入を行っていますが、瞬間的に回復しても、すぐに円安に戻ってしまい、円高方向に転換させるまでには至っておりません。日本政府がどう対応しても、アメリカのインフレが続く限りドル高は収まらないでしょう。そんな中で、ひとつだけ良いことがあったのではないでしょうか。
 それは何かと言いますと、日本の製造業においては、ドーナツ現象が起こってきたわけでございまして、安心な低賃金、労働力を求めて、海外に製造拠点を移してきました。
 ところが、国際情勢の変化を受け、リスク分散を図るための海外の生産拠点を国内に戻す動きが広がっています。
 海外移転を進めてきた製造業にとって、歴史的な円安は大きな転機となるであろう。
 日本政府は複数年にわたる取組みにより、国内回帰や多元化を通じた強固なサプライチェーンの構築を支援するとしています。 
具体的な政策としては、経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が挙げられます。(一国への依存度が高い製品・部素材について、生産拠点の国内回帰を補助)
 国内回帰の大手企業では、資生堂、塩野義製薬、ダイキン工業、直近では生活用品メーカーのアイリスオーヤマ、アパレル大手のワールド等々。
 日本において、再び「メード・イン・ジャパン」の復活が期待できる。また、日本の賃金が安くなっているということは、新たな生産拠点としての優位性が高まる。そうなると、世界中から日本に生産拠点を移す企業が増える。新興国は安い人件費をテコに経済成長したように、日本でも円安を利用して生産拠点の国内誘致を進めれば、経済復活のきっかけになるはずです。

岸田首相が所信表明、"人への投資・リスキリング"

2022年11月 1日

 11月(霜月)に入りました。日本では、秋から年末かけ、ハロウィン、クリスマス、そしてボーナス支給が近づくと、年末商戦が始まり、歳末に向けて盛り上がっていくのが通年の姿ですが、コロナ禍によりその姿も一変しました。
 日本政府は、観光庁による観光喚起策「全国旅行支援」を10月11日からスタートさせました。これは新型コロナウイルス感染症により落ち込んだ観光需要を取り戻すため、各都道府県が実施している「地域観光事業支援(県民割)」の仕組みを活用し、利用対象者を全国に拡大して運用する制度です。しかしながら現在休止中の「GoToトラベル事業」とは異なり、全国旅行支援事業の実施主体は各都道府県になります。
 政府の支援内容は共通ですが、割引適用ルールやクーポン券の取り扱いなどが、都道府県各々で異なります。取扱いを希望する旅行会社は、都道府県ごとに個別登録が必要で、商品と制度が合致するか、各宿泊施設が制度に参加しているかどうかなどの確認作業に時間がかかっているのが現状です。これまでのように、支援策制度名だけが先行してしまい、国民に届くのは、かなり遅くならないよう期待したいところです。
 そんな中、過日招集された、臨時国会での岸田首相の所信表明演説で、経済対策を巡っては、従来主張してきた「成長と分配」のフレーズがなくなり、「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」の3つを重点分野としていくと表明。
 このうち、物価高に関しては、電気料金高騰による家計や企業への負担軽減に向け、"前例のない思い切った対策を講じる"と述べ、その中で、個人の※リスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明している。特に、「物価高・円安への対応」について、日々進む円安は、日米金利差が拡大する限りにおいて継続するであろう。つまり物価上昇圧力は、一時的ではないということだ。こうした認識に立てば、物価上昇を我慢するだけでは、財政資金がいくらあっても足りないという理屈になる。むしろ円安メリットをいかに多く取り組むかが、中長期の円安対策となるであろう。これまでの一時的ではなく、長期的経済施策が必要である。
 まだまだ政府の経済対策に頼らなければならない日本と比べ、米国経済はすでに立ち直っている。特にGAFAと総称される世界的IT企業(Google、Amazon.
Facebook、Apple)、そして電気自動車・テクノロジーのTESLA始め世界の大企業の最上位は、米国で起業し国際的に展開している。コロナ禍でも強い米国企業、世界の大企業ランキング上位50社中、米国が30社を占め、日本はトヨタ自動車38位1社のみである。世界の投資家が「コロナ後」を見据えるなかで、日本企業の存在感の薄さが浮き彫りになっています。
 日本でのバブル期1980年代における優良企業を調べてみると、ほとんどが金融系企業であった。米国が発展し続ける要因には、新たなビジネスを生み出すアイディア教育や、個人の学び直し「リスキリング」は大変重要であるが、それ以前の学校教育の時点から、個人の個性を引きだし、多様性をもっともっと尊重していかなければ、米国のような多種多様なアイディアは生まれてこないであろう。 
 先ずは、岸田首相の打ち出した、「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」の3つの重点施策に期待していきたい。

 
※リスキリング:環境の変化に応じて従業員に求めるスキルが変化するのに合わせて、内部人材のスキルを即応させるために、実務レベルの従業員に思い切った教育研修の投資を行うこと

原子力政策の転換

2022年10月 1日

 10月を迎えると秋本番、という雰囲気で朝夕の肌寒さや植物の紅葉のはじまりなど、肌にも目にも秋の訪れを感じれるようになります。秋の気候の変化は色々とありますが、どこに住んでいても一番「秋らしい」と感じられるのは「空の青さと高さ」ではないでしょうか。
 しかしながら、日本を含め世界中で猛暑が続いており、山火事、干ばつ、水害や土砂災害が世界各地で起きています。気候変動の影響で、雨や雪の降る量や時期がどんどんおかしくなれば、より多くの人たち、そして産業全体が広範囲にわたる干ばつに悩まされることになります。
 8月に、米国の43%以上が干ばつに陥っていたことが明らかになり、1億3,000万人以上の人々が干ばつの影響を受けており、2億2,900エーカー分(北海道14個分以上の面積)の作物に被害が生じています。
 欧州においても、60%以上の地域が渇水による干ばつの危機にさらされており、欧州のほぼ全ての河川が何らかの形で水位が下がり、過去500年で最悪の渇水状態が続いている。
 一方で、洪水被害では中国・河南省においては177億ドルの経済的損失を被り、西ヨーロッパでも記録上最もひどい洪水が発生し、これに関してはドイツが200億ドルを超える経済的損失を被りました。直近では、パキスタンの洪水被害において国土の3分の1が洪水の影響を受け、1,350人の人命損失も甚大でした。
 日本を含め世界中で気候変動が続いており、山火事、干ばつ、水害や土砂災害が世界各地で起きています。連日ニュースでは、「記録的」「過去最高」「いままでに経験したことのない」といった、恐ろしい言葉が頻繁に飛び交っています。
 干ばつの頻度と期間は、2,000年以降世界全体で29%増加しています。米国ワシントンD.Cに本部がある世界銀行は、報告書「大きなうねり」の最新版を発表した。その中で、移住の強力な原動力となっている気候変動が原因で、2,050年までに世界の6地域で2億1,600万人が国内移住を余儀なくされる懸念があるとしている。気候変動による国内移住の多発地域が2,030年にも現れ、2,050年までに拡大と深刻化を引き起こす可能性がある。ただし、世界的な温室効果ガス排出量を抑えるための早急で具体的な措置を講じ、環境に配慮した包摂的で強靭な開発を促進すれば、気候変動による移住の規模を最大で8割減らす可能性があるとも指摘している。
 岸田首相は、8月24日に開催されたGX実行会議において、原発の新増設やリプレース、また、原則40年、最長60年と定められている既存原発の稼働期間の延長等を検討すると表明し、従来の政府の立場を大きく転換する姿勢を示した。
 この発言に対して、日商三村会頭のコメントでは、ようやく我々の考え方と政府の考え方が一致したと非常に喜んでいる。と述べている。老朽化等で停止していた火力発電の再稼働により、電力予備率は少し緩和されたが、予定どおり燃料が調達できるか不安はあるし、そもそも安定的な供給力を高めなければ、今後も同じような懸念が繰り返される。カーボンニュートラルの実現に向けても原子力発電の位置づけは重要である。
 今回の岸田首相の発言は、足元の電力安定供給に向け、今冬までに最大9基の原発を再稼働するとともに、設置許可済みの7基の原発についても国が責任を持って地元の理解を得るということだ。
 原子力発電の活用には、高レベル放射性廃棄物処理の問題を含めた核燃料サイクルを回していくことが不可欠で、非常に難しい問題である。国がエネルギー政策の中で、原子力発電の位置づけを明確化したうえで、課題解決に向けて具体的に動き出すというプロセスだ。そういった意味においても、今回の政府方針を歓迎している。

※GX実行会議(産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会・産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわち、GX(グリーントランスフォーメーション)を実行する推進会議)

"価格転嫁の問題"(日商ニュース・ファイルより三村会頭記者会見から)

2022年09月 1日

 今回の会頭メッセージでは、日本商工会議所三村会頭が記者会見に臨み、記者団の質問に対し述べられた価格転嫁問題について、共感を覚えましたのでご紹介させていただきます。 記者:BtoBについては、パートナーシップ構築宣言運動の一層の推進が求められるが、最終的にBtoCにまで波及しなければ好循環は生まれないと思う。消費者の立場からみると、生活必需等の価格が上昇する中で、先ずは賃金が上がらないと、これ以上の物価上昇は受け入れ難いという実感があるように思う。この状況を打開し、物価を上げ、賃金を上げるという好循環を回していくためには何が必要とお考えか。三村会頭のご所見を伺いたい。
 三村会頭:多くの中小企業の経営者にとっては、逆に、先ず物価を上げ、次に収益を確保し、最後に賃上げをするという順番ではないだろうか。もちろん、生活者の中には不安や戸惑いの気持ちを持つ方々がいることは十分理解している。わが国は過去30年間、物価も賃金も上がらないという状況が続いてきた。デフレに慣れきってしまった国民のマインドを、インフレを前提としたマインドに切り替えることは容易なことではなく、この間、様々な困難やトラブルがあると思う。しかし、そういう苦しみを乗り越えなければ好循環は実現できないのではないだろうか。
 中小企業の足元の労働分配は約8割と非常に高く、まず賃金を引き上げるという判断をする経営者は少ないと思うが、状況変化の兆しもみられる。例えば、日商のLOBO調査(6月)によると、中小企業 の中でも、依然厳しい状況にある企業がいる一方で、ある程度収益を上げている企業も存在している。
 また、同調査によると、2022年度の所定内賃金を引き上げた企業は約5割存在している。その中の約7割は人手不足を背景としたいわゆる「防衛的賃上げ」だが、物価上昇を理由に賃上げに踏み切った企業も昨年度より大きく増加し3割にのぼる。余力のある企業も、無い企業も、人手不足や物価上昇という状況変化を踏まえて、賃上げへの関心を高めていることの顕れだと思う。報道等によれば、「インフレ手当」を支給する企業もある。こういった動きが広がることで、日本全体として賃上げを行う環境になることを期待したい。
 パートナーシップ構築宣言の趣旨や運動に対しては、各地から非常に高い評価をいただいているが、これからは実効性を持つように、即ちこの運動に心を入れるように普及促進していくべきだという意見を聴く。取引適正化や価格転嫁は、BtoBだけではなく,BtoCについてもこの動きを波及させていくべきだということだ。現在、わが国の消費者物価上昇率は、2.5%程度と、欧米諸国の8~9%程度の物価上昇と比較すれば、依然として低い上昇率にとどまっている。エネルギー価格をはじめとする昨今の様々な原材料価格上昇の中、わが国は、物価上昇圧力が高まっている状況にある。出来るだけ早く、消費者物価に転嫁していかなければ企業側がもたない。適切に価格を引き上げなければ、企業側も賃金原資を確保できない。人手不足が深刻化する中で、ますます人材確保が難しくなり、賃上げしない中小企業は生き残れない。BtoCでの価格転嫁には中小企業側に言い換えれば、経営者側に相当の覚悟が必要になってくるが、是非ともこれに取り組み、価格を上げて賃上げ原資を確保するという好循環を実現できるようにしたい。

参議院議員選挙後の政府に期待したい。

2022年08月 1日

 7月2日から4日にかけ、通信大手KDDIのau携帯電話などで大規模な通信障害が発生しました。最大で3,915万回線に影響した。報道によると通信障害の原因は、定期的なメンテナンス作業で不具合が起き、それがこのような想定外の事態に陥ったとのこと。高速データ通信を利用して音声通話を可能にする交換機につながるコアルータを新しいものに入れ替える際に問題が発生。これによって、ユーザーからのアクセスが集中し、データのトラフィックがあふれかえり「輻輳(ふくそう)」状態となった。加えて通話の際にアクセスする加入者データベースへも過剰な信号が送られ、データを一致させる作業に問題が起きたことでさらに輻輳が大きくなったようだ。KDDIは、対策などをシュミレーションしていたが、想定外の状況で問題の対処に時間がかかり、復旧までに86時間を要することになった。
 その結果、気象庁のアメダス、銀行のATM、貨物列車の運行、宅配物の荷物追跡システムなど、携帯電話の通信を活用したサービスが相次いで利用できなくなった。
 過去の通信障害では、KDDI:2013年4月(最大288万人、メール送受信不可)、ソフトバンク:2018年12月(4時間半、通信とデータ通信不可)、NTTドコモ:2021年10月(4Gなど約半日、3G完全回復に29時間) 政府、総務省は、長時間にわたって障害が続いたにもかかわらず、利用者への周知が十分でなかったとして、外部の有識者でつくる会議で,KDDIの対応を検討するほか、会社からの報告を踏まえ行政指導などを検討する方針。
 携帯電話会社の通信障害については、電気通信事業法に基づき、110番や119番などの緊急通報が可能な携帯電話のサービスに影響が出ている場合などは、「重大事故」にあたり、総務省への報告が義務付けられている。度重なる通信障害により、政府は「叱る」前に何をすべきか。
 かなりの被害を被っている多くの企業を含む約400万人のためにも、今後起こしてはならない通信回線各社には、例えば、緊急の場合には相互に回線共有できるような環境整備を構築するなど、直ちに改善策を徹底するよう指導してもらいたいものだ。
 次に、7月10日「第26回参議院議員通常選挙」においては、成年年齢引下げにより、投票率を伸ばそうとした取り組みが全国各地で行われた。(犬山市:「犬山せんきょマルシェ」市役所投票会場に開設) 
 愛知選挙区の投票率は、第24回参議院議員通常選挙55.41%、第25回48.18%、今回52.18%であり、4ポイント上回る結果となった。今回の投票において、投票が増えた要因の一つに、期日前投票が増加した。全国の参議院選期日前投票は、前回より1.13倍.有権者総数の18%超、4人に1人の方が事前に投票を済ませている。総務省では、新型コロナウイルス感染防止のため、積極的な期日前投票の利用を呼び掛けていた。選挙管理委員会では、「期日前投票の期間が前回よりも1日多いことに加え、期日前投票を利用する意識が高まったことが、増加の理由ではないか」と発表している。できれば今後は、期日前投票する理由をもっと緩やかにし、投票日時の増加ができれば、もっと多くの投票率アップにつながるのではと期待していきたいところです。
 商工会議所においては、特定の政党のために利用してはならないと、商工会議所法第4条で定められています。しかしながら、皆さん個人個人としては、いろいろな意見があって、是非国会で取り上げられてもらいたいという要望もあると思います。
 現在の日本経済は、短くまとめると、コロナマインドの払拭と、資源資材価格の高騰による価格転嫁が進んできたと言いつつも、それ以外の製造業では、デフレマインドからの真の脱却は、未だできていない現状であり、なかなか欧米のような価格転嫁ができていないのが現実です。非常に残念な状況であるといわざるを得ません。
 参議院議員選挙後、この現実からの脱却、また、ウイズコロナ時代に向け、産業界として国政に大いに期待したいところです。

日本は「世界第3位の経済大国」というけれど?

2022年07月 1日

 日本商工会議所LOBO(早期景気観測)<2022年5月調査結果>を見ますと。
 ~業況DIは、活動回復で個人消費が持ち直し、改善。先行きは、価格転嫁が追いつかず厳しい見方~
 5月の全産業合計の業況DIは、▲20.4(前月比+5.3ポイント)。3年ぶりの行動制限のないゴールデンウイークで人の流れは回復に向かい、外食・宿泊関連のサービス業、百貨店、土産品販売等の小売業で業況が改善した。また個人消費の回復により卸売業も業況が改善した。一方で、資源・資材価格の高騰・供給不足の長期化により、製造業は改善するもその動きは鈍く、建設業では業況悪化が継続した。資源・資材価格の高騰スピードは速く、増加したコストに見合う価格転嫁は行えていない。価格転嫁の遅れは引き続き企業の収益回復の足かせとなっているものの、活動回復による個人消費の持ち直しに下支えされ、中小企業の景気感は改善の動きが見られた。先行き見通しDIは、▲23.6(今月比▲3.2ポイント)。需要喚起策や水際対策の緩和策でさらなる活動活性化に期待感がうかがえるも、個人消費の停滞を不安視する声がサービス業や小売業、卸売業を中心に多く聞かれた。また、長期化するロシアのウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ対策による資材供給の乱れや、資源・資材価格の高止まりに企業の価格転嫁は追いついておらず、業績悪化が懸念されており、厳しい見方が続く。
 この渦中にあって、特に注視すべきは、賃金や雇用環境、物価などをはじめとした様々な要因からなる消費者マインドです。この消費者マインドの動向こそ、しっかりと見つめていくことが大切です。
 現在の日本の地位、国内総生産(GDP)は世界第3位とすぐに答えられる人は多いと思います。
2010年に中国に追い抜かれて以降、米国、中国に次ぐ第3位です。国ごとの物価の違いを示す購買力平価でGDPを換算すると、日本は2009年にインドに追いに抜かれて以降、第4位となっています。GDPを人口で割った「一人当たりGDP」と人口の掛け算と捉えれば日本のGDPは、第28位にまで落ちこんでいるのが現実です。
 また、同一商品単価で世界の経済状況を比較するものに、各国のマクドナルドで販売されているビックマック1個当たりの価格ランキング指標があります。第1位はスイスで804円、2位ノルウェー737円、3位アメリカ669円、日本は33位で390円でした。ランキング表での最下位57位はロシアで201円であった。(現在ロシア撤退)日本マクドナルドでは、さらにセット販売にて安価で提供しており、世界で最も安い国に匹敵するほどになっている。進むデフレからの脱却を何とかしなければならないのですが、残念ながら、2022年春闘の結果においても、政府の賃上げ政策で盛り込んだ賃上げ率には、ほど遠く、大企業でも2.7%に留まり、中小企業においては、1.8%でまだまだ分配されていない現状です。
 企業間連携・共存共栄を宣言する「パートナーシップ構築宣言」にて、かなり企業間同士の繋がりも広がってはいるものの、まだまだ、かなりの企業が苦戦され、資源と資材等々の高騰に対して、価格転嫁のスピードが追いついていない。デフレから脱却し、従業員の給料が増え、購買意欲が生まれるまでには、当然タイムラグがあり、そのタイムラグを縮めるためにも、正々堂々と価格転嫁を直ちに行って下さい。と申し上げたいです。
 皆さまには、買う立場、売る立場の両方ありますが、このことをきちんと受け入れて、社員への賃金に繋げていかないと、本当に世界から取り残されて、今の状況から抜け出せないことになります。
 これらをよくよく加味していただき、日本経済を支えていただきたいと思います。

※LOBO調査は、商工会議所ネットワークでの早期景気観測。調査結果詳細は、LOBO調査ホームページでご覧いただけます。
※業況DI値は、業況・売上・採算などの各項目についてのヒヤリング対象の状況を表す数値。「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いたもので、DIの数値は50が横ばいを表します。

健康経営のはじめの一歩 "健康宣言"

2022年06月 1日

いま、「健康経営」が求められています。
 健康宣言とは、健康経営(従業員の健康保持・増進を図ることが「コスト」ではなく、将来的に企業の収益性などを高める「投資」であると捉え、健康管理を経営的視点から戦略的に取り組んでいくものです。※「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標)の考え方に基づき、健康づくりへの取り組みを会社の内外に発信(宣言)することです。
 これにより、従業員の活力向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や企業としての価値向上へつながることが期待されています。経済産業省の資料によると、現代の就職活動をする学生が就職先に求める条件は、「給与」より「社員の健康や働き方」への配慮であるとしています。 
 企業が健康宣言に取り組めば、社外へのアピールポイントにもなり、優秀な人材確保にもつながります。少子高齢化による働き手不足が進むなか、いま、健康経営に取り組む企業が増えています。
 健康保険組合(組合健保)や全国健康保険協会(協会けんぽ)が行う「健康宣言」を通じて会社を元気にしませんか。

~健康経営優良法人認定制度~「健康経営」を実践している企業が評価される時代です。
 この制度は、経済産業省・日本健康会議(国民一人ひとりの健康寿命延伸と適正な医療について、経済団体、医療団体、保険者などの民間組織や自治体が連携し、行政の支援のもと実効的な活動を行うために組織された活動体:共同代表 日本商工会議所会頭)が、健康経営に積極的に取り組んでいる企業を評価し、健康経営優良法人認定する制度です。

認定を受けるための
STEP1:「健康宣言」を実施しよう。健康経営を経営理念の中に明文化し、企業としての取り組む姿勢を社内外に発信する
STEP2:実施できる環境を整えよう。経営層全体で取り組みの必要性を共有したり、担当者・担当部署を設置するなど、取り組みやすい体制を作る。
STEP3:具体的な対策をしよう。自社の健康課題を見つけ出し、目標を設定したうえで施策を実行
する。
STEP4:取り組みを評価する。施策の効果を経営層を含めて確認し、現状の取り組みの評価を次の取り組みに生かしていく。

 認定制度では、中小規模の企業などを対象とした「中小規模法人部門」と規模の大きい企業などを対象とした「大規模法人部門」の2つの部門に分け、それぞれの部門で「健康経営優良法人」が認定されます。
 健康経営優良法人認定で得られる4つのメリットとしては、①人材確保に有利になる。②企業イメージが向上する。③自治体や金融機関などのインセンティブが受けられる。④生産性が向上する。
 当商工会議所も昨年に「健康宣言」し、本年3月9日に日本健康会議から「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」として認定されました。
 大切な従業員とその家族の健康増進、企業の利益・イメージ向上のため、先ずはじめに「健康宣言」にご参加ください。
 引用:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」「健康経営を始めましょう」健康保険組合連合会「健康宣言をしましょう」

"ご存じですか⁉ 今年の人事労務に関する法改正"

2022年05月 1日

"ご存じですか⁉ 今年の人事労務に関する法改正"

本年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。これによるメリット、デメリットやトラブル、また、何が代わって、暮らしにどのような影響がもたらされるのか。など多くの話題がマスコミに取り上げられていますが、その他に今年は、経営者や人事・労務担当にとって非常に身近で重要な法改正が数多くあります。例えば、「育児・介護休業法」や「短時間労働者の社会保険適用」など、企業にとって準備しなければならない法改正の要点をご紹介させていただきます。
【2022年1月1日施行】
 傷病手当金の支給期間の通算化 《健康保険法》
  同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間について、これまでは支給開始日から「起算して1年6ケ月」とされていましたが、改正により「通算して1年6ケ月」に達する日まで対象となります。
 雇用保険マルチジョブホルダー制度創設 《雇用保険法》
  複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者を対象として、2つの事業所の1週間の所定労働時間を合算して20時間以上となる等の要件を満たす場合、労働者本人が手続きをすることにより、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。
【2022年4月1日施行】
 パワハラ防止対策の義務化(中小企業) 《労働施策総合推進法》
  中小企業に対して設けられていた猶予期間が終了し、全ての企業にパワーハレスメント防止対策が義務化されます。
 一般事業主行動計画の策定義務対象拡大 《女性活躍推進法》
  現在、常時雇用する労働者が301人以上の事業主には、「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出」や「自社の女性活躍に関する情報公開」が義務付けられています。改正により、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主も義務の対象となります。
 育児休業等に関わる措置の義務化 《育児・介護休業法》
  有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和と、育児休業を取得しやすい雇用環境整備・個別の周知・意向確認の措置の義務付けの2点が改正されます。
 個人情報利用のグローバル化、技術革新等の進展を踏まえた改正 《個人情報保護法》
  個人の権利・利益の保護、情報活用の強化、AI・ビックデータへの対応等を目的に改正されました。
 在職老齢年金制度の見直し《厚生年金保険法》
  60歳から64歳に在職老齢年金を受給し、かつ厚生年金の被保険者となっている場合、賃金と年金受給額の合計額が月額28万円を超えると年金が支給停止されます。改正により、この基準額が月額28万円から月額47万円に引き上げられます。
【2022年10月1日施行】
 出生時育児休業(産後パパ育休)の創設 《育児・介護休業法》
  子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる「出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されます。原則として、休業の2週間前までの申し出により休業が取得できる。さらに2回に分割しての取得も可能となります。
 育児休業の分割取得 《育児・介護休業法》
  現行制度では、子が1歳に達するまでの育児休業は、原則子1人につき1回限りの所得となりますが、改正により、分割して2回取得することが可能になります。
 社会保険の適用拡大《厚生年金保険法・健康保険法》
  現在、従業員数501人以上の企業には、パート・アルバイトなどの短時間労働者のうち、一定の要件に該当する労働者については社会保険加入が義務付けらています。改正により、従業員数101人以上500人以下の企業にも適用されることになります。

以上、本年の法改正の一部を要点のみご紹介させていただきました。当会議所におきましては、随時労務対策相談窓口を開設しておりますので、是非ご利用ください。

ウクライナ情勢による日本経済への影響

2022年04月11日

 連日の報道による、ウクライナでロシア軍における市街地への攻撃が相つぎ、泣き叫ぶ子供や、逃げ惑う住民の姿に、心が張り裂ける想いは皆さんも同じだと思います。
 欧米諸国や我が国は結束して、ロシア経済を孤立させるべく厳しい金融制裁を科しているが、ロシアにとっては、制裁によって侵略行為の代償を高める程度で、未だ軍事衝突の危険性は高まっています。ロシア軍の攻撃は、軍事施設のみならず、居住区マンション、学校、そして、ヨーロッパ最大規模のウクライナ南部にあるサポリージャ原子力発電所を攻撃しました。この原発は6基の原子炉を抱え、ウクライナの電力の5分の1をまかなっていると言われている。ロシア軍は、閉鎖済みのチェルノブイリ原子力発電所のほか、稼働中のザポロジェ原発を制圧し、ロシアは「ウクライナが核兵器開発を企てている」と主張を展開し、侵攻や原発制圧を正当化している。
 これまで、脱ロシアの動きを加速させ、NATO(北大西洋条約機構)への加盟を求める動きがあったウクライナであつたが、NATOがウクライナへ部隊を派遣するという選択肢は除外されている。NATOの直接の関与は大戦争(世界3次世界大戦)にもつながるリスクが大きい。NATOは東欧地域の軍備はさらに拡充するであろうが、多少の抑止力になる程度である。
 ならば、なぜ、国連平和維持軍が派遣されないのか。
派遣決定は、国連安全保障理事会の構成国(15か国)のうち、9か国の賛成が必要です。しかし、中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの常任理事国5か国のうちいずれかが反対票が投じた場合、否決されます。常任理事国は、常時同理事会に代表されかつ非手続的事項に関する表決において拒否権を有する点で、非常任理事国(10か国)に比べ、二重の特権を享有している。また、常任理事国のみが軍事参謀委員会の構成国となる。さらに、国連憲章の改正にあたっては、批准段階において常任理事国の批准が必須の要件になっている。これらのことから、ロシアと拒否権を行使する国がある以上、国連平和維持軍の派遣はあり得ない。いずれにしても国連安全保障理事会の組織体制の在り方に欠陥があることは明らかである。現在、常任理事国であるイギリスは、政府として議論する用意があると表明しており、各国も同調していくべきある。
 日本経済に深刻な影響がやってくる。
 一連の制裁の中でも、ロシアの主要銀行を国際金融のネットワークであるSWIST(国際銀行間通信協会:銀行間の国際金融取引を仲介する共同組合)から除外することや、米欧などがロシア中央銀行の資産を凍結するなどのインパクトは非常に大きい。これらの制裁によって、ロシアは事実上、通貨ルーブルの価値を防衛することが難しくなった。
ロシアの複数の銀行は国際的な資金決済システムから排除される。ロシアの大手銀行が資金繰り逼迫に陥り破綻懸念が高まっていることは世界の金融市場にマイナスである。また、ウクライナとロシアはグローバル経済にとって重要なエネルギー、鉱物資源や穀物の供給者としての役割を果たしている。天然ガスに関しては、ロシアは世界最大の輸出国。EUは天然ガスの4割をロシアからのパイプラインを通じて輸入している。税関のデータによると2020年のわが国の液化天然ガス輸入においては、ロシアはオーストラリア、マレーシア、カタールに次ぐ第4位であり、シェアは7.8%。2020年の小麦輸出に関してロシアは世界トップ、ウクライナは第5位であった。現地企業と取り引きをしている日本企業にとって大きな影響を及ぼすだけでなく、原油・天然ガスなどのエネルギー価格や穀物価格の上昇も引き起こし、間接的に幅広い企業に影響が波及する。
 ロシアとウクライナは、停戦をめぐる協議をスタートしましたが、短期間で何らかの停戦合意が得られ、ロシアに対する制裁が緩和された場合には、影響は最小限で済むでしょう。しかし交渉が決裂した場合には、制裁も継続することになりますから、一連の影響が悪化することが予想されます。まずは停戦合意が実現することを祈りたいと思います。

※インターネットリソースはすべて2022年3月7日に最終閲覧

コロナ禍での"2022新春講演会"の開催と、新年度事業への取り組み

2022年03月 7日

 1月29日に実施した"2022新春講演会"(講師:トヨタ自動車㈱取締役会長 内山田竹志氏、共催:犬山商工会議所・小牧法人会犬山支部・、名古屋経済大学)につきましては、第6波の新型コロナウイルス感染症再拡大により、急遽開催方法を変更しての開催とさせていただきました。

 内山田会長をお迎えしての講演会は、昨年のコロナ禍において、実施間際に中止させていただいたことから、参加の皆様及び内山田会長には、大変ご迷惑をお掛けました。そして今回も同様に新型コロナウイルス感染症再拡大により、一時は中止も考えましたが、ハイブリット方式にて開催することといたしました。
 開催手法は、感染症防止対策を徹底した会場において、リアル参加者を当所役員に限定し、一般聴講者は、オンライン併用によるウエイブ方式(ユーチューブ限定配信)として、100人を上回る参加者での開催になりました。講師の内山田氏は、初代トヨタプリウスの開発責任者であることから、偶然にも今回の講演会は、会場でのリアル参加者とオンライン参加者とのハイブリッド方式になったことを冒頭のあいさつでふれ、大変なごやかな雰囲気にてはじまりました。
 「水素社会実現への取り組み」~2050カーボンニュートラル実現を目指して~と題してのご講演。「トヨタだけでなく、サプライチェーン全体がCO2フリーに取り組まなければならない。トヨタは170カ国以上の顧客に、軽自動車からトラックまで幅広い車種を製造しており、燃料と車のセットで、いかにCO2を減らすか、各国の状況や車の利用を見ながら、世界全体でカーボンニュートラル実現を進めていく」と語られた。
 続いて、トヨタのEV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)の取り組みやカーボンニュートラルの選択肢を増やす活動などを紹介。「水素は地産地消でいろいろな場所でつくることができ、二酸化炭素を排出しない。地球環境を考えれば将来有望なエネルギー」とし、水素を基礎にしたエネルギーの普及を日本や世界で考えていく必要性を語り、最後に自身の車のナンバーを「CO2ゼロ」と読める「4020」にすることで、脱炭素に向けた強い思いを込めたと熱く語られた。最後は、子や孫、そのまた子供たちに少しでも住みやすい地球環境を渡さなければいけない」と呼びかけた。
 聴講された皆様においては、何かしら感化され、なかには早速「トヨタ"ミライ"」を予約された方が要るや否や?会員のみでなく市民等も参加対象とした「新春講演会」は、これまで28回を数えましたが、今回初めてオンライン併用したハイブリット方式で実施したことで、今後当所におけるウイズコロナに向けた事業展開に弾みがつきました。
 犬山商工会議所におきましては、令和4年4月から新年度がスタートします。
 コロナ禍で急激に落ち込んだ経済もようやく回復基調に転じかけた矢先、第6波の感染再拡大により3年目となるコロナ禍に突入いたしました。今の難局を乗り越え、当地が一層発展するために、ウイズコロナを見据えた、中小・小規模事業者が抱える課題を把握し、総合的かつ計画的な伴走型支援を中核の一つとして位置づけ、中小・小規模事業者への支援強化を進める必要があります。
 現在、商工会議所において7部会(商業・工業・建設業・観光・サービス業、理財金融業・自動車.運輸)役員会、総務委員会、常議員会にて、新年度の重点事業とした新たな事業計画並びに各事業における予算計画立案に向け取り組んでおります。
 令和4年度におきましても、更なる会員皆様からのお力添え、ご支援・ご協力を賜わりますようお願いいたします。

"今"を生き"未来"を拓く

2022年02月 1日

 今回のメッセージは、日本商工会議所ニュース特集で掲載されました、2022年新春特別対談(日本商工会議所会頭三村明夫氏〈日本製鉄㈱名誉会長〉×2021NHK大河ドラマ「青天を衝け」作・脚本担当 大森美香氏)において、「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一翁をモデルとした、NHK大河ドラマ「青天を衝け」が昨年放送され、幕末の動乱の世に立ち上がり、近代化のために奔走した、渋沢翁の精神や功績に注目が集まった年でもありました。今回の対談において、渋沢翁から学ぶべきことについて語られた、三村会頭の一節をご紹介させていただきます。

【渋沢翁の功績や思想は今も息づく】
渋沢翁の意志であった「私益と公益の両立」の考え方を世の中に広げていくことは、所得格差などさまざまな社会課題のある現代においてこそ意義があることだと思い至りました。渋沢翁は生涯に約500の企業の設立に関わり、約600の教育機関や社会公共事業を支援しており、その中に「商工会議所」が存在します。それらの企業では社訓や社内研修などを通じて、今でも思想が受け継がれています。一昨年から続くコロナ禍も相まって日本経済は大きなダメージを受け、さらに格差が広がっています。日本が豊かで強い国にならなければ、コロナで苦しんでいる人や格差にあえぐ人たちを救うことはできません。こうした問題の解決には、社会を豊にし、人々を幸せにするといった公益を追求しながら、同時に利益を上げていくという渋沢翁の思想が非常に大事です。
【新しい日本をつくったのは経済の力】 
 現在、政府は「新しい資本主義」を掲げて、アフターコロナを見据えた新たな進路を模索しようとしています。ドラマ「青天を衝け」の中で、渋沢翁と三菱財閥の基礎を築いた岩崎弥太郎との対立が描かれていましたが、ここ数十年の間、日本では岩崎弥太郎方式の、いわゆる新自由主義が叫ばれてきました。
 新自由主義とは、政府はできるだけ市場に介入せず、個々の企業が自社の利益を最大化する努力に任せることによって、社会全体で資源の最適配分がなされるという概念です。ドラマでは渋沢翁のライバルとして登場したので、対象的な描き方になってしまいましたが、岩崎弥太郎が進めたことは本来の資本主義の在り方です。この方式だから国力が上がった面もあると思いますし、これからもなくなりはしないでしょう。ただ、単に市場に任せておくだけでは解決できない課題もあります。
 例えば、安全保障や医療問題、環境問題などは、市場だけでは解決できず、「市場の失敗」という事態が生じ得ます。こうした分野では国家の役割が重要です。
 従って、新しい資本主義の在り方とは、国と企業がそれぞれの役割を果たし、企業としても社会課題の解決と利益の追求の両立を図ること、そのやり方を皆で考えることなのではないかと思います。多くの企業の理念にも、「社会発展のために尽くす」という考えがすでにかなり入ってきています。
 経営者をはじめ、全てのビジネスパーソンに、「近代を作り上げたのは経済人」ということを知ってもらいたいです。その誇りを胸に国を動かすという気持ちで。これからの新しい時代をつくってくれたらと期待しています。
 今回のコロナ禍は多くの企業、特に中小企業のさまざまな課題を浮き彫りにしましたが、考え方を変えれば課題解決の大きなチャンスが巡ってきたということでもあります。渋沢翁がもし現代におられたら、「もう少し顎を上げて、前を向いて動こう」と励ましてくれるのではないでしょうか。
 現に、日本には創立100年以上の企業が約5万社あります。そうした企業は、関東大震災や第2次世界大戦を乗り越え、環境の変化に巧みに対応しながら生き残ってきました。今回のコロナ禍もきっと乗り越えられると確信しています。 

逆境の時にこそ、自らが力を尽くせ !!

2022年01月 1日

 新年あけましておめでとうございます。

 平素より、会員をはじめとする皆様には、当会議所事業に対し、一方ならぬご支援とご協力をいただき誠にありがとうございます。年頭に当たり、厚く御礼申し上げます。
さて、昨年の2021年を振り返ってみますと、2020年1月に我が国で初めて新型コロナウィルス感染者が報告され、はや2年が経過しようとしています。
 年を通じて永く続いた新型コロナウィルス感染症もようやく落ち着きを見せ、全世界において10月以降には、人々が動き出し、ポストコロナの世界的な景気回復が始まった矢先、消費需要に対する供給が追い付かいない状況に陥り、市場経済のバランスが崩れました。
WTI原油先物は、コロナ禍前の2020年1月、1バレル65ドルで暴落した原油相場が、2021年10月下旬には1バレル85ドル台を超え、過去に無い高騰となった。
 11月下旬には、原油価格高騰に募らせた米国の呼びかけに応じて中国やインド、韓国、英国そして我が国も石油備蓄を初めて放出する方針を決め、主な消費国が足並みをそろえる異例の対応となった。日本で石油備蓄が始まったのは、1973年に起きた第1次オイルショックがきっかけで、備蓄量は、国が所有する国家備蓄(国内消費量の145日分)、石油会社に法律で義務づけている民間備蓄(同90日分)、産油国共同備蓄(同6日分)がある。政府は今回初めて民間備蓄ではなく国家備蓄の余剰分を放出するとしているが、石油備蓄法では、放出は石油の供給が危うくなる有事の「最後の手段」であり、今回の国家備蓄放出は全く異例の対応であり、国家安全保障面からも批判をあびる状況となった。
 更に、これら一連の世界動向の直後に発生したのが、新型コロナウィルスの変異株「オミクロン株」の出現である。原油市場は更に動揺し、価格は一転して下落。12月には1バレル70ドル台まで減少した。米エネルギー情報局は、12月上旬に短期見通しを公表、2022年は石油輸出国機構(OPEC)プラスや米国での原油生産が増加し、世界の供給量の伸びが需要の伸びを上回るという。この結果、平均価格は1バレル70ドルに落ちつくとしている。
 新型コロナウィルス感染症の再拡大が懸念されるなか、原油市場においては、産油国と消費国の思惑と駆け引き、そこにグローバルな需給や出来事を先読みする市場が複雑に絡みあっているなか、私たちは、2022年の原油市場の動向に着眼し、高いアンテナを張って注視いくことが最も重要です。
 最後に、近代日本資本主義の父であり、東京商工会議所初代会頭の渋沢栄一翁は、関東大震災の混乱の渦中にあっても「逆境のときこそ、力を尽くす」自らの信念によって、晩年にあってなお、我が国を立て直すべく精力的に奔走されました。逆鏡やピンチにいかに力を発揮できるのか、張り切れるのか。我々経営者に課せられた使命だろう考えられます。渋沢翁の意志を受け継ぎ、中小企業の地域の発展に向けて、先頭に立って頑張ってまいります。皆さまの多大なるご支援、ご協力をお願いし、私の年頭あいさつとさせていただきます。

値上げに臆病な日本企業、消費刺激策なければ「負の循環」に!

2021年12月 1日

 新型コロナウイルス感染状況も落ち着き、人々が動きだし、ポストコロナの世界的な景気回復により、国内外商品市況が大幅に上昇する中、国内需要に対する供給が追い付かない状況に陥っている。
WTI原油先物は、昨年1月に1バレル65ドルで暴落した原油相場が、現在1バレル82ドルを超え、過去に無い急激な高騰となっている。ワクチン摂取が進んだことにより欧米を中心にコロナ禍から景気回復が順調に進み、それに伴い石油消費も急激に伸びており、そうした需要の動向が原油価格に反映されている。
 また、世界的にはコロナ禍の影響による金融緩和が続いており、いわば"金あまり"の状況でもあり、一方、コロナ禍からの景気回復が進めば、原油価格はさらに上昇を続けることになる。つまり、そうした考えから、値上がりで利益を得ようとする投機的な資金が原油先物市場に流れ込んでいることも原油高騰の要因に挙げられる。
 これまでの日本経済の歴史において、1991年にバブルが崩壊すると、数次の経済対策が実行されたが、大手金融機関の相次ぐ破綻、2000年代以降は、世界経済の拡大が続く中、新興国の急成長と共に成長エンジンの役割を先進国から新興国にシフトしてきたが、新たな先進国に牽引されてきたのも事実である。2007年末、米国を中心としたサブプライムローン問題や原油価格高騰、2008年に米国でのリーマンショックが発生すると世界的な経済危機へと発展。その後、安倍政権が目指す、「これまでのデフレからの脱却と富の拡大の実現」を掲げ、経済政策として、アベノミクス「三本の矢」を掲げたが、経済成長の実現には及ばなかった。そして、今回のコロナ禍、ポストコロナでの原油価格の急激な高騰である。バブル崩壊から30年の間に、幾つかの経済指標において、日本はアジア諸国に逆転されてきた。
現在、ポストコロナの世界的な景気回復に国際商品市場が大幅に上昇する中、日本国内の消費者物価は低迷している。これは企業の価格転嫁が進んでいないためではないでしょうか。価格据え置きは消費者にとって好ましく見えるが、企業は雇用カットや賃金抑制で対応する「負のスパイラル」に陥る危険性がある。これまでも原油価格の高騰では、ガソリン・電気・ガス等は直ちに相次いで値上げに踏み切っているが、モノづくり産業での製造業においては、企業努力にて値上げを限界まで踏み切らず、美徳とされていた「我慢」に耐える日本文化は、もはや限界の時を迎えている。
 いまこそ、デフレからの脱却に向け、原油価格高騰による値上げに踏み切る覚悟が必要である。
 物価が安くなるからといって、デフレが良いわけではない。モノの値段が下がり企業の売上が減少すると、従業員の給与がカットされ、長引けば雇用も不安になります。そうすると人々は購買意欲がなくなり、企業の売上がさらに下がります。(デフレスパイラル) このデフレスパイラルを払拭するためにも、インフレ目標も設定すべきではないでしょうか。インフレ時には、企業の売上が増加し、従業員の給料が増え、モノを買おうとする意欲が生まれるという循環が生まれます。
 しかし、物価の上昇以上に収入が上がらなければ生活は苦しいものになります、短期間のうちに物価が2倍3倍になることもあります。(ハイパーインフレ) 
 デフレから脱却し、従業員の給料が増えるまでには、当然タイムラグがあり、そのタイムラグを縮めるためにも、企業は、これまでの我慢に耐える文化は終わりにし、価格転嫁への早い決断が必要な時ではないでしょうか。

「分野の壁、破った偉業」"祝・ノーベル物理学賞受賞 眞鍋氏

2021年11月 1日

 世界中がコロナ禍による危機に直面し、厳しい状況の中、大変うれしいニュースが飛び込んでまいりました。スウェーデン王立科学アカデミーは、10月5日、2021年のノーベル物理学賞を、眞鍋淑郎氏・米プリンストン大学上席研究員=愛媛県四国中央市出身、米国籍=ら3氏に授与すると発表がありました。眞鍋氏は、大気と海洋の循環を考慮した気候変動のモデルを開発。二酸化炭素などの温室効果ガスに着目し、地球温暖化の予測に関する先駆的な研究を続けた業績が高く評価されての受賞です。
 同アカデミーは2018年に、地球科学や数学などの基礎研究に貢献した研究者に贈る「クラフォード賞」を眞鍋氏に授与され、今年は、スウェーデンの地元ラジオ局がノーベル賞候補の一人として名前を挙げていたとはいえ、「宇宙や素粒子分野の受賞は多いが、私のような気候学者が選ばれるなど聞いたことが無い。広い分野の研究者が対象になるのは素晴らしいことだ」とご本人も驚いているとのことです。また、北海道大学理学研究院の見延庄士郎教授(気候科学)は、「ノーベル賞に地球科学賞はない。分野の壁を越えた受賞は、いかに重要な研究だったかを示している」と驚きを隠さない。重要な業績の一つである気候モデルがなければ、地球温暖化や長期的な気候の予測は不可能だったとし、「(気候変動に関する国際合意の)パリ協定や再生可能エネルギーの導入にもつながった。今日の社会の在り方を大きく変えた偉業だった」と称賛している。このように今回の受賞がいかに偉業であったことがうかがえます。
 眞鍋氏は、1931年新立(しんりつ)村(のちに新宮村、現在の四国中央市新宮町)で生まれた。旧制三島中学(現・県立三島高校)を卒業後、東京大学にて地球物理学を学ぶ。同大学院を出て、1958年からアメリカ政府気象局で研究し、その後米国に帰化されました。
 地元新聞等によると、渡米の理由については「戦後、私の研究成果を生かす就職先が日本には無かった」と語られ、堪能であった英語力については、戦時中に旧制三島中学で、勇気ある英語教師から"敵国語"をみっちり学んだ。高空をB24が飛んだが「ここには爆弾を落とさないだろう」と勉強に励んだ。
 眞鍋氏の出身地、愛媛県四国中央市には、幾度か出張で訪れましたが、大変のどかで自然豊かなところ。学生時代に故郷を離れ、高度成長真っ只中の東京暮らしにおいて、故郷とのギャップが、その後の自然環境の研究に活かされているように感じました。
 また、今でも私の記憶に新しいのが、数年前フランス・パリを訪れた際、パリの北駅のホーム壁に描かれていた、眞鍋氏の名前と方程式が、アートとして大きく描かれていたことです。これは、2015年に、地球温暖化対策について話し合う「COP21」に合わせて、鉄道会社が気候変動問題を表現する作品をアーティストに求めたところ、眞鍋氏の研究が注目され制作されたことを、今改めて思い返しております。ぜひ一度、機会がありましたら皆様にもご覧いただきたいものです。
 眞鍋氏は、これまでを振り返り、気候変更の研究を行った言動力は好奇心であり、研究を始めた60余年前は、後に気候変動が重要な問題になることも、自身が大きな成果を生むことも想像していなかっという。大きな影響を与える大発見は、研究を始めた時にはその貢献の重要さに誰も気付かないものだ。
 若い研究者に対しては、今はコンピュータに振り回されている人が多い。流行っている研究に走らずに、自分の本当の好奇心ですね。と語っている。
 改めまして、眞鍋氏の好奇心から始まり、探求心をもって、継続してやりつづけた結果でのノーベル物理学賞受賞、誠におめでとうございます。

経営者の「守るべきプライド」と「捨てるべきプライド」!

2021年10月 1日

 新型コロナウイルス感染症のような予測不可能な事態に対応すべく、これからの企業には逆境や危機をさらなる飛躍の機会へと変換できる「レジリエンス」(回復する力)を持つことが求めらます。withコロナ・afterコロナの状況下で、企業が成長していくために、経営者はどのような役割を果たすべきでしょうか。
 新型コロナウイルスにより新しい顧客の考え方や行動を読み取り、それに沿ってビジネスを進めていく必要があります。※KPMGが一般消費者に行ったグローバル調査では、主要購買要因はブランドからコストパフォーマンスへと移り、企業に対しより信頼を求める傾向が見て取れます。コロナ禍での身体的な健康・安全が脅かされた状態が影響し、人々の意識が変化したことがわかります。
 企業の経営者は、このような状況の変化に対応しつつ、さらに一歩進んで、変化した状況を所与のものとして、積極的にメッセージを発信しながら根本的な企業のあり方を見直していくことが求められています。どのような状況下においても、経営者が会社と従業員を守るには、したたかな戦略が必要になってきます。
 そこで、経営者にとって先ず感じていただきたいことは、自らの誇りでの「必要なプライドと不要なプライド」、自尊心での「持つべきプライドと捨てるべきプライド」です。
 ここで言う、誇りでの「必要なプライド」と、自尊心での「持つべきプライド」を「守るべきプライド」とし、同様に「不要なプライド」を「捨てるべきプライド」とさせていただきます。
 経営者が、「守るべきプライド」と「捨てるべきプライド」を上手にコントロールすることが、"こういうご時世"には、最も必要ではないでしょうか。
 向上心の高さとプライドの高さは比例する面もあります。仕事で成果を出すためにはプライドが高いことを求められる場面も多いです。「もっと成長したい」という向上心につながるようなプライドは守るべきです。どうしてもプライドが高い人は他人を見下し、自分を実態よりも大きく見せようとする心理が働いてしまいます。結果として他人と信頼関係は築けません。
 また、自分の弱さを出せないのが"やせ我慢"です。"やせ我慢"を認める人もいますが、プライドが傲慢さにつながれば悪いことです。プライドが自身につながれば良いことです。
 そのようなプライドによる"やせ我慢"を早く捨て、SOSを発すれば、周囲から助けてもらえるようになり、より大きなことを成し遂げられるでしょう。
 周囲と適切な信頼関係が築けていないようであれば、先ずはプライドを捨てる努力が必要です。
 経営者にとってコロナ禍の"こういうご時世"こそ、「社員の誇り」「会社の誇り」「経営者の誇り」、「社員の自尊心」「仲間の自尊心」を守るべきであって、「成果に対する自尊心」「成功に対する自尊心」「実績に対する自尊心」は今すぐ捨てるべきプライドではないでしょうか。      
 withコロナ・afterコロナに求められる、ニューノーマルにおける経営者の役割だと思います。


※KPMG(出典:フリー百科辞典「Wikipedia」1870年にイギリスで設立されたWilliam Barclay Peat&Co.を始めに、154カ国に20万人の専門家を持ち、会計と経営コンサルティングを主力とする多国籍企業)

「会頭メッセージ」が、日本商工会議所発行「会議所ニュース」にて、全国に取り上げられました。

2021年09月 8日

news.jpg会頭メッセージは、商工会議所だより平成24年4月1日号からスタートいたしました。
第4代会頭(現名誉会頭)日比野良太郎氏から始まり、令和元年12月号からは、第5代会頭高橋秀治氏に引き継がれています。
この「会頭メッセージ」が、日本商工会議所が発行している「会議所ニュース(7/11号)」において、地域経済を支える全国各地の取り組み事例の一つとして、全国商工会議所(514箇所)に紹介されました。
「会議所ニュース」は、日本商工会議所及び全国各地の商工会議所(514箇所)の政策提言や事業活動をはじめ、ビジネスに役立つ情報を掲載している情報誌です。
会頭メッセージが始まった経緯等が「会議所ニュース」に取り上げられています。
また、これまでに発表された、「会頭メッセージ」タイトルを幾つかご紹介させていただきます。
第1回目(平成24年4月号 日比野名誉会頭)のタイトルは、「こんな日本を誇りに思う」東日本大震災から1年経過した思いをメッセージに表されました。
 その後、「汗は自分が、手柄は人に」、「三感で前進」、「連携なくして進歩なし」、「日本再出発の第一歩」、「武力戦争はやめ、経済戦争を」、「犬山祭、ユネスコ無形文化遺産登録へ」、「今こそプレミアム商品券」、「会頭道は社会への貢献」、「晴れ男ここに在り」、「会頭職の三段跳び」、「袖ふり合う縁を活かす」、「連携と交流により思いもよらぬ花が咲く」、「会頭退任に当たって、お礼のご挨拶と新役員に期待すること」等々を紹介。
髙橋会頭の第1回目(令和元年12月~)のタイトルは、就任挨拶を兼ねた「コンサバティブとイノベーションの融合による地域経済の活性化を」、「充実した会員基盤を擁し、時代に即応した商工会議所を目指して」から始まりその後は、新型コロナウイルスの影響にて、会員企業への応援、励ましを載せたメッセージとして、「会頭からの緊急応援メッセージ」、「新型コロナウイルス、私には半分見えています」、「0か100かの議論ではなく、30か50の議論を」、「長寿企業に学び、コロナ禍を乗り越えよう」、「ワクチン普及で景気はコンセンサス上振れ」、「マスターズ・トーナメントにみる美しき一礼」、「モノ消費より、心に残るコト消費」等々を紹介。
会頭メッセージは、会議所ホームページにて公開しています。

"モノ消費"より、心に残る"コト消費"

2021年08月 2日

 新型コロナウイルは、私たちの生活スタイルにも大きな変化をもたらしました。
他者とのコミュニケションはWeb会議システムで代用でき、テレワークでの働き方も浸透してきています。東京商工リサーチの調査では、緊急事態宣言等において、テレワークの普及率は、全国で31%、東京においては54%となっており、働き方も確実に変わりつつあります。
また、必要な物資のほとんどは、いまやオンラインショップで手に入ります。
現在多くの方が、外出が自粛されても十分な生活を送れることを実感しているのではないでしょうか。
 この先、具体的な時期は想定できないものの、コロナウイルスはいずれ収束していくことでしょう。ただ、コロナによって変化したライフスタイルがコロナ前の状態にもどるとは限りません。新しいライフスタイルを自らが探し、そして受け入れようとする傾向になってくるでしょう。つまり、消費者の需要を予測して販売促進につなげるマーケティングにも、当然変化が必要になります。
 そこで、みなさん「モノ消費」「コト消費」ってご存じでしょうか。「モノ消費」は、読んで字のごとく、モノ(商品やサービス)の性能・試用、機能などの価値を感じて利用することで、一方「コト消費」は、商品やサービスの機能などではなく、それを使うことによって得られる経験や体験に価値を見出すこと。これらの言葉自体はずいぶん前からあったのですが、昨今、特に話題になっています。今、「モノ消費」から「コト消費」への移り変わりが激しくなっているそうです。
 川上徹也著「コト消費の嘘」では、コト消費を7タイプに分類しています。
1.純粋体験型コト消費、2.イベント型コト消費、3.アトラクション施設型コト消費、4.時間滞在型コト消費、5.コミュニティ型コト消費、6.ライフスタイル型コト消費、7.買い物ワクワク型コト消費
マーケティング場所や目的、手法によって、「コト消費」は、消費者に提供する体験が変わってきます。これら、企業や店舗にとっては、最終的に「モノ消費」へとつなげるための手段となると考えられます。
 更なる今後の消費では、「コト消費」に次いで注目されるのが、「その瞬間・場所」でしか味わえないトキを楽しむ「トキ消費」。再現が難しい特徴があり、そこに欲求や価値が見出されています。更に、「エモ消費」も注目されています。「エモーショナル(エモーショナルemotional=感情)」を略した言葉「エモ」を用いた「エモい」とは、「ロジカルに説明できないが満たされる」といった、精神的な充足感を指すものと考えられています。
 私たちは、コロナ禍によって変わりゆく価値観と生活スタイル、アフターコロナを見据えた、様々な「消費スタイル」を見過ごさないよう注視していきたいものです。

 

ワクチン普及で景気は コンセンサス上振れ!

2021年07月 1日

 政府は、高齢者への 新型コロナワクチン 接種完了後、一般接種も進んでいくことで、 2021年末には人口の半分程度のワクチン接種が行われると想定している。
 当市においては、64歳以下への接種券の発送を6月25日に始めるとし、7月5日から基礎疾患がある人や60から64歳の市民を優先して予約を受け付け、7月12日からは、接種券を受け取った全員が予約できるようになる。
 優先予約の対象となるのは、高血圧や糖尿病、重い精神疾患など基礎疾患がある人や、高齢者施設の職員、身体障害者手帳を持っている人など。5月31日までに、65歳以上の高齢者約22,100人のうち、83%に当たる 18,300人がワクチン接種を予約し、3,
100人が1回目の接種を終えた。(中日新聞6月2日掲載記事より)
 また、新型コロナワクチンを職場等で接種する「職域接種」 が、6月14日から大企業にて取り組みかけて いる。 本メッセージが会員各位に 届く際には、接種率もかなり向上しているはずである。
 集団免疫の達成には至らなくとも、接種率が向上するにつれて、感染抑制効果は徐々に発現することが予想される。 感染者数の減少が実際に見えてくれば、心理的な面でも高影響が及 び、2021 年後半から 2022 年にかけて、景気は上振れる可能性は高いであろう。 ま
た、そうなってほしい。
 特に期待されるのは、これまで抑制されてきたサービス消費の活性化である。サービス消費については、 その性質上、いったん失われた 需用分が後に上乗せされる形で顕在化する「挽回消費」が財と比べて発現しにくい と、これまでの景気 動向では 言われていたが、今回の コロナ禍での状況では、参考にならないであろう。 もっとも、挽回消費までには至らなくとも、 仮にサービス消費が 新型コロナウイルス前の水準に戻るだけでも景気には 大きなインパクトがある。
 2020年後半以降の景気持ち直し影響が 、 タイムラグをもって波及する と言われている こと も踏まえ 、 20 22年の雇用賃金の緩 やかな回復が見込め られる ことも好材料 である。 また、感染拡大リスクが小さくなければ、需要喚起を目的とした経済対策が実施しやす
くなることも、景気の後押しにつながる。
 昨年実施されたGoToトラベルやGoToEatは、感染拡大に繋がったとして大きな批判を浴びたが、ワクチンの普及が進み、感染リスクが軽減された状況であれば、こうした政策も十分検討にあたいするだろう。
 先ずは、9月から 年末に実施する「 犬山市プレミアム商品券事業 」 (発行総額4億4千4百 万円) に 、挽回 消費 をもたらす 期待 を持ちたい も の だ。

マスターズ・トーナメントにみる"美しき一礼"

2021年06月 2日

 ゴルフの最高峰の大会である、米男子ゴルフのメジャー大会、マスターズ・トーナメントで松山秀樹選手が初優勝した直後、ともに組んだ早藤将太キャディーがゴルフコースに向かって帽子をとってお辞儀をしたその振る舞いが、とても美しいとして、世界が称賛し注目されてたニュースは、まだ記憶に新しい。
 欧米メディアからは、米国でアジア系への差別事件が多発する中での快挙の意義を論じる報道も相次いでいた。
 調べたところ東京新聞によると、マスターズは1934年から61年まで、27年にわたって白人男性しか参加できない大会であった。マスターズ会場の南部ジョージア州は3月下旬、黒人が選挙で投票しにくくする法律(人種隔離政策「ジム・クロウ法」)を復活させたばかり。それ以前には新型コロナウイルス禍で、アジア人差別は激しさを増している。 欧米メディアは、こうした状況も交えながら松山選手を伝え称えていた。
 そんな中、日本を元気づけた松山選手を影となり元気づけた早藤キャディーが世界的に話題を呼び、日本人のお辞儀が世界で大きく脚光を浴びている。
 松山選手がマスターズ最終日の18番ホールでのウイニングパットを決めた後、早藤キャディーは、ピンを戻すとフェアウエー(ゴルフコース)に顔を向け、そして帽子を取り、オーガスタのコースに敬意を示すために一礼した。
 欧米メディアは、ナショナルジオグラフィック(米国月刊誌)によれば、日本文化で、お辞儀は、挨拶や感謝、敬意を示す身振りで、1000年以上前に、貴族階級の特別な慣習として始まったと報じている。
 お辞儀がどうして美しいのか。自分たちの優勝の喜びと共に、他者への配慮、周りへの感謝や敬意の心の表現が、「他を思う優しさ」として、お礼、お辞儀として表れるからです。
 当犬山市においては、本年7月中旬には、新たな宿泊施設「ホテルミュースタイル 犬山エクスペリエンス」始め、来春には、「ホテルインディゴ犬山有楽苑」が開業予定となっている。
 世界が称賛し感動を呼んだ、今回の「美しき一礼」は、日本の偉大な文化であることに、誰しもが改めて気づかされた出来事であり、コロナ過終息後の観光客数の増加を見込みたい当犬山市としても、インバウンドを始めとした観光客に対して、また、日常生活においても「美しき一礼」を心がけることが必要である。

コロナ禍での、令和3年度事業スタート!

2021年05月 1日

 昨年1月に我が国で初めて新型コロナウイルス感染者が報告され、最初の第1波の緊急事態宣言が発出され、はや1年が経過いたしました。残念ながら現在は、大阪、兵庫、宮城、そして東京、京都、沖縄にまん延防止等重点措置が適用されるなど、愛知においてもコロナ陽性者数は変異種を含め広がっており、第4波の到来と言われています。

 日本商工会議所の景気動向調査(日商LOBO調査)では、中小企業の3月の業況判断は2月に比べて相当程度改善、日銀短観でも大企業製造業が前期比プラス15ポイントと改善、中小企業製造業についてもプラス14ポイントと改善しており、マクロデータを見ると、経済活動は少し活発化しているようです。

 しかし、その因果関係・相関関係は不明な部分もありますが、結果として4月の感染拡大という状況は、非常に悩ましいところでもあります。

 感染拡大の防止と経済活動の両立のギリギリのところを狙うべきだと思われますが、実際の経済活動の規制については、医療崩壊が起きそうなほど感染者が増える事態になったら規制をかけ、感染状況が落ち着いたら規制を緩めるということの繰り返しで進むしかないのかもしれません。

 結局はワクチンの接種が肝ということではないでしょうか。幸いなことにワクチンは効果があり、接種が進んだ国では、感染者が減少し、重症者や死亡者も少なくなっています。日本も何とか医療崩壊を起こさないで、ワクチン接種へ滑り込んでほしいと思います。6月には高齢者へのワクチン接種はほとんど完了できると見通しもされており、決して先行きに光がないわけではなく、トンネルのお先には明かりも見えつつあると私は思っています。

 今回の商工会議所5月号には、令和3年度の事業計画・収支予算をお知らせしています。今の難局を乗り越え、当地が一層発展するために、アフターコロナを見据えた、中小

 小規模事業者が抱える課題を把握し、総合的かつ計画的な伴走型支援を中核の一つとして位置付け、中小・小規模事業者への支援強化を進める必要があります。

 こうした状況を踏まえ、令和3年度、当商工会議所は、新たなスローガン「新たな日常の確立を支援」(~アフターコロナを踏まえた改革に挑む~)を掲げ、市内商工業者の声を踏まえた事業活動の実施を基本としつつ、提言、要望活動、会員向けサービス事業、観光・産業振興事業及び各種の交流・連携活動について、それらの充実・強化を図るため、行政機関、関係機関・団体との連携を密にし、次の5つの重点事業を実施して参ります。

1.意見・要望活動の推進
2.組織力及び財政・運営基盤の強化を通じたサービス事業の充実
3.他地域の商工会議所等との交流・連携活動の推進
4.コロナ禍の長期化を見据えた中小・小規模企業が抱える課題を把握し、総合的かつ計画的な伴走型支援を実行
5.観光振興・産業振興の推進

 令和3年度は、犬山商工会議所創立30周年及び石垣市商工会姉妹提携40周年の節目の年でもあり、記念事業の開催もあわせて実施いたします。

 つきましては、犬山商工会議所の令和3年度事業計画に対し、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

新型コロナウイルスワクチン接種により見え始めた光!!

2021年04月 1日

 令和3年2月17日、日本でもようやく新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりました。G7の中では最も遅い接種開始となるなど遅れをとりました。現在、国立病院機構、地域医療機能推進機構、労働者健康安全機構(労災病院)の100医療機関に所属する医療従事者の方々、約4万人を対象とした先行接種が行われています。その後、380万人程度にのぼる医療従事者の方々への優先接種が行われることとなりますが、厚労省は、医療従事者等の方々に早期に接種する理由として、「新型コロナウイルスへの曝露の機会が極めて多い」「従事者の発症・重症化リスクの軽減は、医療提供体制確保のために必要」の2点を強調しています。過酷な環境で、大きなリスクを抱えて医療にあたっていただいている医療従事者の方々に対して先行してまた、優先してワクチンを接種することは非常に良いことであると考えます。これにより、医療提供体制が確保され、十分な医療サービスの提供が迅速かつ確実に提供されますことを切に願っています。

 しかしながら、グローバルな視点でワクチン接種状況をみてみますと、世界各国の政府などが公表したデータをまとめているイギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウエブサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、世界では、70を越える国や地域で、接種が始まっているようです。しかしながら、全世界の国の数が197か国に及ぶということから、全体に占める割合はわずかに35%程度にとどまっており、この点から、地球上での集団免疫にはほど遠い状況となっているものと認められます。

 一方、経済動向に目を転じますと、令和3年2月15日に30年ぶりに日経平均株価が30,000円を突破しました。ところが、実際に経済は好調なのかというと、2月15日の内閣府発表の速報値では、2020年の1年間の実質GDPはマイナス4.8%と、リーマンショック以来のマイナス成長となっています。このような状況下での株価高騰の要因としては、一つには、経済対策で政府がばらまいたお金が株式市場に入ってきていることといわれています。昨年3月末からアメリカの経済対策として220兆円、日本では106兆円の対策がとられています。もう一つの要因としては、2020年10~12月期のGDP(実質経済成長率の速報値)が年率換算で前期比12.7%と市場予想(10%)を上回ったことが考えられるとされています。このほかにも、中国向けの輸出も堅調に推移しています。予想を大きく上回って好調となっています。但し、株価の影響を享受できているのは70%を占める外国人投資家で、国内投資家はわずかに30%のみとなっています。この点から、うまみが享受できる状況にはなっていないということがいえます。

 東日本大震災から今年で10年を迎えます。あれだけの大きな爪痕から、現状では大分、良い方向に向かっています。今回のコロナ禍につきましても、ワクチン接種によりトンネルの先に光が見え始めたような気がしています。もちろん、ワクチンは魔法の杖ではなく、その普及には相応の時間がかかるものと考えます。それでも、我々がポスト・コロナを展望した様々な変革を推し進めることにより、コロナ禍によって抑制された需要が徐々に回復し、ポスト・コロナを展望した動きが早まり、さらに強まるものと信じています。

いまこそ、さらなる結束が必要なとき!!

2021年03月 1日

 新型コロナウイルス感染症ワクチンの市場投入によって、感染再拡大のピークアウトが期待される中、民主党ジョー・バイデン氏が第46代米国大統領に就任しました。バイデン大統領は、その日のうちに地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」に復帰しました。今後はTPP11への復帰も期待され、地球規模では良い方向に向かっているように思われます。また、バイデン政権は、1.9兆ドル(約197兆円)の経済対策を掲げており、米国経済の早期の立て直しが大いに期待されるところです。

 一方、国内に目を転じますと、日本商工会議所が実施しているLOBO調査結果では、全産業合計の業況DIは、▲49.5(前月比▲3.4ポイント)と、12月より1月は悪化しました。これは、新型コロナウイルス感染症再拡大の影響から、11都府県における緊急事態宣言の再発令やGo Toキャンペーンの一時停止により、客足が減少した飲食・宿泊業や小売業の業況が悪化したことによります。売り上げ低迷に直面している外食産業を中心に、需要回復を見通せない中、先行き不透明感を指摘する声が多く、中小企業の景況感には弱さがみられるとのことです。一方、企業のデジタル投資や5G向けの需要増を背景に受注が伸びている電子部品関連や、中国・米国向けの輸出が増加している自動車関連が好調となっているほか、巣ごもり需要に下支えされた飲食料関連の製造業が堅調に推移しているようです。なお、けん引役を担っている自動車業界は、昨年10月に起きた旭化成のグループ会社の半導体工場の生産ライン停止により、半導体の供給が間に合っていない状況となっています。これを受けて、今後、自動車業界は、少し落ち込む可能性が出てきています。

 このような中、最近、「アフターコロナ」という言葉が先行して使われています。私としては、人間のコントロール下になって初めてアフターコロナといえるのではないかと考えています。感染者数等の数字が下がってほしいと願っています。そのうえで、個人的にはオリンピックも開催していただきたいと期待しています。

 バイデン大統領が就任式の席で、国民の結束に全霊をささげると訴えました。現在の国難の中、国家・国民の幸せを願って、今こそ、会議所も関係者の皆様方の更なる結束に全霊をささげ、一丸となってこの国難に臨んでまいりたいと存じます。

発令する以上は、実効性を持たせることが極めて重要!発令に当たっては、協力要請に応じた事業者の方々への柔軟かつ迅速な事業継続支援等に手段を尽くすこと!!

2021年02月 1日

 緊急事態宣言が、再び一都三県に発令されました。愛知県ほか中京地区でも遅かれ早かれ緊急事態宣言が発令される事態となっています(1月8日時点)。

 より深刻なオーバーシュートによる医療崩壊を回避するためにも、国民への強いメッセージが必要であり、再宣言の発令は一時的にやむを得ない苦渋の決断であると考えます。

 ただし、発令する以上は、実効性を持たせることが極めて重要です。

 我々にとっては、最も経済復興活動の妨げとなるこの宣言ですが、もはや曖昧に物事を誤魔化して進めるより、一日でも早くこの難関を終息させた方が良いとの判断と考えます。決して間違ってはいませんが、多くの会員企業の皆様にとってはとても耐え難い状況が長期化することとなります。

 イスラエルではコロナによる経済的ダメージを少しでも緩和する策として「グリーンパスポート制度」を発表しました。ワクチンの2回接種者、抗体保持者に対して自由に動き回って良いとする許可制度です。日本も一刻も早くこういった制度を取り入れていただきたい。

 これまですでに甚大な影響を被ってきた事業者の方々、とりわけ、ぎりぎりの瀬戸際で経営危機に耐えてこられた飲食業界の方々などにおかれては、再びの営業時間短縮要請等で、さらに追い打ちをかけられることになります。今後、経営破綻や廃業に追い込まれる事業者の急増を最大限回避するためにも、政府、各自治体は、協力要請に応じた事業者の方々への柔軟かつ迅速な事業継続支援に手段を尽くすとともに、第3次補正予算で措置される支援策の着実な実行に全力を挙げていただきたい。

 当商工会議所も、総力を挙げて事業者支援に取り組む所存です。

本年取り組むべき課題は、会員事業者の方々のことをどれだけ考え、日ごろの収集した情報を活かし、アイデアを具現化し共生できるか!!

2021年01月 1日

新年あけましておめでとうございます。

平素より、会員を始めとする皆様には当会議所事業に対し、ひとかたならぬ御支援と御協力をいただき誠にありがとうございます。年頭に当たり、厚く御礼申し上げます。

さて、昨年の2020年を振替えってみますと、コロナ一色であり、地球規模で世界中の国と人々が振り回された一年でございました。コロナに振り回されながら、同時にこれに対応(対抗)しようとする思慮の浅い方策にも 経済界は振り回された感もございます。しかし乍ら、副産効果として新しいビジネススタイルや働き方が定常化でき、コロナ後のビジネスシーンに大きな変化をもたらしたことです。わが国がコロナ禍を克服し、経済回復を実現していくためには、感染拡大防止を徹底しながら社会経済活動のレベルを引き上げていかなければならないと考えます。厄介なことに経済は既にグローバル化が進み、わが国だけが立ち直るということは考えにくくサプライチェーンや市場国としての繋がりのある各国が同時に立ち直って頂かない事にはもと通りの道へ引き返すことは厳しいものと考えます。まず、足元の新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、国と自治体がより一層連携し、医療機関等へのインセンティブ付与を含む財政支援により、病床数や人員の確保など医療提供体制を直ちに拡充するとともに、これまでの知見等を活かし、エリア・業種を絞った感染の封じ込めを行うことが重要です。何もしない人々、何か一生懸命にする人々、変化を恐れずに変えていこうとする人々。これら様々な人々にとって「時間」は等しく流れ、みな同時に新年を迎えました。考え抜いて、準備をして、備えて、動いた人々と、そうでなかった人々との間に本年は残念ながら大きな差がつくことになるのではないでしょうか?

商工会議所も全く同じことがいえます。どれだけ会員の事を考え、日ごろの収集した情報を生かしアイデアを具現化し共生できるかが本年取り組むべき課題と考えます。

まずはコロナに負けないこと、次にコロナ禍後の「新しい社会様式」の実現対応に向けた準備が必要!!

2020年12月 1日

 今回の米大統領選挙は、郵便投票の開票に時間がかかることなどから、勝敗の決着がかなり遅れる可能性がありますが、11月5日正午現在、バイデン前副大統領が激戦州のウィスコンシンとミシガンで勝利を確実にしたことで、当選に必要な選挙人の獲得に近づいています。このように米大統領が決まらないといった異常事態の長期化が現実となった場合、為替市場にはどんな影響があるのかを勝敗の決着がすぐにつかなかった2000年の米大統領選挙のときの事例から見通してみますと、投票日である11月7日まで小動きが続いていた米ドル/円は、終値ベースでみると、この日に107円で底を打ち、その後一段高が始まるところとなりました。これはその後の分析で、当時の米経済の課題の一つだった財政赤字の解消策としての米ドル高対策を織り込んだ動きとなっていたというものでした。このような状況をみると、勝敗の決着まで長期を要する異常事態となるとしても、為替相場の動向については、選挙の勝敗とは別に、決定される可能性があるものと認められ、引き続き注目していくことが必要と考えます。当所副会頭のお一人は、円高にぶれると見通されているようです。

 さて、現状も、コロナ、コロナで少々、嫌気が差してきました。そこでコロナ禍を契機とした社会変化がどうなるのかをここでは見通してみました。まずは、分散化が進展することが予想されます。すなわち、都市一極集中型から分散・ネットワーク型へ変化することが予想されます。居住と就業先が地理的に分散するということです。地方で広い家を持つ、一定期間を地方で働くなどです。次に産業構造の変化が進むものと考えられます。オンラインによる新ビジネスが次々と登場するでしょうし、リモートによりどこでも仕事ができるようになり、女性やLGBTに対する差別も少なくなるものと予想されます。リモート化、分散化など新しいライフスタイルに伴う需要が生み出される可能性があります。さらには、すでに全日空やJALから輩出される多くの出向者のニュースが取りざたされておりますが、このようなことは今後広がることが予想されます。AI活用等の加速によっても、余剰労働力が増大することが予想されます。このことから、来年は、外国人労働者など労働力の組み換えを図っていくときと認識しています。私ごとですが、外国人労働力の組み換え申請を行っている最中であり、ここに至って、外国人労働者は頼りにならなくなってきています。また、会社への帰属意識が薄くなり、契約的雇用関係の色が濃くなってくるものと予想されます。

 コロナ禍は、私たちに多くのことを気づかせました。例えば、

・これまであたりまえのことと認識し、また、社会活動の基盤と捉えてきた、人と人との緊密なコミュニケーションは、時として制限することが求められるものであること。

・信頼を寄せてきた広域な移動やサプライチェーンは、時として機能し得なくなるもの。

などです。

 コロナ禍により、こうしたことに気づかされた我々は、モノづくりの現場にも、家庭にも、さらには都市のあり方においても、デジタルシフトや強靭性を高めるなど、「新しい社会様式」を期待することとなりました。「新しい社会様式」の実現には、新しいイノベーションが求められます。

 この期待される新しいイノベーション像は非常に広範なものであり、また、今や世界的な社会課題であることから、その実現に当たっては、産業界はもとより、政策当局や学界が一体となって取り組み、私たちの叡智を結集し、牽引していくことが期待されています。

 まずはコロナに負けないことが肝要ですが、コロナ禍後の「新しい社会様式」の実現に向け、今からでも準備にとりかかることも必要と考えます。

コロナ後の喫緊の課題は、適格請求書保存方式(日本型インボイス制度)の導入・対応!!

2020年11月 1日

 日本商工会議所(三村明夫会頭)は、9月29日に、要望書「菅内閣に望む」を取りまとめ、菅義偉内閣総理大臣ならびに梶山弘志経済産業大臣に手交いたしました。それ以降も、関係閣僚・国会議員・政府関係者等にも働きかけています。要望書では、中小企業の事業継続・雇用維持に対する懸命の努力も限界であることから、感染拡大防止と社会経済活動の両立に最優先で取り組むべきであることや、不確実性がますます高まる環境においては、変化に迅速に対応する柔軟性が不可欠であり、リスクに備えることで不確実性を吸収できる「戦略的なゆとり」を組み込んだ国家運営ビジョンの策定が必要であることなどを基本的な考え方として、以下4点を要望しています。

1.感染拡大防止と社会経済活動の両立を支える検査・医療提供体制の整備
2.倒産・廃業防止への支援継続と小規模・中小・中堅企業の付加価値創出
3.地方分散型社会に向けた地方創生の再起動
4.少子化対策や社会保障改革など構造的課題の克服

 日銀短観の結果をみてみますと、大企業・中小企業、製造業・非製造業ともに、若干の改善にとどまり、水準は依然として低い状態にあります。この結果自体は、我々の実感(日商LOBO調査(9月))と合っています。業種別にみますと、「自動車」の業況判断DIは、足元で大きく改善し、先行きも大幅な改善が見込まれています。自動車産業の景況感はまだまだ満足すべき状況ではありませんが、急速に改善傾向にあることは、すそ野の広い業界であることからも期待が持てるのではないかと考えます。

 中小企業にとって最も効果的な経済政策は、感染防止と経済活動を両立させることだと思います。10月から、GO TO キャンペーンに東京が含まれることとなりましたが、ここ1ケ月でみてみますと、地方では既に観光客が増加し、宿泊施設などにも予約が入っているとのことです。GO TO キャンペーンに東京が含まれることで全国的にも相当大きな(プラスの)影響が期待できます。もちろん感染拡大の心配はありますが、観光地の旅館・ホテル等では感染防止対策をしっかり行っていると聞いていますし、我々も油断することなく対策を継続して行いお客様に対応することがコロナとの共存だと感じています。企業経営者に少しでもポジティブなマインドを持ってもらうためにも、感染拡大を防止しながら経済活動を上向かせるというギリギリのところを狙うような施策が望ましいと考えます。

 さて、コロナ後の喫緊の課題として、令和3年の10月から導入される適格請求書保存方式(日本型インボイス制度)への対応があげられます。軽減税率が始まって複数税率が浸透する中、来年までに我々事業者は適格請求書等保存方式の導入に迫られ、そうでない零細もこれに対応する策を講じておかなければなりません。取引から排除される(例えば、料理屋や旅館、ホテルの方々ですと、商談の場として使われなくなるなど)こととならない準備が今すぐにでも必要となります。

当該制度が導入されると、従来の方式から大きく変わる点が2つあります。

 一つは、仕入れ税額控除が受けられる適格請求書等の発行は、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」しか交付できなくなります。もし、適格請求書発行事業者以外の者が適正な記載項目で請求書を発行しても、適格請求書としては認められず、「誤認される恐れがある」として1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになります。

 また、もう一つは、適格請求書には、必ず明記しなければならない事項があります。適格請求書の記載事項は以下のとおりです。

1.適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
2.取引年月日
3.取引内容(軽減税率の対象となる場合はその旨)
4.税率ごとに合計した税抜又は税込対価の額及び税率
5.消費税額等
6.書類の交付を受ける者の氏名又は名称

適格請求書発行事業者は、この記載事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類を交付しなければなりません。

 インボイス制度導入後、免税事業者との取引は、自社の消費税負担が増える恐れがあり、免税事業者排除に繋がる可能性があるなど、先行き不透明な部分も残っています。しかし、全ての企業がこのインボイス制度によって影響を受けることは間違いありません。今後の動向に留意しつつ、早め早めにインボイス制度への対応準備を行っていきましょう。

長寿企業に学び、コロナ禍を乗り越えよう

2020年10月 1日

 8月29日に安倍首相が突然、辞意を表明されたことは、私にとって驚きの出来事でした。第二次安倍内閣の一番の実績は、経済であったと評価しています。アベノミクスを掲げて、株価の上昇に大きく寄与しました。頼もしいと思いました。また、外交面でも毅然と対応された点も評価に値します。長期政権としての実績は、一言では言い尽くせないほど数多くあげることができます。安倍首相におかれては、できるだけ早くお体を良くしていただくことを御祈念申し上げる次第です。

 さて、昨今は、新型コロナウイルスの感染拡大で景気が冷え込み、コロナ関連の倒産や廃業が増加しています。倒産や廃業を防ぐため、過去にいくつもの難局を乗り越えてきた長寿企業から学べることがあるのではないかと考えます。日本には創業から100年以上を経過した企業の数が、世界の中でも飛びぬけて多く存在しているといわれています。世界の創業100年以上の企業のうち、半数近くが日本の企業が占めるらしいです。日本には、約3万社存在するといわれています。そのほとんどの企業が、いまだに創業家が経営し、経営理念、先代の教えが代々引き継がれています。一方、ビジネスの中身は時代に合わせて変えてイノベーション(革新)を起こしているという特徴があります。また、これらの企業の本社の多くは、地方に置かれています。「月刊石垣」で連載されましたが、これが「長寿企業の秘密」というタイトルの一冊の本としてまとまりました。そこには、長寿の企業は、地域にしっかり根付いており、また、地域に貢献している企業であるとのことでした。新型コロナは、長寿企業が何度も乗り越えてきた危機の一つとも捉えられます。皆様方におかれましては、新型コロナウイルス禍の中、弱気にならず、長寿企業から学び、培ってきた強みを活かしながら、変化に対応するため、しっかりと足元を固めてコロナ禍を乗り越え、今後とも、末永く、事業を継続していただくことを御期待申し上げる次第です。

0か100かの議論ではなく、30か50の議論を

2020年09月 1日

 愛知県下では、7月15日に新型コロナウイルス感染者数が16人となり、21日には50人を超え、29日には100人を超え、7月31日には過去最多の193人に達するなど、極めて厳しい状況が続いています。このような状況を踏まえ、愛知県は、8月2日にエリアを限定して、営業時間の短縮等の休業要請を行いました。

 私としては、これは第二波が到来したというべき状況であると考えます。それも想定より早く、大きなビッグウエーブであると危機感をもってみています。

 ここにきて、再度の休業要請ということですが、私は、このワードから失業というワードが連想され、失業率が上昇すると、自殺が増加するということが知られているというお話を思い出します。バブルが崩壊して、自殺者は2万人台前半で推移しますが、1998年以降は急上昇します。1997年に山一証券が倒産し、日本長期信用銀行が経営破綻するなど、日本が金融危機に陥った1998年には自殺者数が初めて3万人を上回りました。以後日本は経済停滞の時代が続き、自殺者数は毎年3万人以上を記録し、中でも2003年は3万4427人となり、統計を遡れる時代から今に至るまでで最高を記録しました。2008年のリーマンショックの翌年の2009年が増加した最後の年です。

 ある学者がいうには、日本では、完全失業率が1%ポイント上昇すると、男女ともに10万人当たり約25人の自殺者増加につながるということだそうです。失業率の増加が自殺者の増加につながるということです。自殺は多くの損失を生み出すともいわれています。自殺者本人が生き続けた場合に生み出す付加価値の損失をはじめ、自殺者の遺族や遺族以外の個人への負の影響も考えられ、このような自殺者の増加は日本の社会・経済への多大なる損失につながるといわれています。

 今後の日本の失業率を予測したうえで、自殺者数を試算したものをここで御紹介すると、まず失業率の予測としては、経済がいわゆるU字回復で2021年後半から回復すると仮定すると、2020年の失業率は2.7%、2021年の失業率は3.8%と予測するものがあります。当該予測失業率を、ある学者の推計値をあてはめて自殺者数を計算しますと、2020年と2021年の自殺者数がそれぞれ約2万5000人、4万7000人となるとの試算が紹介されています。

 以上のようなことを踏まえ、今現在の世の中の議論をみると、経済をストップするか否か、0か100かという議論が多過ぎるように見受けられます。私としては、経済のストップ→失業率の増加→自殺者の増加→多大なる社会・経済の損失ということが予想される以上、0か100かの議論ではなく、30か50かという議論を行うべきでないかと考えます。その際、いろいろなアイデアを出し合って、コロナ対策を講じつつ、経済を少しでも回すということに尽力すべきものと考えます。この先、当所としては、行政とも連携して、プレミアム付き商品券事業をはじめ、産業祭等様々な事業を展開することとしていますが、経済を回すことを0ではなく、30あるいは50実施するという前提で、コロナ対策は確保しつつ、従来の手法とは異なる手法による事業の実施ついてアイデアを絞り出して、少しでも多く経済を回していく工夫を行っていきたいと考えています。

 先に御紹介したとおり、経済が回らなくなると自殺者が増え、自殺者の増加は多大な社会的・経済的損失を生み出すといわれています。皆様方におかれましても、経済を少しでも回し、減少させることはかなわなくとも、自殺者を増やさないよう、様々なアイデアの企画立案・実施による一定の経済活動水準の確保を目指した私共の取り組みに是非とも御協力いただきますようお願い申し上げる次第です。

 なお、7月31日に犬山地域桃太郎伝説に基づく地域ストーリー策定・検証事業推進委員会を立ち上げ、犬山のコアコンピンタンスである桃太郎、現在では少々錆びついてしまいましたが、これをもう一度拾い直してピカピカに磨いてこの地域の素晴らしい観光資源にすることを目的とした取り組みを始めました。

 当該事業は、ポストコロナ事業ともいうべき事業かもしれませんが、今から検討を始めることにより、当地域の事業者の皆様の一つの希望として、現在のお取り組みに当たってのモチベーションを高めるための一つとしてみていただきたいと願っています。当所といたしましては、確実にアウトプットできるよう関係者の皆様方の御協力の下、進めていきたいと考えていますので、皆様方におかれましては、本事業への御協力を併せてお願いしたいと存じます。

経済活動の水準の引き上げを目指した取り組みに御協力を

2020年08月 1日

 先月の7月1日に常議員会を開催しましたが、丁度、その日に日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(いわゆる、「日銀短観」)の6月調査結果が発表されました。

 大企業・製造業の景況感を示す景況判断指数(DI)はマイナス34と、3月の前回調査から26ポイント悪化し、リーマン・ショック後の2009年6月調査(マイナス48)以来の低水準となりました。悪化は6期連続で、マイナスは2期連続となりました。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた経済活動の停滞が企業心理を直撃したということが主な要因のようです。

 大企業・非製造業はマイナス17と、前回調査から25ポイント悪化しました。マイナスに転じるのは、東日本大震災後の2011年6月調査(マイナス5)以来9年ぶりです。悪化幅は比較可能な1983年以降で最大となりました。新型コロナの影響が直撃した宿泊・飲食サービスは、マイナス91と過去最低を記録しました。

 予想通りの結果となりました。極めて厳しい状況ではありますが、今後は、段階的に経済活動がリスタート・拡大されていく中で、少しずつ前向きな動きも出てくるものと見込まれます。

 前回のリーマン・ショック時との比較では、中国がリーマン・ショック後に4兆元の経済対策を打ち出して世界経済の回復に貢献しましたが、今回はリーマン時の倍の8兆元の経済対策を打ち出しました。しかしながら、前回のリーマン・ショックとは違い、今回は新型コロナウイルスの影響で人や物の移動が制限されていることや、米中摩擦によってグローバルなサプライチェーンの構築が難しくなっているなどの要因から、リーマン・ショック時のような経済効果はあまり期待できないと考えます。

 このような中、私共商工会議所としましては、一所懸命に考え、行政とも連携して、様々な施策を講じているところです。慣例行事の実施についても、日頃とは違う工夫を講じながら実施しようと考えているところです。

 皆様方におかれましても、コロナとの共存を考えた「新たな生活様式」を模索することによる経済活動水準の引き上げを目指した私共の取り組みに是非とも御協力をいただきますようお願い申し上げる次第です。

感染防止と経済活動の両立(バランス)を目指す段階へ

2020年07月 1日

 犬山市が含まれる愛知県エリアは、令和2年5月14日に新型コロナウイルスに係る国の緊急事態宣言の対象区域から解除され後、続いて、愛知県独自の緊急事態宣言及び愛知県緊急事態措置が5月25日に解除されました。国の緊急事態宣言が解除されますと感染観察に入ります。感染観察から感染拡大注意への移行については、知事の権限とされています。

 今後は、医療体制の維持や医療・福祉・高齢者等の保護に取り組み、感染者数を極限まで抑えることが県や市をはじめとする行政や医療・福祉関係者等に求められているものと考えます。

 また、商工業者の皆様におかれましては、経済活動を再開し、感染対策を意識した新たな社会経済モデルへの転換を行うことが求められていると考えます。具体的には、安心して店舗営業を再開し、また、利用者も安心して来店等ができるようなリスク低減策を構築していくことです。また、経済活動を再開した後も、再び感染拡大する状況を念頭に置き、感染拡大を防ぐ手立てを講じることも重要です。

 一方、今回のコロナ禍により、中止や開催延期に追い込まれた様々なイベントにつきましても、緊急事態宣言下では、感染拡大を懸念し国家的な規模での拡大防止に協力する以外に、選択はなく、中止、延期といった判断をとらざるを得ませんでしたが、当該緊急事態宣言が解除された今、イベントの開催の必要性を改めて再検証され、延期後の開催や停止したサービスの再開の判断を中止と延期と並行して検討することが求められているものと考えます。全ての行事は、中止がすべてではないと考えます。

 今は、緊急事態宣言が解除された直後ということも有り、経済活動はいわゆる助走の時期ということが言えます。すなわち、今後、経済活動が再開されるに伴って、消費水準は徐々に戻ると予想されますが、入場規制や座席数の削減といった措置は感染防止策として取らざるを得ず、コロナ危機以前の水準まで回復するには長い時間が掛かると考えられるからです。ワクチンが早期に開発されて、世界に広く供給されるという「V字回復」の前提が揃わない中では、コロナとの共存を考えた「新たな生活様式」を模索せざるを得ず、社会全体が「Withコロナ」の新状態に適応することが活動水準を上げるためのカギになります。商工業者の皆様にとりましては、その適応能力が運命を分けるものとなるだろうと予想されます。

 このたび、緊急事態宣言が解除されることになり、コロナ禍における対策は、経済を完全停止させてでも防疫対策を優先する段階から、感染防止と経済活動の両立(バランス)を目指す段階へ移行したということだと考えられます。ここからはウイルスとの共存を図りながら時間を稼ぐ戦略へとシフトするわけです。

新型コロナウイルス、私には半分見えています

2020年06月 1日

 新型コロナウイルスは、目に見えないと一般にはいわれていますが、私には半分ほど見えています。なぜこういうことを申し上げるかというと、目に見えない敵を相手にするのは、目に見える敵を相手にするより恐ろしく、ひいては何もかも放り出して逃げ出してしまうという行動をとってしまいがちだからです。事業者の皆様方がこれをやってしまうと、経済がだめになってしまいます。本年3月の「会頭メッセージ」で申し上げましたが、新型コロナウイルスが流行する状況下では、決してデマに踊らされないように、「正しく恐れて、正しく対処する」ことが肝要であると、くどいようですが再度、申し上げさせていただきます。目に見えないものを怖いと思うのは当然なので、対象がどれだけ怖いのかをきちんと理解して「正しく恐れること」と、三密を避ける、マスクの着用や手洗いの励行などを行うなど正しい対処法を学び、実践することにより、ある程度恐怖を克服できれば、次に進めます。経済活動を再開・拡大できるということを申し上げたいのです。

 令和2年6月現在、日本を含めた世界は、新型コロナウイルスの脅威に苛まれています。このような状況下では情報量が急増し、その情報に流されて不安になりがちですが、「正しく恐れる」という姿勢は、我々がこの状況下で自分自身を失わず、生き抜いていくうえで、大いに肝に銘じるべきことなのではないかと思います。

 先月(5月14日)、政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国に拡大した「緊急事態宣言」を、愛知県を含む39県で解除することを政府対策本部で決定しました。当該政府の対応措置に私は、大賛成です。あのまま緊急事態宣言が続いていたら、経済は更に大きなダメージを受けていたことでしょう。それほど当時は切迫している状況だったといえます。日本の企業の皆さんは、頑張っています。米国のようにすぐに大量の解雇をするようなことはしません。聞くところによりますと、当時、新型コロナウイルスの影響を受けた国内企業のうち、解雇を実施していた企業は全体のわずかに4%と聞いていました。しかし、あれ以上、緊急事態宣言を継続すると、雇用の維持を図っていくことは非常に厳しくなったものと考えます。

 当所といたしましては、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う経営支援に関する緊急要望書」を本年4月9日に犬山市長に提出し、これにより、犬山市としては異例の迅速さと的確さで御対応いただき、多くの市内事業者の方々が救われたものと感謝しています。当所といたしましては、今後も断続的な自粛補償支援は必要と考えておりますが、市内事業者の皆様方が経済活動の再開・拡大を図るための支援策を追加的に講じていただくことを期待するものです。

 コロナとは、上手につきあって最後はやっつけるという気持ちでこれからは対処していくべきものと考えます。

犬山商工会議所 高橋会頭からの緊急応援メッセージ

2020年05月 1日

 新型コロナウイルスが猛威を振るう現在、市内の飲食サービス業の皆様や旅館・ホテル、中心市街地等観光関係の事業者等の皆様方は「ピンチ」を迎えておられます。

 しかし、この感染拡大防止期間を将来の観光需要回復に向けた助走期間、すなわち積極的な「チャンス」ととらえ、反転攻勢に転じるべく基盤を整備するための期間と位置付けることもできます。また、感染拡大防止期間の中にあっても、政府の専門家会議から示された3条件を回避する、あるいは感染リスクを下げる環境を整える(別添「政府の専門家会議から示された3条件を回避する、あるいは、感染リスクを下げる環境を整える取り組み事例」を御参照ください。)ことにより、事業活動を維持・拡大していくチャンスとも捉えることができます。このような、お取り組みは、当市飲食サービス業や旅行・ホテル、中心市街地等観光関係の事業者等の皆様方の差別化・優位性発揮につながるお取り組みであり、これら事業者の方々の事業活動の継続は、他の産業の事業活動の継続・拡大にもつながり、市全体の活性化の継続・拡大につながるものと考えます。

 経営者にとって目下の最大の不安は、「収束時期が見えない」ということです。政府の専門家会議では、長期戦を覚悟しなければならないとしており、この間、市民や事業者に対し、最も感染拡大のリスクを高める環境での行動を抑制する要請を出しています。併せて、専門家会議は経済活動を継続することも重要であるとしています。事業活動の継続を図っていくためにも、上記のようなピンチをチャンスに変える取り組みが重要であると考えます。

 今後、経済活動の自粛要請が長引き、時間の経過とともにさらなる閉塞感が経済活動の委縮を生み、ひいては経済への甚大なダメージへとつながる可能性は大きいものと考えます。当該ダメージのでき得る限りの縮小化を図っていくためにも、政府・専門家会議の自粛要請に沿った、ピンチをチャンスに変えるお取り組みを犬山商工会議所は全力をもって応援します。

 当所では、本年2月25日に政府が公表した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」の下、打ち出された政府の各種支援策の地域商工業者の方々への「緊急 特別相談窓口」(4月8日、5月13日、6月10日それぞれ13時~16時 要予約)等を通じた政府の各種支援策の周知の徹底、御活用の御支援に尽力しているところです。また、当所に本年1月に設置しました「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」への商工業者の方々からの御相談をお待ちしています。政府等の手厚い対策をお願いするに当たって、地域の商工業者の方々の現状を政府にできるだけ早期にかつ正確に知っていただくことが非常に大事です。そのうえで、政府の実効性ある、適時・適切な政策の執行が講じられることを期待したいと考えています。できるだけ多くの現状報告・政府等の施策に対する御意見等を当所経営相談窓口までお寄せいただけますようお願い申し上げる次第です。

「政府の政策執行の適時・適切化のためにも、当所経営相談窓口を通じた経営実態報告を急ごう!」

2020年04月 1日

 本年2月5日(水)に第8回常議員会を開催し、冒頭の私の挨拶の中で新型コロナウイルス感染症について初めて言及して約1か月余が経過しました。言及した本年2月当時は、このように世界的クライシスの事態になるとは想像できませんでした。年初からサプライチェーンの寸断により製造業は苦しいスタ-トとなったわけでありますが、現段階では製造業だけでなく、幅広い業種にその影響が及んでいます。いまだ景気が良いといわれているのは、ゴルフ場をはじめ、お米、トイレットペーパーなどです。国内でそのほとんどが製造され、在庫が豊富にあるにもかかわらず、スーパーなどの棚に当該商品が置かれていない要因は物流にあるものと考えます。トイレットペーパーなどはその98%が国内で製造されており、在庫も豊富に存在していますが、当該在庫を保管している倉庫から、なかなか適時にスーパーに移送できない、そのタイムラグにより、棚に商品が無い状態が作り出され、品薄状態が現出するわけです。必要以上にものを購入するという行為もまた、このような2次災害を生み出す要因となっています。

 3月4日(水)に開催しました第9回常議員会を開催するかどうかにつきましては、コロナウイルス感染症の関係で、政府から自粛要請が公表されるなどして、ずいぶん悩みましたが、3月30日(月)に開催する予定の常議員総会がさらなる新型コロナウイルス感染症の流行拡大等により、開催できなかった場合という最悪の事態、すなわち、令和2年度事業計画・収支予算等が機関決定できなかった場合、4月1日からの会議所事業の大幅な停滞、商工業者の方々へのサービスの滞りという事態となるため、こうした事態を回避するため、常議員の皆様方におかれては、少々、強引と映ったかもしれませんが、私の判断(責任)で、今回、開催することといたしました。このような状況にもかかわらず、3月4日開催当日は常議員総数である38名のうち、成立要件である3分の1以上を大きく上回る20名余の常議員の方々の出席を得、無事に開催することができ、令和2年度事業計画・収支予算等の承認も得られました。御出席いただきました常議員の皆様方に改めまして、心より御礼申し上げます。

 御案内のとおり、当該新型コロナウイルスは中国を発生源とされていますが、いまや世界各地に急速に広がっており、世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は3月11日に、「新型コロナウイルスはパンデミックといえる」と述べ、世界的な大流行になっているとの認識を示したうえで、各国に対して対策の強化を訴えました。これについて安部総理大臣は12日に、「世界的な感染の広がりが続いていることへの判断だと思う。日本としても、これまで以上に国際社会と協力しながら対応を強めていきたい。」そのうえで「国内における対応は国民の健康・命を守るために、あらゆる手だてを講じてきた。今後、警戒を緩めることなく、必要な対策は躊躇なく決断して実行していく。感染の広がりを抑えるために全力を尽くしてまいりたい。」と述べました。

 日本政府は、2月25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を公表し、それに先駆け、2月13日に「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」の第1弾を、また、基本方針公表後の3月10日に緊急対応策の第2弾を打ち出しましたが、私共商工会議所といたしましては、当該基本方針の下、打ち出された各種支援策の地域商工業者の方々への「緊急 特別相談窓口」(4月8日、5月13日、6月10日それぞれ13時~16時 要予約)等を通じた周知の徹底、御活用の御支援に尽力してまいります。また、新型コロナウイルスをめぐる現在の状況を的確に把握し、国や地方自治体、医療関係者、商工業者そして国民が一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていき、できるだけ早期において国内での健康被害と商工業者等の被害を最小限に抑えることが重要と考えます。

 このような中、先月の会頭メッセージでも御協力をお願いしましたが、当所に設置しております「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」への商工業者の方々からの御相談をお待ちしています。政府等の手厚い対策をお願いするに当たって、地域の商工業者の現状を政府にできるだけ早期にかつ正確に知っていただくことが非常に大事であります。そのうえで、政府の実効性のある、適時・適切な政策の執行が講じられることを期待したいと考えています。今月に入り、前年同月比30%程度の売り上げ減少といったお話も個別に伺っています。この点から、犬山市内の商工業者の方々の現状が、大変厳しい状況にあることは明らかです。多くの被害実態を当所あてにできるだけ早期にお寄せいただきますことをお願い申し上げる次第です。

正しく恐れて、正しく対処することが肝要

2020年03月 1日

 本年2月5日(水)に本年度第9回目の常議員会が開催され、私を含め伊藤副会頭、加藤副会頭及び丹羽副会頭が就任後初めて出席しました。冒頭、それぞれ御挨拶をさせていただきましたが、常議員の皆様方をはじめ関係各位におかれましては、改めまして、会議所運営に対する御支援と御協力をお願い申し上げる次第です。

 さて、新型コロナウイルス感染症が、現在、世界的に拡大しており、国内においても、人から人への感染が確認されている状況です。世界中が「コロナウイルス」という言葉に敏感になっている今、へんなうわさが飛び交う、「感染したくない」という思いから中国人のみならず、韓国人や日本人などアジア人全体に対してヨーロッパの人などからの「人種差別」が指摘されており、いやな思いをしたとのお話を伺っています。このような状況だからこそ、決してデマに踊らされないように、「正しく恐れて、正しく対処する」ことが重要と考えます。また、当該新型ウイルス感染により、観光業でキャンセルが進む、製造業では中国からの部品供給が滞るなどの影響が出ているとお聞きしています。政府は、昨年12月に決定した事業規模26兆円の経済対策の早期実行をはじめ、この新型肺炎への幅広い対応を講じるとのお話もあります。手厚い対策をスピーディーに講じていただくことを御期待申し上げるとともに、私共事業者も自ら対処できることは自主的に対処すべきものと考えます。現状、全国の商工会議所に「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」が設置され、中小企業・小規模事業者の皆様からの新型コロナウイルスによる事業への影響など、経営における相談案件につきまして御対応しているところです。当犬山商工会議所でも、全国の商工会議所と同様、本年1月29日(水)に設置し対応しているところです。今回の新型コロナウイルス感染症の影響が会員の皆様にとって極力小さなものとなるよう当商工会議所といたしましても、最善を尽くしてまいる所存ですので、皆様方におかれましては、新型コロナウイルスによる事業への影響などございましたら、当所へ情報提供いただきますとともに、経営における御相談につきましてお気軽にお寄せくださるようお願い申し上げます。関係機関等とも協力して御対応してまいりたいと存じます。

変化対応能力の成否は、多様性を受け入れ融合していくこと

2020年02月 1日

 平成に代わる元号として、「令和」が昨年5月1日から施行されています。「令和」につきましては、専門家によって解釈が異なりますが、漢字に詳しい京都大学の阿辻哲次名誉教授によりますと、「世の中を平和にさせる、という穏やかな印象にあふれている。世界が調和され、平和が永遠に達成されるというメッセージが込められているのでは」との記事を拝見しました。しかしながら、このところの世界情勢をみてみますと、「調和」や「平和」とは程遠い状況を呈しています。米・イラン間、米・北朝鮮間、米・中間等の対立激化です。我が国も例外ではなく、対中、対ロシア、対韓国等との対立が生じています。世界経済のグローバル化への反動が人々に国境を改めて意識させ、あらゆる国々でナショナリズムの台頭を許し、このような対立を数多く生じさせることとなったのではないかといわれています。

 一方で、グローバル化をはじめ、少子高齢化や環境問題の深刻化など、大きな時代潮流が加速して進展し、新たな展開を見せており、この点を捉えて、世界情勢は大変革期を迎えているといわれています。また、ものづくりのデジタル化、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)など急激な技術革新に伴い、様々な分野で激変(大変革)が起きているといわれています。

このような中、一連の変革によって日本の強みが弱みに変わる恐れがあるといわれています。例えば、日本の人材の特徴は同質性です。同じようなスキルと共通経験を持つ人たちがチームワークを発揮し、工程の改善や品質向上に成果を上げてきました。しかしながら、今後は同質性より、むしろ多様性こそがカギを握るといわれています。ものづくりのデジタル化、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)など急激な技術革新に対応していくためには外部の研究者をスカウトしたり、ベンチャーや大学と手を組んだりといった多様な主体との連携が不可欠となります。また、前回大会で南アフリカを破ったのに続き、今回大会で世界を驚かせる大番狂わせの主役となった日本のラグビーは日本国籍を持っていない選手でも日本代表になれます。そういう多様な背景の人が活躍する中で、日本人の良さも活かされ、外国人の良さも活かされ、新しい強い日本チームが、ワンチームとしてできあがりました。このように様々な背景を有する人材・主体に活躍の舞台を用意し、文化や歴史の異なる人材・主体とも付き合うことが重要となります。そんな多様性重視に向けてマインドを切り替え、それに沿った組織風土をつくれるかどうか、その成否が今後の変化対応能力を左右するものと考えます。繰り返しとなりますが、このような大変革期に対応していくためには、多様な働き方、働き手といった多様性を受け入れ、融合していくことが必要不可欠であると考えます。様々な力を借りないと太刀打ちできなくなっています。大変な変革期ですが、変革期こそチャンスが潜んでいるものです。チャンスを逃さない、変化対応能力を身につけるためにも、多様性を受け入れ、融合していくことにより、地域をより良くできるものと考えます。

充実した会員基盤を擁し、時代に即応した商工会議所を目指して

2020年01月 7日

 令和2年の年頭に当たり、犬山商工会議所会員の皆様方並びに関係各位に対し、謹んで新春のお慶びを申し上げます。会頭に就任して初めての新年ということで、身が引き締まる思いで会頭職という重責を改めて実感しております。皆様の御協力をいただきながら、職責を果たしてまいる所存でございますのでよろしくお願い申し上げます。

さて、新年を迎えるに当たり所感の一端を申し述べたいと存じます。
私共を取り巻く経済環境は、米中貿易戦争の激化等による世界経済の下振れ、消費税増税による反動減、日韓対立長期化に伴う我が国経済への悪影響の顕在化等により、先行きは予測不可能な状況となっており、地域の商工業者の方々の経営環境の悪化が懸念されるところです。
このような環境下、商工会議所に求められる役割はますます拡大・多様化しています。
このような商工会議所に対する期待に応えるため、私といたしましては、「会員基盤の充実を図り、持続可能な形で成長する商工業者の方々を御支援でき、時代に即応したと認められる会議所を目指す」という中長期の目標を立て、当該中長期の目標を達成するために、次に掲げる3つの活動指針を実践していくという決意を年頭に当たって改めて表明したいと存じます。

① 中長期計画の策定
9年後の犬山を見据え、会員数や製造品出荷額、来訪者数など具体的な目標値を掲げ、これら目標値の達成を目指して事業を進めます。とりわけ、会員数は現在1,495社で昨年からは微増で推移していますが、10年前が1,600社を超えていた状況と比較しますと少ない状況といえます。このため、人口が減少する中で、分母を増やすことを課題とし、企業誘致と創業支援の2点に注力し、9年後には会員数2千社を擁する会議所を目指します。特に創業支援につきましては、会議所職員によるきめ細かな御支援を通じて、犬山を代表する企業を育てることを目指します。また、後継者がいない事業者の方々と会議所職員との相談しやすい環境づくりに努めるなどして、濃密なコミュケーションを通じて、円滑な事業承継に尽力します。

② コンサバティブ(保守)とイノベーション(革新)の融合
昔はドッグイヤーといわれていましたが、現在はそれ以上の非常に速いペースで、世の中はその形態を変化させています。しかしながら、その変化に単に流されるのではなく、守るべきものは守り次代に伝えつつ、変えるべきものは変えていく(AI、IOT、キャッシュレスなど)ための支援事業を進めます。また、年齢が若いとか、もう年であるとか、あるいは男だとか女だとか、国籍、出身地などそれぞれの立場の違いや役割を認識したうえで、その多様性を受け入れるような対応を御支援します。

③ 自律的な会員事業者の成長支援
商工会議所が何か支援してくれるのを待つのではなく、まずは会員事業者各々が商工会議所の構成員であることを認識し、自らの経営において、そのスキルを向上させることにより、共に成長していくことこそが会員基盤の充実につながるという考えの下、自律的な会員事業者の成長を支援します。当該取り組みが、地域の活性化につながると強く信じて推進します。

以上のとおり、中長期の目標を実現し、3つの活動指針を実践していくことは簡単なことではないと認識しています。もとより私一人の力では容易ではなく、会員並びに関係各位のより一層のお力添えが必要不可欠でありますので、何卒、今後の商工会議所の事業活動に対しまして、より一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
おわりに、皆様方の本年一年の御健勝と御繁栄を心よりお祈り申し上げ、年頭に当たっての私の所感の一端とさせていただきます。

コンサバティブとイノベーションの融合による 地域経済の活性化を!

2019年12月 1日

 このたび、犬山商工会議所の会頭に選任されました。心中は非常に複雑で、会頭職を受けて喜ばしい気持ちと、反面、その重責を担えるかという不安な気持ちもございますが、その職務を受けた以上は、皆様のために微力ながらも精一杯尽力し、その職務を果たしてまいる所存でございます。
 まずは、その指針として3つの事を考えております。
 第1は、「会員基盤の充実」であります。
 商工会議所が何かやってくれるのを待つだけでなく、まずは、会員事業所各々が商工会議所の構成員であることを認識し、自らの経営に於いて、その企業スキルを向上させることにより、共に成長していくことこそが会員基盤の充実であり、すなわち、地域の活性化につながると強く信じております。
 第2は、「コンサバティブ(保守)とイノベーション(革新)の融合」であります。
 昔はドッグイヤーと言われておりましたが、現在はそれ以上の非常に早いペースで、世の中はその形態を変化させてきております。しかしながら、その変化に単に流されるだけではなく、守るべきものは守り次代に伝えつつ、変えるべきものは変えていく(AI・IoT・キャッシュレスなど)ための支援をしていく覚悟でございます。
 また、年齢が若いとか、もう年であるとか、あるいは、男だとか女だとか・・・・(最近はジェンダーの関係もありますが)、それから、国籍、出身地などの違いもありますが、それぞれの立場の違い・役割を認識したうえで、その多様性を受け入れた対応をしていきたいと考えております。
 第3は、「9年後のビジョン-組織率70%・75%を目指す」であります。
 部会・委員会等、組織の在り方を再考しつつ、起業や企業誘致も含めた犬山における企業数を増やして組織率を全国的に高いレベルとなる70%から75%を目指し、更に発言力のある経済団体としていきたいと考えております。
 諸先輩方のご尽力により築き上げてこられた犬山商工会議所が、「コンサバティブとイノベーションの融合」により、地域の経済団体として、更に時代に即応した商工会議所であると内外に認めていただけるように微力ながら尽力してまいる所存でございます。
 何卒、商工会議所の事業活動に対しまして、皆様方のより一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。

会頭退任に当たって、お礼の御挨拶と新役員に期待すること

2019年11月 1日

今年は、犬山商工会議所の役員(会頭、副会頭、専務理事、常議員、監事)の任期満了に伴う改選年となっており、本年10月31日に開催予定の臨時議員総会において現在の役員に代わる新たな役員の選任が行われます。私も当該日をもって任期満了となり、会頭職を退くこととなります。本メッセージが発信される11月1日時点では、すでに新たな役員の皆様が選任されておられます。残すところ約1か月の間に、新体制に向け、円滑にバトンタッチできるよう尽力してまいりたいと存じます。なお、新しい役員の皆様方の任期は、令和元年11月1日から令和4年10月31日までの3年間となります。

 顧みますと、私が会頭に就任したのは、平成22年11月1日でございました。その後9年の長きにわたり犬山地区の商工業の改善発達と社会一般の福祉の増進に寄与する立場である商工会議所の会頭職を務めさせていただきましたが、無事に務めあげることができたものと考えている次第でございます。これもひとえに、坂野副会頭、安達副会頭、高橋副会頭、4名の専務理事、常議員及び監事の役員の皆様方をはじめ、事務局長、中小企業相談所長等会議所職員の御支援と御厚情の賜物と深く感謝しております。誠にありがとうございました。

 新たに就任される新会頭におかれましては、旧弊にとらわれず、当会議所の新たな発展を目指してほしいと切に願っております。会員の皆様方におかれましては、どうか倍旧の御指導、御鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げ、私の退任の御挨拶といたします。今まで本当にありがとうございました。

 なお、私儀は、新会頭の任命により、今後は、名誉会頭といたしまして、さらなる当商工会議所事業の推進を見守り続ける所存ございます。

民族主義台頭状況の早期払しょくを望む!

2019年10月 1日

御案内のとおり、犬山商工会議所は、平成26年2月に韓国の咸安(ハマン)商工会議所と姉妹・友好提携を行い、これまで毎年4月と10月の1回ずつ相互に訪問するなどして民間交流を深めてきました。しかしながら、このところの日韓政府間の関係悪化により、本年10月に予定していた犬山から咸安への訪問が、先方から「安全を保障できない等々」との連絡を受け、断念せざるを得ないこととなりました。政府間の関係悪化が民間交流に波及した悪い結果であり、甚だ残念であります。国同士がこじれているときだからこそ、市民同士の交流が重要と私は考えます。交流をやめれば、互いを尊重し合う経済人や政治家は育たなくなり、これにより、いよいよ二国間の関係性が修復不可能となる状態に陥るのではないかと懸念しています。ここにきてますます民間交流の停滞を示す事例が増えてきており、懸念が現実とならないことを祈るばかりです。

 第二次世界大戦は、世界中で民族主義が台頭(ナショナリズムが進んだ)した結果といわれています。国境を越え、情報や人、もの、カネの移動ができた方が経済発展にかなうという考え方がグローバル経済の考え方ですが、現状の米中貿易戦争をはじめ、日韓関係の悪化は、いわゆる民族主義が台頭してきている状況を如実に表している現象と捉えることができます。このような状況が一刻も早く払しょくされ、戦争の無い、平和な世界となることを望んでやみません。民間交流が自由闊達に行える世の中となることを強く祈念します。9月号の犬山商工会議所の会頭メッセージで申し上げたとおりでございます。

互いに知恵を出し合い、打開の方向へ!

2019年09月 1日

犬山商工会議所だより2019年6月号の会頭Messageで、米中貿易戦争が世界経済に及ぼす影響について懸念するメッセージを発信しましたが、今日に至ってもその懸念は払しょくできない状況となっています。トランプ米大統領が、本年8月1日に3000億ドル相当の中国製品に同年9月1日から10%の制裁関税を課す方針を明らかにしたからです。なお、米国はその後の報道で、9月1日に発動する中国への「第4弾」の制裁関税で、携帯電話やノートパソコンなど一部品目の関税発動を同年12月15日に延期するとしました。これを受け、中国は米国産農産品の購入を停止しました。米国はまた、中国を「為替操作国」に認定しました。米中の貿易摩擦がここにきてさらにエスカレートする様相を呈しています。このままの状態が続けば、両国の景気に深刻なダメージを与え、それが日本を含めた世界経済全体に波及していく懸念が大きくなっています。代替のきかない製品までを含めて全ての輸入品を対象にした関税の引き上げ合戦は、両国にとって消耗戦以外の何物でもないと考えられます。さらに、こうした報復合戦が、中国以外の国や地域との間にも広がっていけば、自由貿易を危機にさらすことになると同時に、世界の貿易が縮小し、各国の景気を悪化させることになりかねません。いずれかの時点で、米中両国は共倒れになるリスクを回避し、世界経済への影響を阻止する行動をとる必要がありますが、そのぎりぎりのタイミングは確実に近づいているといわれています。米中両国には、世界第一位と第二位の経済大国として、自らの対立が世界経済を悪化させることを回避する義務があると考えます。

一方、米中間の貿易問題は世界経済の下振れ要因としての大きな懸念材料ですが、悪化する日韓関係は我が国経済にとって悪材料となり得るのではないかとの見方が広がりつつあります。とりわけ、韓国における日本製品の不買運動、抗議デモ等がこのところ、長期化、過激化の様相が濃厚となるなどヒートアップしつつあり、このような動きが我が国経済のみならず、韓国経済にとって少なからず下振れ要因としての影響が出ているとのデータが出つつあります。このような動きは、手続き簡略化など安全保障上の輸出管理で優遇措置を取っているいわゆる「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正に向けた日本政府の作業手続きの動きに対する韓国政府の反発が直接的には起因しています。当該政令改正は、本年8月28日に施行される予定です。このままでは、日韓関係に「深刻な影響」を与えることが確実視されています。

以上のような米中関係、日韓関係ともに、少なくとも現状の対立点については、互いに知恵を出し合い、打開していく方向に向かっていくことを切に願っている次第です。戦争の無い、平和な世界となることを心より祈っています。

産学官民による産業革命!

2019年08月 1日

人類は、過去3度の産業革命を経験しております。

第1次産業革命は、19世紀のイギリスから起こりました。蒸気機関の発明により、製造における作業工程が「人手」から「機械化」になりました。

そして、その流れは、アメリカを中心とした第2次産業革命へと繋がり、軽工業から重工業への転換がなされ、「大量生産」の時代に入りました。

この間、人類は2つの大きな世界大戦を経て、冷戦の到来と終結を経験しました。ベルリンの壁の崩壊、ソビエト連邦の崩壊で冷戦が終結し、これによりコンピューター(通信技術含む)など冷戦時代に軍事部門で使用されていた様々な技術が民間産業へ転換されていきました。

生産ライン等が人間の指示によるコンピューターなどによって自動化され、生産性の向上がなされたのが第3次産業革命とよばれています。

そして今、第4次産業革命という100年に一度といわれるような大きなうねりが巻き起こっています。第3次産業革命では、産学官の連携で推進されていた技術革新等が、産学官に「市民・コミュニティーなど」、いわゆる「民」が加わって、産学官民が連携し、AI・IT・IoT・ビックデータなどが推進力となって第4次産業革命が起こりつつあります。

しかし、われわれは、過去の様々な事例(歴史)に学び、多角的に分析、冷静に判断して事に当たらねばなりません。「バスに乗り遅れるな!」と時流だけに流されていては、破滅へのバスに飛び乗ってしまった戦前の日本になりかねません。

そして、実行に移す場合も、スピードが要求されますが、昨今のデフレの状況下の中でどのように対応すればよいのでしょうか。

このデフレを脱却できない要因の一つとして、日本では、すべての経済主体が節約・貯蓄(いわゆる緊縮)を行っていますが、経済学の用語の「合成の誤謬」が示すとおり、一人ひとりが正しいとされる行動をとったとしても、全員が同じ行動を実行したことでマクロ的に思わぬ悪い結果を招いてしまう、つまりデフレからの脱却がいまだなされていないのが現状です。

時代は、御代替わりの令和元年。過去の状況から変革しつつある現状から目を離さず、産業界は言うに及ばす、商工会議所をはじめ、あらゆる経済主体が積極果敢にこれに取り組むべき時代が今そこに来ているのではないでしょうか。

「米中貿易戦争」と「日本における経世済民」

2019年07月 1日

米中貿易戦争にファーウェイ問題とアメリカと中国の関係が緊迫度を増してきています。昨年10月にハドソン研究所で講演したアメリカのペンス副大統領の演説をして「アメリカの中国に対する"本気の宣戦布告"~米中冷戦の幕開け」と論ずる一部論客もいるようです。あれほど、米中蜜月といわれた関係も、ここ数年で一変してしまいました。

 時代を遡ってみれば、大航海時代に始まるスペイン・ポルトガル、オランダ、イギリス、アメリカと地政学的にシーパワーの国々が覇権の攻防を繰り広げてきました。現在の覇権国家といわれるアメリカに、ランドパワー国家である中国がシーパワーの要素も絡めながらチャレンジをしているようにも見えると言われています。アメリカという虎の尾を踏んでしまったということでしょうか。

かつて、日本も日露戦争をアメリカやイギリスなどの支援を得て戦勝国となったものの南満州鉄道の利権独占という当時の政府の政策転換も要因の一つとして考えられますが、ABCD包囲網(アメリカ・イギリス・中華民国・オランダ)による経済制裁あるいは経済封鎖の対日政策を受けたと言われています。そして日本は、ABCD包囲網以降、経済的に追い詰められ、あの不幸な大東亜戦争に突き進んでいきました。では、今後の中国は、どうなるのか・・・・・・・

あらぬ憶測はさておき、現況は、日本国経済にとっても影響は大きく、犬山でも暗い影を落とし始めてきています。犬山商工会議所としても、先んじて事業所に対するフォローをしていく必要もあろうかと思います。 

そのためにも、当所のスローガンである「がんばる企業応援します!」を理念として、  まずは、現状を受け止め、がんばらなければ意味がありません。汗を出し、知恵を出す。そこから新たな展開が見えてくるかと思いますが、この循環を繰り返すことで、イノベーションを起こしていくしかないと考えます。

また、ケインズ経済学の流れをくむ「MMT」(現代貨幣理論)の議論がアメリカから沸き起こっています。長期のデフレ化に苦しむ日本において、生産性が低迷し続ける現状を打破し、日本経済全体の生産性を「根底」から引き上げるためには、「MMT」を基調とする公共的な投資が必要であると論ずる方も見えます。エネルギーインフラ、食料インフラ、防災インフラ、道路インフラ、鉄道インフラ、港湾インフラなど様々な分野の「インフラ」が整備するべき問題として存在しています。インフラを安全保障と置き換えてもよいかもしれません。

政府が、様々な事情によりこのようなインフラ整備に係る積極財政に踏み切れない現状の中、企業側も厳しい時ではありますが、同じ流れに流されるのではなく、汗を出し、知恵を出し、新たな展開を見出して、イノベーションを起こし、経済の語源である、()()(「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」)のための実働部隊として、その役割を企業として担っていきたいと考えるものです。

米中貿易戦争は、世界の平和を脅かす?

2019年06月 1日

2019年(平成31年)4月30日をもって、第125代天皇明仁(あきひと)陛下が退位され、その翌日の5月1日に皇太子徳仁(なるひと)親王が第126代の天皇に即位されました。第126代徳仁天皇は、天皇としての初めてのお言葉で「象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します」と述べられました。被災地慰問や先の大戦の記憶の継承、環境問題といった各方面での今後のお取り組みについて、天皇、皇后両陛下に大いに期待しています。

世界の平和という点で、このところの米中間での深刻な貿易摩擦問題、いわゆる米中貿易戦争は足元でエスカレートし、米中のみならず、世界経済の下振れ圧力の要因にもなり、世界の平和を脅かすものとなりつつあります。国際通貨基金(IMF)は、トランプ政権による追加関税が与え得る世界経済への影響を試算し、昨年7月18日に公表しています。IMFがその試算の前提としたのは、米国がすでに実施した鉄鋼輸入制限、中国の知的財産権侵害を理由とした年500憶ドル相当の中国製品への追加関税に加えて、米トランプ政権が検討している2000憶ドルの対中追加関税(2018年9月24日に発動済み)、輸入車への25%の追加関税が、今後実際に発動されるとするものです。この場合、世界のGDPは2年間で0.5%程度押し下げられる計算となるとしています。日本もGDPが0.6%の押し下げ効果になるとされています。制裁関税を仕掛けた張本人である米国については、最も大きな影響を受け、輸入価格の上昇による個人消費の悪化などから、GDPは0.8%押し下げられると試算されています。また、IMFは本年4月3日に発表した、世界経済見通しで米中貿易協議が決裂し、双方が全品目に25%の追加関税を発動すれば、2国間貿易は長期的に30~70%落ち込む恐れがあるとの試算を示しました。製造業の国際分業が広がる中、「関税や貿易戦争の影響が世界全体に波及するリスクが高まる」と警鐘を鳴らしています。したがって、今回の米中貿易戦争は誰も得るところは無いということがいえます。

米国が問題にする中国の様々な政策のうち、知的財産に関わる政策は、知的財産の十分な保護を命じたWTOの貿易関連知的財産権協定に違反する可能性の高いものですが、だからといって米国が行っている、一方的に制裁関税を適用することは、WTOのルールに違反しているものと認められます。日本としては、米国が問題にする中国の政策のうち、WTOのルールに違反する疑いのあるものについては、あくまでもWTOの紛争解決手続きを通じて是正を求めるという原則にしたがって行動することが日本のとるべき対応と考えます。貿易赤字にせよ、産業政策にせよ、明確な国際ルールが存在しないなかで、一方的に他国の政策を不公正と判定して、制裁関税を適用することは、ルールに基づく貿易自由化を柱とするWTO体制を根底から揺るがすものと考えます。ルールの不備を埋めルールに基づく貿易自由化を柱とするWTO体制を強化する方向に努力することが必要と考えます。

世界中で戦争や飢饉などの危難がなく、皆穏やかで、世界中が平和となることを願ってやみません。

連携と交流により、思いもよらぬ花が咲く

2019年05月 1日

犬山祭りを原動力に、希望に満ち溢れた新しい地域・時代を切り開いていく。

 菅官房長官は、本年4月1日に首相官邸で記者会見し、新しい元号を「令和」(れいわ)と発表しました。万葉集にある歌の序文「初春の令月にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かお)らす」(書下し文)から二文字をとったとのことです。その後行われた安倍首相の談話の中で、「令和(れいわ)」には人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められている、との説明がありました。元号を改める政令は即日公布され、皇太子が新天皇に即位する5月1日に施行されます。前号の会頭Messageで「元号が新しくなることは、新しい時代のスタートを私達に強く意識させます」と申し上げましたが、今回、元号が「令和(れいわ)」と決定され、新元号に込められた意味や、国民へのメッセージを首相談話として拝聴したわけでありますが、「希望に満ち溢れた新しい時代を切り開いていくぞ、と日本人一人一人が決意しなければならない」と改めて感じずにはいられませんでした。

さて、平成が最後となり、新しい元号が令和(れいわ)と発表された直後の4月6日(土)と7日(日)の両日にわたって、犬山祭りが開催されました。今年の犬山祭は、桜の見ごろとタイミングがピッタリ合い、過去に例を見ないほどの大勢の見物客でにぎわいました。例年にも増して熱気にあふれ、高さ8メートルの豪華絢爛な車山(やま)13両の巡行やカラクリ人形の妙技が多くの人々を魅了し、2日間の行事が成功裏のうちに終了しました。今後とも、犬山祭とこれを担う人一人一人が、希望に満ち溢れた新しい地域・時代を犬山祭を原動力として切り開いていくぞと、決意しなければならないと改めて感じた次第です。

犬山祭真っ盛りの中、当商工会議所では、友好関係にある商工会議所並びに商工会、行政等多様な団体間でのネットワークづくりの一環として、大韓民国 咸安(ハマン)商工会議所(当該商工会議所のほか、沖縄県・石垣市商工会、宮崎県・日南商工会議所、富山県・立山舟橋商工会)を含めた合同の友好交流会を開催しました。合同友好交流会そのものは、非常に和やかな雰囲気の中、情報交換や意見交換などが行われ、終始、友好的でした。しかしながら、このところの、我が国と韓国との「外交的不和が経済界にも広がる兆しが現れている」(2019.4.8(月)9:29配信 中央日報)との記事に接し、個人的には、いささか、心配に感じているところです。やっと緊密になり、果実を生み出す経済連携活動に発展しつつある咸安(ハマン)商工会議所との交流に大きな影響を及ぼすのでないかと懸念しています。

変ずれば通ず

2019年04月 1日

 2019年度がスタートします。本年度は、いろいろ新しいことが重なり、我が国の政治・経済・社会状況に変わり目が訪れる年となるのではないかと、期待半分、心配半分の心境でおります。

 近いところでは、今上天皇の退位に伴い、新天皇が即位され、改元が行われます。「各時代を表すインデックス」とも言われる元号が新しくなることは、新しい時代のスタートを私達に強く意識させるところであります。

 国内政治面では、地方統一選挙、参議院普通選挙が行われますが、この結果によっては、憲法改正を巡る政治、社会情勢に少なからぬ変化が生ずることが予想されるところであります。また、国際的に重大な事柄としては、貿易問題を巡る米国・中国間の交渉と核の完全廃棄を争点とする米国・北朝鮮間の交渉があります。これらは、その成り行きがどのようなものになるにせよ、今後の我が国の経済環境及び安全保障環境に大きな変化をもたらすことは必至であると考えております。更に、我が国の景気動向について見ますと、ここに来て、中国経済の減速等を背景に、景気動向指数が悪化し、基調判断が4年ぶりに下方修正されるに至り、いざなみ景気を超えた「戦後最長の景気回復」という政府の景気判断の是非が問われる事態となっております。今後、国際政治・経済情勢の成り行きに加え、10月の消費税引き上げによる影響が鍵となりますが、本年度が我が国経済にとっての正念場となることは否めないと考えております。

 こうした中、当会議所にとりましても本年度は、変わり目の年であります。10月末の議員、役員の任期満了に伴い、改選が行われ、人心一新の下、11月から新しい執行体制がスタートすることとなっております。加えて、事業面では、中小企業支援の中核事業と位置付ける「小規模事業者経営発達支援事業」の「第2期計画」をスタートさせることとしております。

 一般に計画は、社会経済情勢や経営環境の変化など、身の回りの変化に対応するために策定されるものであり、事業者が厳しい事業環境等の変化に対応してその事業活動をうまく変化させるためには、計画の策定とその実施が必要であることは申すまでもありません。本経営発達支援事業は、経済社会の変化の影響を受け易く、経営力の強化が必要な小規模事業者を対象に、その事業者が有する強みを見える化しこれを新しい力に変える手段として「事業計画」を策定し、その目標の達成に向けて伴走支援することに主眼を置くものであります。

 「計画の無い目標は、単なる願い事にすぎない」(サン・テグジュペリ)ということにならないよう、本年度に生ずる時代の変化を的確にとらえ、計画的に乗り切って行きたいものであります。

※「窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通ず、通ずれば則ち久し」(「易経」) 

"人の利"を活かそう

2019年03月 1日

 本年1月1日現在の我が国の総人口は、1億2632万人であり、ピーク時の10年前(2008年の1億2808人)から176万人減少しておりますが、例えれば、熊本県1県分の人口が消えた勘定になります。内閣府は、10年後(2029年)には1億2000万人を下回り、35年後(2053年)には1億人を割り込むものと推定しております。この様に人口の減少が進む中、我が国経済の衰退に対する警鐘音は、益々大きなものになっております。もとより、犬山市もこの警鐘の対象であることは言うまでもありません。

 こうした中、先頃開催された新春講演会において、2027年のリニア中央新幹線開業がもたらす様々なインパクトについての話しを拝聴しました。講師である家田仁氏の講演の概要は、本所報において紹介されておりますのでご一読いただければ幸いですが、本講演を機に、リニア開業を見据えて私なりに思うところの一端を述べさせていただきます。

 リニア中央新幹線の開業には、品川と名古屋を40分で結ぶなど、東・名・阪間の移動時間を激的に短縮することを背景に、東京のグローバル都市機能、名古屋の優れたものづくり機能、大阪の独自の文化、商業機能を活かしつつ三大都市圏をネットワーク化し、これまでに類を見ない巨大な社会、経済圏(「スーパー・メガリージョン」)の形成を促すことが期待されております。この圏域内においては、整備された在来新幹線、高速道路網等と相まって、大都市と地方間の時間的距離も大幅に縮まり、ビジネス、観光、居住等を目的とした人の移動、交流が増加・活発化することが予想されるところであります。名古屋圏の一端に位置する犬山が、このスーパー・メガリージョンに組み込まれることは当然としても、リニアによる時間短縮メリットを受ける地方・地域が増加することを考えれば、他地域との交流人口獲得競争は、これまで以上に激しくなることが予想されます。既にいくつかの市町では、リニア開業を踏まえたまちづくりの検討が始められております。犬山にあっても、山田市長が「リニア時代のまちづくり」の構想を表明されており、その具体的な取り組みは、今後に期待するところであります。いずれにせよ、リニアで創出される交流人口の増大効果を享受するためには、来て良し、住んでも良しと思える犬山独自の魅力を継続的に向上させる取り組みが求められることになろうかと思っております。 

 『孟子』に「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」という一節があります。犬山に人を呼ぶ込むことは、リニア開業という好機があり、観光資源等に恵まれた有利な土地であっても、この地の人々の"おもてなしの心"がなければ叶わない、という風にこの言葉を読み替えて、物事達成における"人の利"の大切さに思いを致すところであります。

利休に倣う

2019年02月 1日

 我が国への外国人旅行者数が、昨年、3000万人の大台に乗り、1つの節目を迎えました。こうした中、国は、東京オリンピックが開催される2020年にインバウンド旅行者数を4000万人にすることなどを目標とする「観光ビジョン」の実現に向けた取り組みに力を入れております。この一環として現在実施中のアクション・プログラムは、○文化財を中核とする観光拠点の整備、○景観まちづくり等景観に優れた観光資産の保全・活用、○商店街等における観光需要の獲得、○ナイトタイムの活用など新たな観光資源の活用、○古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進、○多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供、○欧米豪を中心とするグローバル・キャンペーンの推進など、多岐にわたっており、犬山においては既に着手しているものもあれば、今後の課題となっている取り組みも少なくありません。

 観光地として人を引き付ける要素は、景観、文化財・歴史遺産、観光インフラ施設、グルメなど多々ありますが、これらにも増して来訪者への心のこもった対応やサービスを提供することが重要であります。とりわけ、文化、習慣の異なる見知らぬ人と人とが接することとなるインバウンド観光において、この接客姿勢が極めて大切であることは申し上げるまでもありません。インバウンドの個人旅行化、体験型観光化、地方への展開といった流れの中、犬山においても、来訪者に対する「おもてなし」の姿勢を鮮明にすることが、今、強く求められていると考えております。

 我が国において「おもてなし」の基礎を創ったと言われるのは千利休ですが、その精神は、『利休7則』として現代に伝わっております。人をもてなす心構えについては、この7則に沿っていろいろ説かれております。これらを踏まえて、私なりにこう解釈しております。①「茶は服のよきように点て」・・・相手の気持ちを考え心を込めて、②「炭は湯の沸くように置き」・・・もてなしの手順を的確に、③「花は野にあるように」・・・もてなしは自然でくどくならないように、④「夏は涼しく冬暖かに」・・・もてなす方法を工夫して、⑤「刻限は早めに」・・・もてなしはゆとりを持って、⑥「降らずとも雨の用意」・・・相手の期待を先取りして、⑦「相客に心せよ」・・・相手を立てて。

 利休十哲の一人である織田有楽斎ゆかりの「如庵」という国宝茶室三名席の一つを、京都以外において唯一有する地としての犬山であればこそ、茶の湯の神髄とも言える、人をもてなすの心の大切さを自覚したいものであります。

 今、犬山は、犬山城登閣者数60万人という過去最多記録を更新するなど、来訪者が急増しております。この機に、『利休7則』に倣って犬山の「おもてなし」力に磨きをかけ、近い将来、当地を"愛知の犬山"、"日本の犬山"として国内のみならず世界において名実ともに認知させることが私の宿願であります。

猪を見る先に矢を引こう

2019年01月 1日

 新年明けましておめでとうございます。

 旧年中、会員を始めとした皆様には、当会議所の事業活動に対し一方ならぬご支援、ご協力をいただき、誠にありがとうございました。 

 ご案内のとおり、本年は、目を離せない時事がいくつかあります。年頭に当たり、主な事柄に触れつつ、新しい年への期待と心構えの一端を述べさせていただきます。

 先ずは、1月、「緩やかな景気回復」が続く我が国経済は、「いざなみ景気」の期間を超え、戦後最長記録を更新する公算が大となりました。しかし、米国の保護貿易政策や中国経済の減速といった景気後退リスクに加え、とりわけ中小企業において、経営上の不安要素として「人材の不足」が第1位となるなど、先行き予断は許されない状況が続くものと考えております。

 こうした中、4月には外国人労働者の雇用拡大を目的とする「改正出入国管理法」が施行されます。本法の制定に際しては、深刻な人手不足を背景に、侃侃諤諤の国会論議がなされたことは記憶に新しいところであります。今後、施行に伴う地域経済社会への影響について注意深く見守っていく必要はありますが、外国人労働者を、ただ単に人手不足を解消する労働力として利用するのではなく、これからの我が国企業、産業の成長を支える人財として活用するという観点は、忘れてはならないと考えております。

 5月、「新天皇の即位」と「改元」が行われます。これに先立ち4月に新元号が事前に公表され、天皇陛下が譲位されます。天皇の譲位と即位が同時に行われるのは、江戸後期の光格天皇以来約200年ぶりとのことでもあり、祝賀ムードの高揚が期待されるところであります。

 7月には「参議院選挙」が実施されます。とりわけ、今回は、124議席を巡る攻防の結果が憲法改正の議論にも影響することが想定され、その動向に大きな関心が寄せられるところであります。

 10月、懸案の「消費税の引き上げ」が実施されます。駆け込み需要への期待などはあるものの、足腰の弱い我が国経済への悪影響が懸念されるところであり、景気落ち込み防止対策の着実な実施が望まれる所以であります。

 この1年、いろいろな事が生起しましょうが、諸事万端、"猪見て矢を引く"(注)の弊に陥ることのないよう、用意周到な心構えでいたいものであります。

 さて、昨年は、地震、台風、豪雨などの「自然災害」が、日本各地において、日常生活や経済・社会活動に大きなダメージをもたらしました。本年は、「亥」年にちなみ、あまねく「息災」であることを祈念する次第であります。

 本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。

(注)"猪見て矢を引く":「事が起ってからあわてて対策を講ずる。」といった意で引用される諺。出典は不詳。

袖ふり合う縁を活かす

2018年12月 1日

 我が国経済は、堅調な企業業績、雇用・所得環境の改善に支えられて緩やかな回復が続いております。GDPも年度ベースで1%程度の成長が見込まれており、「実感なき景気回復」と言われて久しいものの、このままで推移すれば、来年1月には"いざなみ景気"を超えて戦後最長の景気拡大期間を記録することになります。とは申せ、中間選挙を終えた米国トランプ政権の貿易政策に大きな変化は期待できず、今後、我が国経済が厳しい局面を迎える懸念は、払拭されておりません。

 こうした中、11月14日、世界人口の約50%、GDP及び世界貿易の約30%を占める広域経済圏の構築を目指す、東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ))首脳会議がシンガポールにおいて開催されました。5年越しの交渉の末、年内妥結への期待が高まっておりましたが、「2019年に妥結する決意である」旨の共同首脳声明を発表するに留まり、交渉の決着は、来年に持ち越されました。米国がTPPから離脱した今こそ、一国主義、保護貿易主義を標ぼうする米国に対し、各国が連携して自由貿易を維持、推進して行こうという強いメッセージを示す意味もあり、その早期発効が強く望まれるところであります。

 さて、先頃、恒例となっております、石垣市商工会との友好親善を深めるため、石垣市を訪問して参りました。当会議所と石垣市商工会との交流は、昭和56年、名鉄が石垣市に「八重山民俗園」というテーマパークを開園したことを機に、同年、両者間で姉妹提携を結んだことに端を発します。以来、相互理解と産業・文化交流の促進によりそれぞれの地域経済の発展等を図るべく活動を続け現在に至っております。今では、こうした経緯を知る人も少なくなってきておりますが、今日、当然のごとく行われている、犬山と石垣間の様々な面での交流・連携は、日本最南端・最西端にできたテーマパークを縁に、連綿と発展させてきたものであります。"小才は、縁に出会って縁に気付かず。中才は、縁に気付いて縁を活かさず。大才は、袖すり合うた縁をも活かす。"という柳生宗矩の言葉は、どんな些細な関わり合いでも、それを"縁"として活用する能力の大切さを示唆するものとして有名ですが、けだし、当会議所(当時は、商工会)の諸先達は、その一例を示されたものと改めて賞賛の念を禁じ得ません。

 国家間の活動から企業、個人の活動まで、あらゆる局面において、小さなご縁(チャンス)を見逃さず、これを最大限に活かすことができるように心がけて行きたいものであります。

"全員野球"でガンバロー

2018年11月 1日

 10月2日、第4次安倍内閣が発足し、安倍首相は、これを「全員野球内閣」と称したことは、ご案内のとおりであります。もとより"全員野球"は、高校野球の用語のようですが、比喩的に、関係者全員が一致団結して事に当ることを表して使われる言葉であります。高齢化等により足腰の衰えが目立つ我が国チームに対し、海外の強豪チームから政治的・経済的な変化球が次から次へと飛来する中、安倍監督及びコーチ陣には、チームメートの体力増強に努め、的確にボールを打ち返すことができるような采配振りを期待するところであります。これに先立つ10月1日、免疫療法の研究でノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった本庶教授は、あなたのお蔭で重い病気から元気になったと感謝されるのが何よりもうれしい、と話しておられます。安倍内閣には、あなたのお蔭で日本は強く元気になりましたと私たちが言うことができるように頑張ってもらいたいと思っております。

 また、同じ10月1日には、「犬山市産業振興基本条例」が施行されました。本条例は、これからの犬山市の産業の振興、実質的には中小・小規模事業の発展についての基本的な在り方を宣言、規定したものであります。本条例において、当会議所は、犬山市の産業振興を進めるため、地域資源の利・活用、産業人材の育成・確保、事業承継と後継者の確保、創業や新産業分野への進出といった面で事業者を支援することが規定されております。併せて、事業者に対しては、商工会議所事業への積極的な参画とその活用を求める旨が規定されております。また、条例の前文に、産業の振興には地域経済に携わる者全員が連携、協働して取り組むことが必要であることがうたわれており、当会議所に掛けられる期待と責務がより重いものになっていることを役・職員一同改めて噛み締め、全員野球の精神をもって、与えられた役割を果たして行く所存でおります。

 こうした中、当会議所は、諸般の事業の推進に努めておりますが、その一環として、ビジネス実務で要求される人材の育成に向けて、簿記、そろ盤を始めとした検定事業を実施しております。今般、この検定事業の推進面における功績が認められ、去る9月20日、第128回日本商工会議所会員総会の開催に際し、私が、同じく表彰される18の商工会議所を代表して三村日本商工会議所会頭から表彰状を授与される栄に浴しました。幾分なりとも地域事業者の皆様のお役にたてれば幸いであるとの思いを強くした次第であります。

 当会議所といたしましては、支援する事業者からお蔭様で元気になったと感謝されるような存在になること目指して、切磋琢磨して参る所存でおりますので、皆様方のご支援、ご協力をお願いする次第であります。

疾風に、勁草を知る

2018年10月 1日

先頃、日本列島は、大阪を中心に猛威を振い今世紀最強といわれる台風21号と、震度7の激しさで北海道を襲った地震とに、立て続けて翻弄されました。自然災害の脅威と被害の大きさに驚くとともに、被災された方々には、唯々心からのお見舞いと励ましの意を表するほかありません。

 国際情勢に目を転じますと、昨年の今頃には最悪の場合は核戦争が勃発するとまで危惧された米国と北朝鮮の関係は、ご案内のとおり、首脳会談が開催され、ひと先ず武力戦争の危機は回避されましたが、まだまだ予断は許されない情勢にあります。一方、貿易問題を争点とした米国と中国との関係が悪化し、両国の間は、関税引き上げ抗争がエスカレートし、今や貿易戦争といわれる事態にまで発展しております。米トランプ政権の対中国政策の見方には、もはや貿易摩擦、経済問題の次元ではなく国家安全保障の次元から実施されているとの論調もみられる中、米中両国関係の成り行き次第では、我が国も難しい状況に置かれる局面もあることが懸念されるところであります。

 以上のように、私達は、地震、台風、異常気象など自然災害面における困難や国際政治・経済面における困難など、私達が直接的にどうこうできない次元における大きな困難に意図せずに巻き込まれる機会が増えております。また、少子高齢化等に起因する社会、経済、財政的側面における諸々の苦境など枚挙にいとまがない状況にあります。

こうした困難等に遭遇した場合、人は、気力を無くし、成るに任せて無抵抗に流されるか、あるいは、知恵、勇気、忍耐を駆使して何とか乗り切ろうとするのか。私は、後者でありたいと思っております。中国の故事ことわざの一つに、「疾風に勁草を知る」というものがあります。激しい風が吹き弱い草が倒れ伏して初めて、風に倒れない強い草の存在が明らかになるというたとえから、困難に出会って初めて、人の真の強さ・価値が分かるといった意味に理解されております。困難や非常時の中であればこそ、その人の存在感が発揮されるということであるならば、人は、困難を乗り切ることができる存在にこそならなければならないと思う次第であります。

正に、いつ何時どのような「疾風」が吹くか分からない時代に生きている私達は、良く努力して、いかなる困難、逆境にも耐えられる強い人間として、また経営者として、更に言えば商工会議所として、それぞれその存在感を示す、言わば「勁草」になるという気概を持ち続けて行きたいものであります。

ビジネスは"白書"にあり

2018年09月 1日

"命に危険な"とか"災害レベルの"といった形容がされる猛暑となった今夏、気象関連情報から目が離せない日が続きました。この猛暑が経済活動に及ぼす影響として、7-9月の平均気温が1度上昇すると同期間の我が国の家計消費支出が3200億円ほど増加するとの試算がありますが、国内1、2を争う最高気温を記録する当地域の寄与度はどれ程なのか、などと今夏の猛暑効果について思いを巡らせてしまいます。

さて、先頃、犬山商工会議所は、事業活動の一環として、中小企業白書の説明会を実施しました。ご承知のとおり、中小企業白書は、中小企業基本法に基づき、政府(中小企業庁)が作成する中小企業の動向や関連施策等に関する年次報告書でありますが、今回の2018年版で55回を数えております。

 同白書では、中小企業の現状について、経常利益が過去最高水準にあり景況感も改善傾向にあるものの、労働生産性の面において大企業との格差が拡大しており、また人材不足や後継者難の深刻化といった経営課題に直面していると分析されております。こうした現状を受け、「生産性革命」をテーマに、業務プロセスの見直し、人材活用・IT活用の工夫、設備投資、M&A事業承継など、生産性の向上に向けた取り組みについて、そのポイント、取り組み事例を紹介しております。とりわけ、小規模事業者については、経営者に業務が集中する実態を踏まえたIT導入による業務の効率化や、施策を浸透させる上で商工会議所等支援機関の役割の強化が示されております。

 中小企業白書は、事業者にとって、掲載された事例を参考にして経営上のヒントやアイデアを発見する、各種の資料データを入手する、利用できる支援施策を見出だすなどのツールとして、日々の経営に役立つものといえます。2018年版は、中小企業庁のホーム・ページから無料でダウン・ロードできます。500ページを超える大部なものですが、折をみて目を通して頂くことをお勧めします。ちなみに、今回の白書は、作成された意図どおり、中小・小規模事業者の具体的な取り組み事例が豊富に紹介されており、生産性の向上に向けたヒントが得られる実践的なものとして仕上がっているように思われます。

 当商工会議所といたしましては、地域中小・小規模事業者の生産性向上などの経営課題の解決に向けて、設備投資等補助事業を始め様々な支援策を駆使し、猛暑に引けを取らない熱い気概を持って、期待される役割を果たして参る所存でおります。皆様におかれましても、よろず困り事があれば、「最も身近な支援機関」である当商工会議所に相談して頂ければ幸いに存じます。

「勝つと思うな、思えば負けよ」

2018年08月 1日

今年の梅雨は、西日本を中心に甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」という有難くない置き土産を残し、平年より早いペースで去りました。

我が国の経済は、輸出が緩やかに増加し、設備投資が人材不足を背景とした合理化・省力化投資を中心に増加基調を維持する中、個人消費の持ち直し傾向も続いており、先行き中東や北朝鮮を巡る情勢の変化、米国の保護主義政策の動向といった海外要因リスクが懸念されるものの、大企業を中心に、緩やかな景気の回復が続いております。一方、中小・小規模企業にあっては、人材不足、後継者不足といった構造的な経営課題を抱え、日々の経営に苦心している事業者も少なくありません。こうした中、当会議所におきましては、第2四半期を迎え、小規模事業者の経営発達支援事業の仕上げ、事業承継、生産性の向上に向けた新規の支援事業などに力点を置いて、事業の実施を加速化することとしております。

さて、皆様にも鮮烈な記憶として残っているのではないかと思いますが、サッカーワールドカップ、日本チームは、8強入りが掛った対ベルギー戦において2点を先取し、これで勝ったと思う間もなく逆転負けを喫しました。正に、「勝つと思うな、思えば負けよ」を地で行くこの展開を目の当たりにして、いろいろ考えさせられました。ちなみに、勝ち負けと言えば、吉田兼好の「徒然草」に、勝負事は、勝とうとして行ってはいけない、負けないように行うことが極意であるという話がでてきますが、兼好は、この極意は個人から国家に至るあらゆるレベルの事業、活動にも当てはまる理であると述べております。

 この極意を企業経営に当てはめてみますと、事業の大ヒット、華々しく飛躍的な発展といった、専ら「勝つ」ことを目指すより、「負けない」ことに重点を置き、地道で持続的な発展を心掛けるほうが、結果的には良いといった意味に捉えることも可能であります。不敗の戦略書として、経済誌や経営書においてしばしば取り上げられる、「孫子」の兵法にも一脈相通ずるところがあろうかと思われます。現実の社会生活においては、「勝つ」と「負ける」の二極化だけでは計ることのできない第3の状態として「負けない」という在り方が説得的に聞こえるのは私だけでしょうか。人口の減少、世界経済における相対的地位の低下といった、昨今の我が国が置かれている内外の事業環境の下では、傾聴に値する言葉ではないかと思っております。

会議所といたしましても、「負けない」経営の確立を一つの視点として。事業者の支援に努めていくことの意義を改めて噛みしめている次第であります。

民信無くば立たず

2018年07月 1日

 梅雨空が続いております。
 相互の不信から一時は戦争勃発が危惧された米朝関係でしたが、6月12日、トランプ大統領と金委員長の会談が実現し、緊張緩和への期待が高まってきた状況に安堵する思いでおります。今後の成り行きについては、共同声明の内容等を巡って議論は様々ですが、声明にある朝鮮半島の完全非核化に向けた作業の前進は、一にも二にも両国間の信頼の醸成に掛かっていることは申し上げるまでもありません。いずれにせよ、これが国際政治における梅雨の晴れ間に終わることなく、このまま梅雨明けとなることを強く念願する次第であります。
 一方、国内政治はといえば、大臣や政府職員の言動に起因する政府や政府機関に対する不信の念の増幅が国政機能の十全な発揮を阻害しているといった憂慮すべき事態にあることは、先にも述べたところであります。政治で重要なことは何かと問われた孔子は、十分な食の確保、十分な軍備の保有、政権への信頼の確保の3つであるとしつつ、この中でも、為政者に対する民の信頼が最も重要であり、これ(信頼)がなければ国は立ち行かないと答えております。国政に携わる者には、心してほしい言葉であります。
 顧みて民間の企業や団体の場合はといえば、直近でも、重大な反則行為の日大のアメフト部を筆頭に、家電リサイクル法違反のサカイ引越センター、データ改ざんの三菱マテリアル、酒税法違反のアサヒビール、個人情報流失の森永乳業、不正融資のスルガ銀行など、不祥事の発生は、それこそ枚挙にいとまがない状態となっております。こうした不祥事においては、一つ対応を誤れば、一瞬にして組織の信用・信頼を大きく損ない組織そのものの存亡問題に発展することも無きにしも非ず、であります。話はくどくなりますが、組織に属する個人への信頼がその組織への信頼にどう影響するかについての興味深い研究があります。結論は、「個人への信頼」の向上は、「組織への信頼」にあまり反映しないが、「個人への信頼」の低下は、直接的に強く反映するというものであります。要するに、個人に対する信頼が欠如すると、その人が所属する組織に対する信頼も欠如するということであります。
 犬山商工会義所は、申し上げるまでもなく、会員の皆様方の信頼に支えられ、当地域における商工業の発展や社会福祉の増進への寄与を目的として諸事業を実施する団体であります。私を始めとした犬山商工会議所に属する役・職員といたしましては、地域の皆様方の信頼を損なうようなことが無いように精進に努めるとともに、実施する事業の成果を重ね、その信頼に応えていかなければならないものと改めて気を引き締めている次第であります。
 今後ともご支援の程、よろしくお願いいたします。

国政の働き方改革が必要?

2018年06月 1日

6月、1年のうちで唯一、国民の祝日が無い月に入ります。休日が少ない分、有給休暇が取りやすい月ではあるかもしれません。

さて、国政では、いわゆる「モリカケ問題」に揺れ、5月の連休を挟んで3週間近くも国会審議が停滞し、政府が最重要法案と位置付けている「働き方改革関連法案」の行方が気になるところであります。
我が国では、経済のグローバル化や少子高齢化などを背景に経済が活力を欠く中にあって、育児や介護、過労死につながる長時間労働など、生活と働き方にまつわる問題が大きくクローズアップされております。こうした中、「ワーク・ライフ・バランスの実現」と労働生産性の向上を目指して「働き方」を改革する必要性が喧伝され、労働基準法を始めとした8つの法律の改正案が「働き方改革関連法案」として今国会に提出されたことはご案内のとおりであります。
エンゲルスが言うように『労働が猿を人に進化させた』かどうかはさておき、労働は、人が生きていくことの本質にかかわる問題であると言っても過言ではないと思っております。そうだとすれば、労働は、我々の暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすと同時に、国の活力を高め持続可能な社会を実現させるものでなければなりません。この意味で、「働き方」は、その時代にあった形で進化させていかなければならないものと考えております。
閑話休題、改めてこの法案の中身を見ますと、〝時間外労働の上限規制〟  〝月60時間を超える残業に係る割増賃金率の中小企業への適用猶予措置の廃止〟〝有給休暇の取得奨励〟〝高度プロフェッショナル制度の新設〟〝同一労働同一賃金の制度化〟など、人手不足の影響を受けている中小企業にとっては厳しい対応を迫られると思われる措置も少なくありません。一方で国や県において、人手不足や働き方改革について悩んでいる中小企業に対し、〝「働き方改革推進センター」等を窓口とした相談体制の整備〟〝生産性の向上及び業務の効率化等のための設備投資・IT導入や人材の育成に対する補助・助成〟など、様々な支援策が用意されております。ともあれ、中小企業には法の施行期日の面で一部猶予があるとは言え、準備を怠るわけには参りません。我々地域の中小企業としては、こうした事態を、働き方・働かせ方の在り方について再考するとともに、女性・高齢者・外国人等多様な労働力やAIの活用を視野に入れつつ、優れた人材とメリハリのきいた労働を確保することにより生産性の向上を図る好機ととらえるべきであると考える次第であります。
 意気込みを持って本稿を書いている正にこの時、又ぞろ本法案に係る厚労省の調査データの不適切さが問題となり、今国会での成立に暗雲が懸ってきました。これにつけても、昨今の国政状況を極めて遺憾に思うのは私だけでしょうか。

武力戦争はダメ、経済戦争がマシ

2018年05月 1日

今年の犬山祭りは、懸念された雨こそ降らなかったものの、花は散り、やや冷気が流れ込む中での幕開けとなりました。とはいえ城下町地区は熱気にあふれ、絢爛な山車の巡行やカラクリの競演は多くの人々を魅了し、2日間の行事を無事終了することができました。関係者の一人として、祭りの後の一抹の寂しさとともに、ホッとしているところであります。

さて、「アメリカ・ファースト」を標ぼうするトランプ米大統領は、安全保障に対する脅威を理由に、鉄鋼・アルミ製品の輸入に対し追加関税を課す方針を表明しました。更に、知的財産権の侵害等を理由に、ハイテク、最先端分野における中国からの輸入品を対象に制裁措置を発動する大統領令に署名をしました。これに対し中国は、相応の対抗措置をとると応酬しており、両国が貿易戦争に突入するのではないかとの懸念が広がっております。米国のこの度の措置の背景としては、巨額な貿易赤字の是正もさることながら、国際社会における中国の台頭、米国の覇権への挑戦に対する危機感があるとの見方も否めません。近時、中国の経済力は急速に拡大し、今や、量と質の両面において米国に迫る勢いを見せている状況に鑑みれば、米国に産業面で中国を封じ込める意図があるとしても何ら不思議ではありません。

英国の著名な歴史学者が、かつて「主要な国際戦争は、貿易をめぐる戦争であった」(E.H.カー)と述べたように、経済は、一国の安全保障に大きく関係するものであり、グローバル化の下においてその重要性は一層増しております。経済力は、技術力、軍事力を向上させるなど国のパワーの源泉であり、安全保障の目的であると同時に、また、昨今の北朝鮮に対する経済制裁のように、安全保障のための手段としても利用されます。とすれば、国際社会において経済政策と戦争は、極めて密接な関係にあると言えます。

 いずれの国も、覇権を維持、強化するために貿易戦争を仕掛け、それがエスカレートすることによって「武力による熱い戦争」を引き起こすことは、絶対にあってはなりません。いずれの戦争にせよ、勃発すれば当事国のみならず全世界がとばっちりを受けますが、「貿易戦争」と「熱い戦争」とでは被る惨禍は、天と地ほどの差があります。この意味において、個人的には、「ミサイルを使う戦争」ではなく「関税を使う戦争」で済まされる限りにおいて、まだ良しとすべきかとも思っております。

 ロス米商務長官は、今回の措置について、「第3次世界大戦に突入」しようとしているのではなく、「交渉による解決」への扉は開いている、と述べておりますが、両国の理性的な対応に期待をかける次第であります。

会議所の"白袴"を紺袴に

2018年04月 1日

3月上旬、世界貿易を巡って相反する2つの出来事がありました。8日、トランプ大統領が輸入制限措置文書に署名し、翌9日、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の署名式がチリ・サンティアゴで挙行されました。前者は、鉄鋼・アルミ製品に高関税を課すというもので、EU、中国などは発動されれば対抗措置をとると表明しており、最悪の場合には貿易戦争に発展し、世界経済の混乱を招くことが懸念されております。後者は、米国が離脱したTPPに我が国を始め11か国が署名したもので、アジア太平洋地域における自由で公平な貿易・経済秩序の構築が期待されるものであります。このように混迷する国際経済環境の下、緩やかな景気回復基調にある我が国においては、今後とも難しい経済のかじ取りに追われる局面が続きそうであります。

 こうした中にあって、現在、我が国では、国際競争力を高めて経済成長を達成すべく、「生産性革命」と「人づくり革命」の政策パッケージが実行されております。中小・小規模事業分野においては、商工会議所等と一体となって行う生産性の向上等に資する取り組みとしての持続化補助金事業や広域型の販路開拓事業を始め、喫緊の課題である事業承継・世代交代集中事業といった支援策がリストアップされており、商工会議所は、これらの支援策を活用して地域中小・小規模事業者の「革命」を後押しする使命を帯びております。

 折しも、当犬山商工会議所においては29年度事業を総括する時期に当り、地域経済の要である小規模事業者の「経営発達支援事業」について、第3者から成る委員会を設置して実施状況の検証を行った結果、総じて「概ね良」という評価を受けたところであります。とりわけ、持続化補助金の採択率は、76.5%と県下22商工会議所中トップであり、本事業に係る当会議所の支援力は自他ともに認めるところとなっております。一方で、同検証においては職員の支援面での生産性の向上を図るべきとの指摘があり、支援能力をなお一層強化する必要性を認識したところでもあります。更に、当会議所では、今後、ベテラン職員の定年退職が続く時代を迎え、支援能力の継承が構造的な課題となることを考え合わせると、「生産性革命」と「人づくり革命」は、取りも直さず当会議所自体の命題でもあることが自覚され、"紺屋の白袴"などと言われることのないよう、その達成に努めて参る所存でおります。

 最後に、城下町地区の現況について一言。現下における犬山城・城下町地区の活況は、私でさえも目を見張るものがあります。メディアやSNSでの取り上げの効果もありますが、ここには来訪者を引き寄せる常に何かを期待させる魅力があるからであると思っております。3月7日、この城下町にレストランがオープンし、3年越しとなった火災禍からの復興もやっと完了いたしました。このレストラン「ぐーまる」の開業に対しては、来訪者の食の楽しみに応える新たな魅力の1つとして城下町地区の賑わいを支えてもらいたいとの期待を込めて、盛大な拍手を送る次第であります。

つながる時代のリスクに注意!

2018年03月 1日

 2月6日の株価の急落は、適温に漬かった我が国経済の先行きに少なからぬ不安を与えるものでありました。その前日の米国株の歴史的暴落に端を発したもので、米国の利上げ動向等にからんで、引き続き不安定な状況が続くものと予想されております。この度の米株価下落の要因の一つを、コンピュータによる自動取引(アルゴリズム取引)とする説が浮上しておりますが、それなりに説得力を持つ見解であると思われます。この自動取引については、システムの過剰反応やプログラムエラーなどにより株価の大変動を引き起こし、市場を混乱させるリスクが指摘されており、各国においてルールや規制を課す動きが出ているところであります。

 古来、人は、自らの活動をより省力化し、効率化するため、様々な利器を創り出し活用してきました。とりわけ、コンピュータは、日々高機能化し、インターネット技術の進歩と相まって、極めて大きな利便をもたらしております。こうした流れの中でIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の開発・導入は、私たちの生活や事業活動を画期的に変えるように思われます。将来、生産年齢人口が減少し経済の停滞が懸念される我が国にあっては、もとより、労働力の確保、労働生産性の向上といった課題を解決する上で、IoT、AIの活用は避けて通ることはできないものとなるでしょう。しかし、インターネットであらゆるモノがつながる世界は、メリットの裏に、データの盗難、悪意あるコントロール、誤作動といった相応の危険が潜んでおります。話を更に敷えんすれば、近い将来、AI技術によってロボットが進化し、究極的には人間の脅威となるおそれも否定できません。ちなみに、ロボットという語は、チェコの作家カレル・チャペックが、今から100年程前に発表した戯曲「ロボット」で使用したことに由来するものですが、その戯曲のあらすじは、人間を労働から解放するために大量生産した人造人間(ロボット)が、やがて反乱を起こし人類を滅ぼすといった内容です。後に彼は、遠くない時期に馬鹿な人間大衆がこういった方向に向かうのではないかという恐れにとらわれたとも述べております。しかし、彼のこの恐れは、英国の物理学者ホーキング博士を始め著名な世界的専門家がAIロボット兵器による人類終焉の危機を警告している最近の事実を目にすると、SF世界の出来事として済ませることはできないように思われます。

 私たちは、技術の進歩とそれがもたらす恩恵のみに目を奪われ、往々にしてそこに潜む危険性を無視あるいは軽視しがちであります。

 私も従来より、連携、つながりの大切を訴えておりますが、昨今のようにIoTにより全てのモノがつながる時代における脅威とデメリットには、改めて目を向けていかなければならないと考える次第てあります。

実行の志士たらん

2018年02月 1日

 本年は、ご案内のとおり、明治元年から起算して150年目の年であります。昨今、国際社会において、経済的にも政治的にも存在感が弱まったと指摘される我が国の状況に鑑みると、我が国が近代化に向けて果敢に第一歩を踏み出した明治の「志」を振り返り見て国勢の浮揚につなげる絶好の機会であります。政府も、明治の精神に学び、日本の強みを再認識してそれを現代に活かし、日本の更なる発展を目指すことの重要性を訴え、官民を挙げて、「明治150年」事業を多面的に展開することとしております。

 さて、明治維新の精神的指導者の一人として多くの志士を育てた吉田松陰は、「夢なき者に理想なし 理想なき者に計画なし 計画なき者に実行なし 実行なき者に成功なし ゆえに、夢なき者に成功なし」という言葉を遺しております。これは、私の好きな言葉の一つですが、物事を成し遂げるに当って必要な手順を明快かつ簡潔に述べたもので、正に、企業経営においても実践すべきものであることは多言を要しません。経営者は、その事業の将来の夢を持ち、あるべき理想の姿とも言える経営ビジョンを描き、ビジョンを実現する戦略を具体化した経営計画を作り、計画を実行することにより、そのビジョン(夢)の実現を達成することができるわけであります。しかし、中小・小規模事業者にあっては、こうした取り組みを実施している者は、まだまだ少数であります。

 こうした中、当商工会議所は、小規模事業者支援に係る重点的な取り組みとして、経営発達支援事業に力を入れているところであります。この事業の要は、≪事業者が自らの事業の将来像を実現するために事業計画を立案し、その計画を実行することにより、経営の発達を図る≫という施策のスジ書の中で、事業計画の策定時点とその実施時点で会議所の支援担当者が事業者をきめ細かく支援するというところであります。会議所といたしましては、事業者の皆さんの積極的なチャレンジを期待しております。

 松陰は、「宜しく先ず一事より一日より始むべし」とも言っております。この言葉は、事を成すには、1つの事から、順次、2つ、3つ、百、千の事へと推して行い、また、1日から始め、2日、3日、百日、千日と努力を積み重ねていくことが重要であると指摘した上で、それ故、先ずその第一歩を、この一事から、そして今日というこの一日から踏み出すのが良い、と説くものと解されております。

 「明治150年」という節目に当たり、我が国を取り巻く諸環境の厳しさが続く中にあってこそ、国であれ事業者であれ、その志を達成するためには、将来のビジョンと計画を策定し、日々、一歩一歩、為すべきことを着実に実践していくことが大切であることに、改めて思いを致している次第であります。

戌(犬)を活かそう!

2018年01月 1日

 新年明けましておめでとうございます。

 平素より、会員を始めとした皆様には、当会議所事業に対し、一方ならぬご支援、・ご協力を頂き、誠にありがとうございます。年頭に当たり、厚く御礼を申し上げます。

 昨年の我が国の景気は、緩やかな回復基調で推移し、期間としては"いざなぎ景気"を超えるに至りましたが、先行きにつきましては、北朝鮮問題やアメリカの保護主義政策の動きなど、不透明感も強まっております。一方、地域におきましては、労働人材の不足、経営者の高齢化などを背景に中小企業の経営は、厳しさを増しております。こうした中、犬山商工会議所といたしましては、本年も日本商工会議所等との連携を強化しつつ、とりわけ次のような地域課題に重点を置いた取り組みを進めて参る所存でおります。

 その一つは、事業承継であります。中小企業経営者の高齢化とその後継者の不在は、「大廃業時代」の到来を現実のものとします。事業の承継は、個々の事業者の相続問題というより、世代交代を通じた地域産業の活性化問題と位置付けるべき喫緊の課題であります。当所は、2018年度に拡充される「事業承継税制」などの施策を活用し、円滑な事業承継を支援することとしております。

 次は、人手不足の解消であります。中小企業の人手不足は、深刻化しており、放置すれば事業の生産性を弱め、地域の産業基盤を著しく損なわせるものであり、官民を挙げて待った無しに取り組むべき課題であります。この克服に向け、女性、高齢者、外国人など多様な人材の活用を可能とする就業環境の整備が進むように、会議所としてできることを着実に実施することとしております。

 次は、地域創生であります。この課題につきましては、これまでも再三にわたり言及しておりますが、犬山の創生において、とりわけ、観光の振興が重要であると認識しております。この課題には、関係機関・団体と連携し、交流人口の量的・質的な拡大に向けて、犬山が持つヒト・モノ・コトを来訪者の満足に適うような形に磨き上げる取り組みを引き続き実施することとしております。

 さて、本年は、戌年であり、犬山にとっては誠に験の良い年であります。とすれば、「犬」を切り口として地域創生を図らない手はありません。私も何か良いアイデアはないかとあれこれ思案しているところであります。ちなみに、犬にまつわる故事、ことわざを見てみると、意外や犬は、マイナスのニュアンスを帯びたたとえとして使われている例が非常に多い(特に中国)ことに驚かされます。ともあれ、このメッセージも"犬の鳴き声"(※)程度のものかと苦笑しつつ、犬の良いイメージを活用する方策を見つけたいと思っております。 

 皆様も妙案がありましたら、ご教示くださるようお願いいたします。

(※)つまらない文章を驢馬や犬の鳴き声のようだとあざけり笑った故事で、

   「驢鳴犬吠(ろめいけんばい)」という成語になっている。

会頭職の三段跳び

2017年12月 1日

 10月初め以降、世界経済全体の景気回復や好調な企業業績を背景に、世界的に株価が上昇しており、我が国の株式市場も一時26年ぶりの高値を記録するなど、堅調に推移しております。しかし、こうした好ましい状況も永久には続かないことを念頭に置いて、動向を注視していく必要がります。

 昨年11月、私が3期目の会頭職に就き早1年が経ちました。この間、「頑張る企業を応援する」との掛け声の下、生産性の向上を目指して設備投資等を行う商工業者を支援する取り組みを始め、小規模事業者の持続的発展に向けた支援事業を実施して参りました。また、観光面におけるこの1年を振り返りますと、犬山祭車山行事のユネスコ無形文化遺産への登録が実現し、知名度の向上と相まって、城下町、犬山城への来訪者も増え続け、平日においてもスマートホンを片手にインスタグラムに興じる若者で賑わいを見せております。こうした動向を背景に、行政関係者などの視察者も増えており、犬山のまちづくりに対する他地域の関心の高まりを(うかが)い知る(よすが)ともなっております。畢竟(ひっきょう)するに、犬山の「観光力」は着実に強くなっているとの手応えを実感しております。

 さて、こうした中、任期3年の会頭職の2年目におきましては、会議所の重要な使命である地域商工業の発展・振興面では、小規模事業者の経営発達支援事業の仕上げと次の支援計画の策定を行って参ります。観光振興面では、城下町地区における火災跡地の再開発事業を立ち上げた犬山まちづくり(株)に協力し、賑わいを創出する拠点づくりに取り組んで参ることとしております。また、栗栖地区の「つり橋」構想につきましては、架橋のための諸条件についての調査・研究に着手し、その実現に向けての行動を一歩前進させることとしております。

 こうした今期の取り組みでありますが、陸上競技の3段跳びに例えれば、ホップの跳躍を終え、次に跳ぶステップの段階を迎えたところであります。3段跳びで重要かつ難しいのが2つ目の「ステップ」であることは多々指摘されるところでありますが、何事においても、第2段階のステップの良し悪しが、第3段階のジャンプの仕上り、ひいては最終結果の良し悪しに影響するということを示唆するものとして、傾聴すべき指摘ではないかと思われます。

 会頭としてのチャレンジ事業におきまして 第1年目の跳躍を踏まえ、その姿勢を崩さずに第2年目のステップにつなげ、ご期待に添える成果を出せるよう頑張って参る所存であります。

 このような私の3段跳びですが、皆様の応援、サポートをお願いする次第であります。

えびす様頼み

2017年11月 1日

去る9月28日に衆議院が解散され、本稿を執筆している10月中旬現在、各政党各候補者間において熾烈な選挙戦が繰り広げられております。今回の解散については、北朝鮮の核・ミサイル開発など地政学的リスクの増大、働き方改革の推進など内外の重要な政治課題が山積するこの時期、政治の空白を招くような事態は許されないとの批判も多々なされております。この点につきましては、個別具体的な事柄について論じる力はありませんが、全衆議院議員が一時的に不在であっても、来年度予算の編成や税制の改革など重要な事柄に関する作業は休むことなく続けられており、空白を生じることはないと考えております。こうした国家運営の日常・実際面を担っているのは、官僚であります。我が国の官僚は、優秀であり、国家運営面で大きな支障が生ずることはまずあり得ないと言えます。

 こうした中、9月25日発表された「月例経済報告」において、景気は引き続き緩やかな回復基調で推移しているとの判断が示されました。この判断を受け、アベノミクスによる景気拡大が戦後2番目に長い「いざなぎ景気」(57か月)を超えるに至り、次の焦点は、戦後最も長い「いざなみ景気」の記録(73か月)を超えるかどうかであるといった報道が散見されます。しかし、今回の景気拡大には実感が伴っていないとの指摘が少なからずあることも事実であります。これを裏付けるかのように、直近における各種中小企業景気調査を見ると、確かに、業況悪化との判断する者は減少しているものの、全体としては、景気は停滞していると感じる者が7割を占める一方、回復を実感している者は2割に満たないといった実態がうかがい知れます。私ども企業人といたしましては、このようにまだまだ困難を脱し切れていない地域中小企業にあって、一日たりとも経済の空白は引き起こさないという気概をもって、事業運営に取り組んで行かなければならないと考えております。

さて、折しも、神無月の時節、八百万の神々がこぞって出雲へと出かける中にあって、恵比寿の神は、「留守神」として出雲に行かず、神々の空白となる在地の人民・家業を守る役を果たすといわれております。加えて、恵比寿は、「いざなぎ」の神と「いざなみ」の神を両親として誕生した神であるとの説もこれあり、"商売繁盛"への根拠の無い期待も生まれて参ります。

 いずれにせよ、このメッセージが皆様の目に触れる頃には、総選挙の帰趨も決しており、新しい政権の下で、我が国経済の実態に即した諸対策が講じられ、全ての国民、企業が実感できる景気の拡大が実現するよう念願する次第であります。

JFKからのメッセージ

2017年10月 1日

 直近8月の「月例経済報告」によれば、個人消費の持ち直し、企業収益の改善などを背景に、景気は、回復基調が続いており、先行きについても、雇用・所得環境の改善が続く状況の下、緩やか回復していくことが期待されております。こうした中、ミサイル発射や核実験の実施といった北朝鮮の動向が我が国経済や市場に及ぼす悪影響を懸念する声も聞こえてきます。また、一方では、北朝鮮の脅威の増大が、軍需産業の業績を伸ばすとの期待から、その株価が上昇しているとの報道もみられます。

 さて、ご案内のとおり、世界は、朝鮮半島情勢を震源とする不測の事態の出来(しゅったい)に危機感を募らせております。北朝鮮の核・ミサイルの開発を巡り、米・朝関係は緊迫の度合いを高めており、両国が武力で衝突し、最悪の場合核兵器の使用へとエスカレートすることへの危惧が真剣味を帯びて語られております。

 ここで私の世代が想起する出来事は、55年前、米・ソの冷戦構造下で起きた"キューバ危機"ではないかと思います。ソ連がキューバにミサイルを配備、これを許しがたい脅威と見た米大統領J.F.ケネディは、海上封鎖を断行、両国は、一触即発の状態から核戦争の瀬戸際まで行く事態となりました。この時は、ケネディとソ連首相のフルシチョフとの交渉の結果、ミサイルの配備は断念され、核戦争は回避されました。

 キューバ危機の翌年、ケネディ大統領は、ワシントンの大学で、『平和への戦略』と題し、冷戦下の当時におけるだけの平和ではなく、「あらゆる時代における平和」であるという意味での「真の平和」について演説をしました。

 彼は、この演説で、核の時代には究極的に人類が壊滅する全面戦争は無意味であり、であればこそ、「相手国に屈辱的な退却か核戦争かの二者択一を強いるような対決は避けなければならない」と主張します。「我々を結び付ける最も根本的な絆は、小さな地球上で共に生きているという事実である」。だからこそ、「関係者全員の利益にかなう具体的な行動と有効な合意による平和づくりに力を注ごうではないか」と説き、重ねて、「歴史は、国同士の対立も永遠には続かないことを教えてくれているので、たゆまず努力を続けよう」と人々を鼓舞します。そして、「我々は、全滅への戦略ではなく、平和への戦略に向かって努力を続けるのだ」とそのスピーチを締めくくります。ケネディは、この演説から半年を待たずして凶弾に倒れましたが、この演説で示された彼の世界平和に対する情熱と信念には、今、強く私どもの心に訴え掛けてくるものがあります。

 私どもは、核戦争は絶対に起こしてはならないものであることを肝に銘じ、いつの日かケネディのメッセージを実現できるように、国境を越えて知恵を出し合い、行動していかなければならないと思う次第であります。

賑わいのターニングポイント

2017年09月 1日

今、犬山の城下町は、大変多くの人で賑わっております。今回は、この城下町を中心としたまちづくりの片りんに触れてみたいと思います。

 思い起こせば、昭和63年6月、犬山駅東にイトーヨーカドーが開店し、その商業施設には城下町地区の多くの商店がテナントとして出店をしました。この折、当時の大店舗法による大型ショッピングセンターへの出店に伴う現店閉鎖措置として、それぞれが路面店を閉めたため、城下町は、シャッター通りとなり、その賑わいを無くしていきました。

 このヨーカドーの出店を一つの契機に城下町の保存に向けた運動が高まりをみせ、平成17年3月、都市計画路線として城下町の本町通りの道路を拡張する計画が廃止されたことは、こうした動きを象徴する出来事として記憶されております。この都市計画道路の見直しは、本町通りの道幅、家並みをそのまま現在に遺すことになり、今更ながら一つの英断だったと思っております。その後、平成21年3月に電線、電柱の地中化、道路の美装化が完成し、城下町は、江戸時代の風景にタイムスリップしました。その時が、城下町の賑わいのターニングポイントであったと考えております。

 こうしたインフラの整備と並行して、城下町地区では、賑わいを創出するための施設整備が進められました。平成12年から14年にかけては、「どんでん館」、「しみんてい」、「余遊亭」がまちづくりの拠点施設として開設されました。同15年には、本町と新町の角に「なつかし屋」が開店し、17年には、「旧礒部邸」が整備され、一般に開放されました。また、18年7月には、「愛知北FM放送」が開局し、まちの放送局として犬山の情報発信拠点の役割を担うこととなりました。また、24年4月には、中本町に飲食店等17の店舗を擁する「昭和横丁」がオープンし、城下町地区におけるグルメ施設不足の解消に一役買いました。加えて、犬山まちづくり株式会社が推進する「空き家空き店舗事業」により、12の店舗が開店し、現在に至っております。

 賑わいは、ハード施設面における整備のみでは十分とは言えません。ウォルト・ディズニーは、「ディズニーランドを造っただけでは集客はできない」、「そこには、常に多彩なイベントを考案しなければ、リピーターはない」と言いました。犬山城下町において、6月の日南焼酎まつり、9月のビールまつり、12月のドイツワインまつり、1月のどぶろくまつり、というように間断のないイベントを企画・実施している所以であります。

 ご案内のとおり、ヨーカドーは、29年間の営業に幕を下ろし本年2月をもって閉店し、4月、そのあとを受け、ヨシヅヤが開店をいたしました。今この時を更なるターニングポイントとし、一層の賑わいを呼び込むべく知恵を絞って行かなければならないと考える次第であります。

法人税がバロメーター

2017年08月 1日

本年度も、はや第1四半期が過ぎました。日本経済を見ますと、株価の上昇などを受け個人の消費マインドは改善しており、輸出もこのところ陰りがみられるものの、IT関連の世界的需要に支えられて今後堅調に推移すると見込まれ、景気は、先行きも緩やかに回復基調をたどるものと思われます。

一方、直近の日商LOBO調査の結果は、中小企業においては経営マインドが依然として弱く、その多くが業績改善を実感できていない状況にあることを示しております。

こうした中、先日、愛知県の昨年度の法人事業税及び法人県民税が前年度に比べ10%の増収見込みとなった旨の報道がありました。ご案内のとおり、法人税収入は、景気の動向を跡づける意味をもつ指標の一つであり、これが増えることは、その期の企業業績が好調であったことを示しております。円安を背景とした輸出企業の好業績を反映した今般の愛知県の税収増は、自動車を中心とした輸出企業の動向に大きく左右されるその税収構造によるものであり、一概に県内企業全体の好調さを表しているものではないと考えております。

 さて、ここで、法人税収入を意図的に減らすことによる経済効果に思いが至ります。アベノミクスの経済活性化策の一環として平成27年度から着手された法人税改革により、現在、法人税率は、23.4%、国・地方の法人実効税率は、29.97%に引き下げられました。法人税率の引き下げについては、賛否両論あるところですが、喧伝されているように、企業競争力の強化、産業の空洞化の防止、設備投資の活発化、賃金の上昇など労働者への投資拡大、海外企業の対日投資の拡大といったメリットが期待でき、中長期的観点からは、日本経済の成長にとってプラスになるものと理解しております。

 現時点における約30%の我が国の法人実効税率は、先進7か国(G7)の中ではちょうど真ん中で、米、仏、独に次ぐ高さとなっております。法人税率は、企業の国際競争力を決定する要因の1つともなるため、ここ数年の間、各国間において引き下げ競争(「税の競争」)が生起しております。とりわけ、米国は、トランプ大統領が選挙公約である法人税改革に力を入れており、連邦法人税率を35%から15%へと大幅に引き下げる案を公表したところであります。米国の改革案には、我が国企業への影響が大きい法人税の国境調整の導入は盛り込まれていませんが、引き続きその動向には注視していく必要があると思います。

 いずれにいたしましても、我が国の法人税減税については、課税ベースの拡大など代替税源を確保しつつ、魅力的な事業環境づくりの起爆剤となることが期待されるところであります。

共に努力する仲間を募る

2017年07月 1日

毎年この時期に犬山商工会議所が実施しております「会員増強キャンペーン」をご存知でしょうか。

地域商工業者の大宗を占める小規模事業者に対する支援の大切さが叫ばれる中、その中心的な役割を担うべき当商工会議所ですが、廃業、脱会による会員数減少への対応が恒常的な課題となっております。また、直近28年度予算を例に引けば、当初見込んだ財政調整資金の取り崩しこそ免れたものの次期への繰越金は大きく縮小するなど、会議所財政の逼迫感が強まっております。「会員増強キャンペーン」は、当会議所を取り巻くこうした厳しい環境を背景に、会員を増やすことにより、会議所組織を維持・拡大・活性化し、人材面、財政面における運営基盤を強化することを目的に、市内を5つのブロックに分け、ブロックごとに編成されたチームが、新規会員の開拓や各種共済等への加入勧誘を推進するものであり、会頭の私を筆頭に、会議所組織を挙げて取り組む重要な活動の一つであります。

 フランスの実業家・政治家であったジャン・モネは、こう述べております。 「何事も個人無しには始まらない。しかし、組織無しには継続しない」と。何であれコトを為すには組織化(制度化)が重要であることを指摘するこの言葉は、そのまま、商工会議所の在り方にも通ずるように思われます。その時その人における考え・行動も、これを組織として取り組むことにより、人から人へと空間的・時間的に確実に引き継がれ、永続的で確固たるものになるということであります。「欧州統合の父」と呼ばれ、自らが構想した欧州連合の実現に奔走し、苦労を重ねた彼ならではの経験から発せられた非常に説得力のある言葉であります。ちなみに、ユーロ危機、域内格差の拡大、移民・難民の増加等多くの難題を抱え、ついには英国が離脱を決定するなど、崩壊の危機にあるとすらささやかれる現在のEUの姿を見るにつけ、「欧州は危機を通じて形成され、危機に対する解決策の積み重ねとして構築されていく」と言い切る彼の信念には、感服する外はありません。   

 ジャン・モネは、その回想録で、共通の目的を立て、共通の努力をする仕組みとしての組織の重要性について、言葉を変え繰り返し語っております。犬山商工会議所におきましても、キャンペーンが成果を上げ、その結果として会議所組織が強化されることを通じ、モネの考えの妥当性を実証できればと思う次第であります。

 ともあれ、会員の皆様には、共に努力する新しい仲間の発見にご協力をお願いする次第であります。

良識の花を咲かそう

2017年06月 1日

昨今は、国際版の"選挙の季節"真っ直中の感があります。近くは、衆目を集めたフランスと韓国の大統領選挙で、既に帰趨も決し、その具体的な政策展開が注目されるところですし、この1年間でも、フィリピンのドゥテルテ大統領の誕生、英国のEU離脱決定、米国のトランプ大統領の登場など記憶に新しい選挙が目白押しにありました。今後も、ドイツ、イタリア等で総選挙が予定されております。ご案内のとおり、このところの選挙におきましては、国民大衆の生の心情で国政の重要方針が極端な場合180度転換する事態が散見されます。その最たるものが過度の自国優先主義であり、その政策としての保護主義的貿易や移民排斥等の実施であります。

こうした政治の動きの背景として喧伝されるのがポピュリズムの台頭であります。「投票は銃弾よりも強い」というリンカーンの言葉がありますが、国民大衆の声に支えられた政治は、時に強力なものとなります。しかし、かつての軍国日本やナチス・ドイツを例に引くまでもなく、イソップ寓話の「蛙の王様」(※)で蛙たちを見舞った運命に陥ることは絶対に避けなければなりません。ここで、思い出されるのが、松下幸之助の「民主主義の国家として一番大事なものはやはりその民主主義を支えてゆくにふさわしい良識が国民に養われていることでしょう。国民の良識の高まりという裏付けがあってはじめて、民主主義は花を咲かせるのです。」という言葉であります。幸之助翁は、折に触れ、政治活動、経済活動における良識の重要性を説いておりますが、この良識、一朝一夕に身に付くものでもありません。良識の意味は、広辞苑的に言えば、偏りのない適切で健全な考え方と簡単に表されますが、これをどのように養っていくかはなかなか難しく、われわれ一人一人が取り組むべき一生涯の課題ではないかと思っております。

少々教訓的で重い話になりましたが、今回のメッセージは、商工会議所会頭として、国際的な視野に立って国の安全・安心を保つためにはどうしたら良いかを考え、世界の政治情勢に思いを馳せざるを得ない"季節"のなせるわざと、ご理解いただければと存じます。

 

※ 「蛙の王様」の寓話

池に棲む蛙たちが王を欲しいとゼウスに願い出た。ゼウスは、"丸太"を王として池に投げ入れた。動かない王に不満な蛙たちは、王の取り換えを要求した。そこで、ゼウスは、"水蛇"を池に投げ入れた。今度の王は、蛙たちを残らず食べてしまった。

「観光立市」? 犬山

2017年05月 1日

ユネスコ無形文化遺産となって初めて開催された犬山祭は、天候にも恵まれ多くの人出でにぎわい、盛況のうちに終了しました。犬山とその文化伝統に対する人々の関心の高まりの表れであり、市民として、また国民として子子孫孫にわたって引き継いで行かなければならないとの使命感を新たにしております。

犬山は観光資源が持つポテンシャルを活かして地方創生を実現する余地が極めて大きいことは、繰り返し述べているところであります。今回は、『新・観光立国論』を著したデービッド・アトキンソン氏による我が国の観光産業振興についての提言を踏まえて、"観光立市"犬山を考えてみました。

同氏の提言は、インバウンド観光に焦点を当てたものですが、犬山の観光を論ずる際にも一つの視点を与えてくれるものと評価しております。彼は、観光立国に必要な条件として「天候」、「自然」、「文化」、「食事」の4つを掲げ、日本はこの条件を全て備えているがそのポテンシャルが発揮されていないがために観光で立国できずにいると指摘するとともに、いわゆる「おもてなし」については、観光の動機にはならない(わざわざ高い金を払って「おもてなし」を体験しに来訪はしない)と斬って捨てます。その上で、観光立国を実現するためのポイントとして、観光客が何を求めて来訪するのかその声を真摯に聞き、そのニーズに応じて観光資源を提供することの必要性と、観光収入(稼ぎ)を意識することの重要性を説いています。

 さて、アトキンソンの観光立国論に即して犬山の観光ポテンシャルを見てみますと、天候面では特段の問題は無く、自然及び文化面での優位性は非常に高いものの、食事面では観光客にアピールする点が弱いといえます。犬山を観光で立つ市とするためには、ポテンシャルの強化とその有効活用が必要であり、この場合、観光客は出身国(地)、年齢、裕福度等によって求めるものが異なるという前提に立って提供する観光資源の内容、対価等を決定するといった、観光客の視線に沿った対応を工夫することが重要です。また、観光を稼ぐ産業と位置付け、景観・名勝や文化財の観光産業的利・活用に強く踏み込むことも必要ではないかと考えております。とりわけ、犬山では、魅力のある「食」の提供が十分ではなく、この面での観光資源開発が急務と言えます。こうした中、近時、インスタグラムを介し、"恋小町だんご"、"いちごソフト"に引き寄せられた若者の来訪が激増しております。集客の具体的事例の一つとして、今後の取り組みに対する示唆をくみ取ることができます。

 観光とは、「光」、すなわちその地の優れた風景、文物などを観ることがその語源(「易経」)と言われますが、観光地サイドからは、正に、地域の個性を発揮しそれ見せること、すなわちその「光」を誇り示すこととなります。と考えますと、犬山を光り輝かせる上において、観光が特別の意味を持つように思われてきます。

頑張る企業でスタート

2017年04月 1日

第838回犬山祭を皮切りに、平成29年度がスタートします。犬山商工会議所におきましても、新年度事業計画に基づき諸事業を実施する運びといたしております。 

さて、この事業計画につきまして、本年度は、新しい試みを実施いたしました。それは、事業を企画・展開する心構えとして、スローガンを掲げたということであります。事業に対する皆様のご理解の一助に資することを期して、それらを紹介させていただきます。

まず、会議所の事業理念と位置付けられるスローガンとして、「がんばる企業を応援します!」を掲げます。これは、自らの向上のため自主的な努力をする中小事業者を支援するという意であり、かつての社会政策的な保護、指導とは一線を画した姿勢を示すものであります。

この理念の下に、事業方針とも言える5つのサブ・スローガンを掲げます。1つ目は、「進取し、先駆ける商工会議所」であります。地域が抱える課題やニーズを先取りし、それらに果敢に挑戦する姿勢を持とうというものであります。この活動の一環として、国、県、市等に対し、様々な要望、政策提言を行って参ります。2つ目は、「身近でコンパクトな商工会議所」を掲げました。無駄を省いた小さな組織ながら、最新の支援情報・ネットワークを有し、どんな相談にも応じられ、身近で頼りになる商工業者の"かかりつけ医"としての当会議所の在りようを示すもので、このスローガンの下、組織力、財務基盤の強化とこれによる会員サービスの充実を図って参ることとしております。3つ目は、「連携を図り活力ある地域創造を目指そう」であります。このスローガンでは、当地域また犬山商工会議所に不足するものを他の地域、他の商工会議所などとの連携、交流で補い、犬山の活力を養おうという姿勢を標ぼうしております。これまでも、内外の多様な団体との連携、交流事業を実施しておりますが、事前に具体的な成果を計って仕組んだ連携はうまく行かないと思っております。経験的には、"連携と交流で思いもよらぬ花が咲く"という連携の妙味を実感する次第であります。4つ目は、「犬山の経営を全力応援、明日の犬山を創る」であります。現下、商工会議所の重要使命と位置付けられる、地域経済の要である小規模事業者の経営発達を図るための支援活動を念頭に置いたものであります。 最後のスローガンは、「観・農・商工連携」で犬山創生」であります。観光振興は、農・商工業など幅広い地域産業の活性化に直結することから、相互にメリットを得るため、連携と地域の一体的取り組みが必要であり、商工会議所がその中核を担うとの姿勢を示したものであります。その一つとして、観光資源面でのミッシングリンクの解消とそのネットワーク化の試みとして、栗栖地区のつり橋構想の実現を目指して参ります。

以上、平成29年度の事業を紹介いたしました。もとより、実施に困難が伴うものも有りますが、「皮切りの一灸」のことわざもあり、頑張って参る所存でおります。

皆様方のご理解、ご支援をお願いする次第であります。

※「皮切りの(ひと)()」:何事も最初は苦しいがその後は楽になる、という意味の諺。

歴史は繰り返す

2017年03月 1日

昨今、トランプ大統領の一挙手一投足に世界の耳目が集まり、その言動に一喜一憂する感があります。政権発足直後、TPPからの撤退、オバマケアの撤廃など矢継ぎ早な政策変更が行われましたが、とりわけ、移民・難民政策としてのメキシコとの国境沿いの壁建設や中東7か国からの入国制限令は、トランプ政策の真骨頂を発揮したもので、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を呼び起こしております。

 "人種のるつぼ"とはアメリカ合衆国を象徴する言葉として有名ですが、2400万人とも言われる外国人労働者がアメリカの経済成長力を支えていることは常々説かれているところでありますし、1000万人を超えると推計される不法移民の存在が労働力を補完し実質的にGDPの増大に寄与しているとの調査報告もあります。更には、ヤフー(台湾人)、グーグル(ロシア人)といった代表的企業の名を挙げ、移民等の外国人材が創業によるイノベーション創出の原動力になっている事実が指摘されております。反面、移民等の増加は、国内労働者への圧迫、社会保障費の増大、文化的軋轢など、政治的・経済的・社会的な問題を引き起こしており、アメリカのみならず、このためにEU離脱を決めたイギリスを始めEU諸国も程度の差はあれこの難問に直面しております。こうした中、テロ等の犯罪を防止するために外国人の入国を制限するものと説明され、署名された大統領令については、国論を二分する議論を引き起こし、現在、その是非が司法の場で争われる事態にまでなっております。

 一方、我が国においても、少子高齢化が進み、2060年には生産年齢人口が半減し、人材不足から今後の経済成長が困難になり、外国人材活用の在り方についての議論は、避けて通れないものとなっております。政府が進めている働き方改革の中で、ダイバーシティ(多様性)マネジメントを推進する一環として、外国人の受け入れ拡大が検討項目の一つに位置付けられたことは、こうした事態へ対応したものであります。今後、いろいろな視点からの議論が期待されるところであります。

さて、(くだん)の大統領令は、(いにしえ)の中国におけるエピソードを思い起こさせます。BC237年、秦王の政(後の始皇帝)は、他国人が起した反乱に恐れをなし、外国人を追放するために「逐客令(ちくかくれい)」を出します。この折、寵臣の李斯は、秦の繁栄が多くの外国人材によって支えられているという事実を指摘して政王を諌め、この命令を撤回させたというものです。周知のとおり、その後、秦は、中国全土を統一する初代王朝として歴史に名を残すに至りました。時代背景も政治状況も全く異なるものの、二つの命令の根底に流れるものに排外という類似性を見るのは私だけでしょうか。この度の出来事は、歴史は繰り返すという格言の一例として、その成り行きが注目されます。

「美しい村」犬山を創ろう

2017年02月 1日

"美しい村など はじめからあったわけではない。美しく暮らそうという村人がいて 美しい村になるのである"。柳田國男の言葉としてよく紹介される言葉であります。周知のとおり、柳田國男は、村(郷土)の良さを愛し、土地とそこに住む人との結びつきを評価した民俗学者であります。彼のこの言葉は、地方創生の合言葉の下、魅力ある地域の在り方を模索する我々にとって、単なる名言以上の意味をもっているように思われます。

 まちづくり、地域づくりを進める上でのポイントとして、柳田國男のこの言葉の引用と相まって、地元の住人が当事者意識をもって、現に地元にあるものの潜在力を探し出し、磨き、魅力のあるものにすることの重要性、有効性が提唱されております。「地元学」のすすめであります。豊かな自然風土や歴史的・文化的資源に恵まれた犬山には、地元が持つ潜在力がまだまだ多くあります。この潜在力を見出す役割を担う者こそ、その地に住みその地をよく知る人であり、こうした人たちが主体的に相互につながりをもって地元を良くしようと努力することの大切さを改めて思い起こす次第であります。

 さて、柳田國男は、その随筆集『豆の葉と太陽』所収の「美しき村」の中で、「村を美しくする計画などといふものは有り得ないので、或は良い村が自然に美しく、なって行くのでは無いかとも思はれる」、また、「村は住む人のほんの僅かな気持から、美しくもまづくもなるものだ」と記しております。彼は、美しい村とは何か、良い村とは何か、はっきりとは定義付けていませんが、私としては、「美しい村」とは外部から見て魅力のあるまち・地域、「良い村」とは住む人が心地よく暮らしやすいまち・地域ととらえると、しっくりとします。

 犬山の自然を元気にし、文化を元気にし、経済を元気にし、住みやすい犬山をつくるために犬山の内なる地元の人びとが頑張る結果として、自ずと外の人の目にも魅力があり訪れてみたくなる犬山になるのではないかと考えます。 先頃、NHKで、刀剣界最高の賞である正宗賞を受賞した刀匠河内國平氏の刀づくりが紹介されておリましたが、その中で同氏は、古来、名刀の美しさというものは美しくしようとした結果ではなく、刀として"使いやすくしたら美しくなった"ということを言っておられました。柳田國男の言う美しい村づくりに一脈相通ずるものがあり、興味深く傾聴したものでした。

 まちづくりは、一朝一夕には成し遂げられない課題であります。柳田國男は、くだんの随筆の末尾で、美しい村づくりは自分一代の間に完成しないからといって悲しむことはない。ただ大事なのは、成し遂げようとする念願を起こすことである、と述べております。これを激励の言葉と受け止め、「美しい村」犬山づくりにまい進して参りたいと思っております。

今年は"犬山・ファースト"で行こう

2017年01月 1日

  新年あけましておめでとうございます。

 旧年中は、犬山商工会議所の事業活動に対し、格別のご理解、ご協力をいただき厚く御礼を申し上げます。

 年初に当り、昨今の内外の事象をながめつつ、考えていることの一端を述べさせていただきます。

 デフレからの回復は依然道半ばながら、我が国経済は、公共投資等政府の経済対策等に支えられて緩やかに持ち直し、年を越しております。この間、イギリスのEU離脱など、諸外国の政治的出来事による影響も少なからずありました。とりわけ、アメリカ大統領選挙による影響は広範囲に及んでおり目が離せない状況にあります。

 ご案内のとおり、全世界の耳目を集めたアメリカ大統領選挙は、大方の下馬評を覆してトランプ候補が勝利し、同氏は、今月20日、第45代大統領に就任するという結果になりました。このトランプ現象が示唆する大きな問題点の一つに、経済グローバリズムに対抗してナショナリズムの流れが台頭してきたことがあげられております。「アメリカ・ファースト(米国第1主義)」の主張を掲げるトランプ大統領の誕生は、グローバル化の象徴であるTPPの先行きに暗雲を立ち込めさせ、対日経済政策等のシビア化を懸念させるなど、今年以降の我が国経済にとっての不安定要因となっております。私としては、グローバル化が如何に進展しようとも、現実の経済を動かす原動力は経済ナショナリズムであり一概にこれを悪いとは言えないが、世界経済の変化を無視した近視眼的なナショナリズム政策は、国民の長期的利益をもたらすことは無いと考えております。この視点から、今後、トランプ政権下の経済政策を注意深く見ていくことが必要であると考えております。

   さて、昨年の1月、私は、経済グローバル化の下で苦境にある地域の状況を踏まえ、地域経済づくりを標ぼうした「地方創生」へのチャレンジを表明しました。本年は、これに加え、伝統的な文化の維持・継承を通じた地域づくりを目指したいと考えております。地域に継承されている文化に意義や喜び、住民のつながりを見出し、これを核に地域のアイデンティティを強固にし、グローバル化の潮流の中で、地域の生活を維持、発展させていくことが必要だと思うからであります。折しも、昨年11月、犬山祭りが、「山・鉾・屋台行事」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。正に、絶好のチャンスであります。犬山祭りを始め、犬山の文化・伝統を再認識し、"犬山・ファースト"の意気込みをもって、グローバル化の波を乗り切って参りたいと考えております。

  本年も、皆様のご理解、ご協力を切にお願いする次第であります。

始めようではありませんか

2016年12月 1日

犬山商工会議所では、11月1日の臨時議員総会において第10期役員の選任を行い、会頭・副会頭等三役及び監事については全員が再任、常議員についても

5名の新任のほか全員が再任される形で執行機関が定まり、今後3年間、犬山市の商工業振興をけん引する体制がスタートいたしました。

 ここで、会頭3期目の就任にあたり、心機も新たにその抱負を述べさせていただきます。

 先ず、会議所本来の主要な使命である商工業の発展ですが、「頑張る企業を応援します」をスローガンに掲げ、会員事業所と職員間の連携を密にした伴走型の支援を徹底し、ご期待に応えて参る所存でおります。

 また、私は、これまで、犬山商工会議所の歴史を踏まえ、かつ、新たな出会い・機会をとらえ、内外の他地域の機関、団体との交流を進めて参りました。こうしたローカルtoローカルの交流の継続が、やがて双方の地に花を芽生えさせ、実を結ばせることを確信しております。今後も、交流には精力的に取り組んで深化させ、伝統的交流と呼べる域にまで高めて参りたいと考えております。

 犬山を元気にする起爆剤として観光の重要性を喧伝することは今更の感があります。折しも、犬山祭の車山行事のユネスコ無形文化遺産への登録が近日中に最終決定される中、今まさに、犬山の「観光力」が試されていると思っております。もとより、観光は、人とものと情報の交流を通して地域の様々な産業と関わり、経済波及効果をもたらすことができるものであります。そのためには、観光を地域社会の中心に据え、地域住民を巻き込んだ、「地域ぐるみの総合力」を発揮しなければならないと思っております。こうした観点から、観光のためだけの取り組みではなく、農・商工の中心に観光を置き、観光交流を通じた産業間の新たな連携(「農・商工・観連携」)づくりを目指して参りたいと考えております。なお、再三にわたり触れております、栗栖地区における「つり橋」設置は、現段階ではまだ個人的な構想段階を脱していませんが、こうした取り組みの一環として考えております。法規制面での問題など厚いかべがあり、実現については不確定要素が多々ありますが、地域の力を結集して進めていく所存であります。

J.F.ケネディの言葉をそのまま借りれば、これらの多くは、最初の100日間で成し遂げられるものではありません。最初の1000日間、否、今期の任期期間においても成し遂げられないかもしれません。しかし、チャレンジしようと思っております。

皆さん、一緒に始めようではありませんか。

晴れ男ここに在り!

2016年11月 1日

今年の産業振興祭も無事終了しました。当日は、心配された雨も朝方限りとなり、晴れ男を自称する私の面目もどうにか持ちこたえることができたと喜んでおります。

 国内の景気は、直近(9月)の商工会議所LOBO調査結果によれば、業況DIはマイナス27.8と前月から2.9ポイント悪化しております。この背景として、台風、豪雨の影響が大きく、食品などの製造業や小売り・サービス業における業況を押し下げる要因となったことが指摘されております。とりわけ、中小企業の景況は、個人消費の動きの鈍さや慢性的な人手不足による受注機会の減少などが足かせとなって動きが弱く、先行きも、消費の低迷や海外経済減速の長期化懸念などから、慎重な見方が続いております。念ずれば晴れるとの意気込みで、曇天模様の景気を好転させたいものです。

 さて、11月から、犬山商工会議所は、第10期の執行体制がスタートします。これを機に、これまで当会議所の事業運営を担ってこられた議員、役員の皆様及びこれを支えていただいた会員各位に対し、深く感謝の意を表したいと存じます。

新体制における基本的な事業運営方針などについては、別の機会にさせていただきますが、現在、"がんばる企業を応援します"の標語の下、29年度に取り組む重点事業についての検討を進めております。この重点の一つとして、犬山市における中小企業振興条例(仮称)の制定促進を掲げることとしております。近時、「中小企業基本法」や「小規模企業振興基本法」において、中小・小規模企業支援における地方自治体の役割が、従来の「国に準ずる」といった従属的なものから、主体的、能動的なものへと引き上げられたことからも分かるように、地域経済・社会を維持・発展させる上で中小・小規模企業の果たす役割が重要であることに鑑みれば、中小企業の現場に最も近い市町村の中小企業振興への取り組みを強化しなければならないことは必然の流れと言えます。

こうした中、当会議所は、9月末に、市長及び市議会議長に対し、犬山市中小企業振興条例(仮称)の制定についての要望書を提出したところであります。 本条例については、市長もその重要性を認識され、必要なプロセスを経て可能な限り早期に制定したいとの意向であり、当会議所としては、関係機関、団体と連携し、その制定に向けた取り組みに力を入れていくこととしております。

 これを一例として、"進取し、先駆ける"商工会議所として、地域中小・小規模企業をおおう暗雲を少しでも晴らすため、がんばる所存でおります。

つり橋で良縁を!

2016年10月 1日

本年も、はや10月、出雲では、八百万(やおよろず)の神々が、様々な縁を結ぶための会議にいそしみ、犬山では、"つながろういぬやま 楽しもういぬやま"を合言葉に、産業振興祭の開催に汗を流す時期となりました。

 この'結ぶ'、'つなげる'という言葉に関しては、現在、私の頭の中に大きな構想として、'つり橋'があります。これまでにも折に触れ述べたところですが、木曽川を挟んだ犬山栗栖地区と各務原鵜沼宝積寺町地区を歩行専用のつり橋でつなごうという計画であります。架橋地点は、桃太郎公園北の箇所と川上貞奴別荘(萬松園)のあるあたりが最適ではないかと考えております。ちなみに、川上貞奴と言えば、福沢諭吉の養子の福沢桃介と深い縁で結ばれたことは申し上げるまでもありませんが、電力王といわれた桃介は、95年ほど前、長野県南木曽町の木曽川につり橋を架けたことでも有名であります。桃介橋と呼ばれるこのつり橋は、木曽川の景観に配慮し、渓谷に文化の香りを漂わせ、大正ロマンを偲ばせる橋として、国の重要文化財にも指定されております。

 何とも言えぬ縁のようなものも感じますが、私が構想するつり橋の名称はさておき、この橋が、木曽川の自然環境や景観、犬山城、桃太郎神社、萬松園、貞照寺、猿啄城(さるばみじょう)といった歴史的・文化的資源と並び、かつ、これらを相互に結びつける当該地における新しい名所として、犬山及び各務原の観光振興等に寄与するものと確信しております。この橋の恋愛面における「つり橋効果」についてはともかく、経済面における効果には大きな期待が持てると考えております。

※(「つり橋効果」:つり橋上で出会った男女が恐怖に起因する緊張からくるドキドキ感を恋愛感情と取り違える心理効果。(言わば、縁結びの効果))

 こうした中、本つり橋については、当該地区が自然公園法や文化財保護法に基づき「国定公園特別地域」や「名勝」の指定を受け、その設置が規制されており、これをクリアすることが最も大きな課題となっております。このため、11月22日に開催される愛知県連会頭会議の場などを通じ、愛知県知事等に対し設置の許可等の措置を要望する所存でおります。

また、今後、つり橋構想の実現に向け、犬山、各務原の該当地区の住民の皆様はじめ、市、商工会議所、観光協会等から成る協議組織を設け、諸課題の検討に着手したいと考えているところであります。

 つきましては、このつり橋構想に対するご理解、ご支援等をお願いする次第であります。

GMSの凋落

2016年09月 1日

最近の流通業界は大変厳しい状況の中にあると思います。とりわけGMS(総合スーパー)は苦戦を強いられています。国内に約1850店舗あるGMSに大量閉店の波が押し寄せています。イトーヨーカドーは2020年2月までに40店舗、ユニーグループでも最大50店舗を閉店する方針を固めました。

 GMSは構造不況と言われて20年経ちます。構造不況とは不況の原因が景気循環によるものではなく、産業構造、需要構造、経済環境などの構造変動にあるとされている不況です。大手GMSのトップは口を揃えて「社会の変化に対応しきれなかった」と言っています。

そもそもGMSは「食品で集客して衣料品で稼ぐ」構造です。かつてのダイエーの中内功会長は「徹底して食品の安売りをして集客する、あなた方専門店はその集客したお客様から利益を上げ多額の家賃を払って下さい」という構造です。この図式が近年大きく崩れてきました。これはユニクロやしまむらなどの専門店が台頭してきたことにあります。そしてコンビニの盛況です。そしてアマゾンや楽天などのインターネット購入へシフトしているからです。ネットでの大量一括比較、そして検索型のショッピングが効率的になっているのです。

また立体駐車場からの距離を考えると、野菜や総菜などの日々の購買なら中小規模のスーパーで済ませるケースが多いと思います。逆に贈答品などの高級品は百貨店か専門店で購入します。つまりGMSはあらゆる業態に消費者を奪われているのです。

 日本の小売業態はここ20年ほどの間に大変貌を遂げてしまったのです。それは「大から小へ、さらに無店舗(ネット)へ」という大きな流れなのです。この流れを打破するにはどうしたら良いのでしょうか。手間をかけ、地域の事情に応じた店づくりをする、地域密着型の経営が求められるのです。

イトーヨーカドー犬山店も来年2月に撤退の予定です。撤退後の入居事業者を早急に決定しなければなりません。犬山商工会議所といたしましても全精力をもってこれに当らねばなりません。未来永劫に市民の皆様への利便性を提供し続けて行かなければなりません。

「会頭道」は、社会へのご奉公

2016年08月 1日

犬山も蝉の声が騒がしい時節となりました。

 直近における商工会議所LOBO調査によりますと、中小企業の業況感は、消費低迷の長期化や円高の進行、株価・為替の不安定な動きが中小企業のマインドを下押しし、一進一退の状態が続いております。また、先行きにつきましては、ほぼ横ばいの状況が見込まれる中、猛暑予測から夏物商品の需要増や消費増税再延期による消費の改善に期待する声も聞かれております。こうした中、参議院選挙も終わり、安倍首相は、アベノミクスの加速に向けて力強い経済政策を進めていくため、内閣を改造し新たな布陣作りを進める旨を表明しました。今後、早急に補正予算が編成され、新しい経済対策が実施されることを期待するところであります。

 さて、前回お話ししたように、当商工会議所では、議員、役員の任期が10月末をもって終了するため、目下、次期の議員、役員の選挙、選任に向けた準備、調整を進めております。これを受け7月の常議員会において、私は、現議員・役員の皆様にはそのまま続投していただくようお願いをするとともに、3期目となる会頭職を引き受ける意向がある旨、表明をいたしました。

ここで、改めて、犬山商工会議所の役員についてご説明したいと存じます。先ず、会頭ですが、商工会議所の唯一の代表機関、かつ最高執行機関であり、商工会議所の最高意思決定機関である議員総会において選任されます。副会頭(3名)は、会頭の補佐機関として、議員総会の同意を得て会頭が選任し、会頭に事故がある場合や欠けた場合には会頭の職務を行います。常議員(33名)は、議員総会において議員の中から選任され、常議員会を構成し、重要な事項を議決する意思決定機関ですが、同時に、会頭から特定事項の委任がなされた場合には執行機関の性格をも併せ持つものです。これ以外の役員として、現行の定款上、専務理事と監事(3名)が置かれております。ちなみに、会頭職を強いて国政レベルの執行機関に例えますと、選出方法から見ると、議員内閣制における内閣総理大臣に類似しますが、内閣と異なり法的には副会頭等との合議を必要としない職務執行方法から見れば、強いリーダーシップを発揮する米国型大統領に近いとも言えます。  

 55年前、ジョン・F・ケネディが、米国第35代大統領に就任する際に語った「国があなたのために何をなし得るかを問い給うな、あなたが国のために何をなし得るかを問い給え」という言葉に共感し、私としては、私なりに犬山商工会議所のために何をなし得るのか、また、何をなさねばならないのかを常に自問しつつ、会頭の職務に取り組んで参りたいと思っております。

 以上、蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)との嘲笑を恐れず、思うところを述べさせていただきました。

たかが選挙、されど選挙

2016年07月 1日

  犬山も水無月を迎え、木曽川うかいが開幕します。これから10月半ばまで、犬山城を背景に鵜の競演がくり広げられ、多くの観光客の目を楽しませることと喜んでおります。

 本年は、国内外における選挙が注目される(された)年であります。中華民国総統選挙、フィリピンやペルーの大統領選挙、とりわけ、次期米国大統領の選挙は、我が国の政治、経済に少なからぬ影響を及ぼす性質のものとして、11月の決着までその動向には鵜の目鷹の目の視線が注がれることと思います。国内では、申し上げるまでもなく参議院選挙があります。結果次第では国の基本政策に大きな変更をもたらす可能性があり、また、選挙権年齢を18歳以上に引き下げた最初の選挙でもあることから、その重要性は論をまちません。 7月10日の投票日に向け、戦いは、気温とともに熱くなることが予想されます。

 さて、本年は、もう一つ重要な選挙があります。来る10月31日に3年間の任期が満了することに伴って実施される、犬山商工会議所の議員の選挙であります。正確には、議員定数100名のうち半数50名の議員(1号議員)を会員全体の代表として会員の中から投票で選出するものであります。ちなみに、35名の議員(2号議員)は、業界の代表として各部会が選任し、15名(3号議員)は、重要かつ総合的な代表として会頭が選任することとなっております。また、議員の選出と同時に、議員総会において会頭を始めとした役員が選任される運びとなっております。なお、商工会議所の役員・議員任期は、全国ベースでの申し合わせに基づき、統一(11月1日から3年間)されており、当会議所では、今期の議員選挙の投票日を10月21日に予定しております。

 商工会議所は、商工会議所法に基づく特別認可法人として、「地域内の商工業の総合的な改善発達を図り、兼ねて社会一般の福祉の増進に資する」という社会的使命を担っております。また、近時、地域経済の担いとしての中小・小規模事業者の重要性が改めて認識され、その持続的発展を支援する機関として商工会議所にはこれまで以上に大きな期待が掛けられております。

 ここで思い起こされるのが「ノーブレス・オブリージュ」という言葉であります。本来は、貴族など高い地位や身分にはそれに伴う重い責任、義務があるという考え方ですが、そうした振る舞いは、賞賛、信頼に値すると評価されるものであります。武士道にも一脈通じるところがありますが、選ばれたものにはそれに応じた社会的責任・貢献が期待されるという意味において、今回の選挙に当り、あえて皆様には、このノーブレス・オブリージュという崇高な精神を是とし、且つこれを体現すべく、役員、議員に就いて頂き、全会員及び地域社会の振興・発展に力をお貸し頂きたいと存ずる次第であります。

国と会議所、2つのG7

2016年06月 1日

ゴールデンウィークも終わり、本年度も本格的に事業に取り組む時期となりました。

日本経済の現況は、年明け以降の円高、株安の進行に伴い、円安に支えられたこれまでの景気回復にも陰りがみられるように思われます。政府の直近の調査においても、東海地方の景気は、小売り、飲食、サービス等の消費需要を中心に弱い動きが続き、4月の熊本地震の影響で企業動向等も悪化しており、先行きについても、中国経済等の減速、円高の推移、来4月の消費税の再引き上げといった不安材料を払拭できないことが指摘されております。また、核開発で揺れる朝鮮半島情勢の緊迫化など、我が国に身近な国際問題も累増しております。

このように我が国の政治、経済を取り巻く内外の諸環境が厳しさを増す中、

5月26日、27日の両日、三重県賢島において先進国首脳会議が開催されます。会議では、新興国経済の減速、貿易の減退等により不透明性を増している世界経済の脆弱性の克服が最大のテーマとされており、また、オバマ米大統領が、会議への出席を機に広島の原爆記念施設を訪問することが決まるなど、  このたびのサミット開催については、非常に喜ばしく大いに歓迎するところであります。G7伊勢志摩サミットが、我が国を始め世界の経済の下振れリスクの回避と核戦争の無い平和な国際社会を実現する上において少なからぬ効果を挙げることを期待する次第であります。

 さて、現下、犬山商工会議所にあっては、会員に喜ばれ、歓迎される事業をどのように展開していくかが大きな課題の一つとなっております。本年度は、

"小規模事業者の持続的発展"をキーワードに、事業者の実態、ニーズに応じた支援を行うことにしております。こうした取り組みの基になるものとして策定した『経営発達支援計画』が、今般、経済産業大臣の認定を受けることができました。この計画は、主に「経済動向調査」から「地域経済の活性化」まで、7項目の目標(Goal)から成っております。今後、当会議所は、市、金融機関などの関係支援機関との連携を密にし、支援の中核的な役割を担う形で、目標の達成に向けて小規模事業者に対する伴走型支援を実施し、1名の脱落者も出さない会議所を目指して参る所存でおります。

 折しも、本年は、10月に役員、議員の改選が予定されております。引き続き、役員の皆様を始め、議員の皆様、会員の皆様の変わらぬご支援・ご協力をお願いする次第であります。

宇宙から学ぶ

2016年05月 1日

4月、犬山祭りを皮切りとして、28年度がスタートしました。

年明け以降の円高、株安を引きずっての新年度入りとなりました。4月1日に発表された日銀短観によれば、製造業、非製造業を問わず、大企業、中小企業ともに景況感は悪化しており、先行きについても、消費マインドの低迷や中国を始めとする海外経済の減速といった不安材料が払拭されず、不透明感が増しております。なお、こうした状況下、私としては、来年4月に予定されている消費税の再引き上げについては、先送りすることが望ましいと考えております。

ここで、去る3月17日に開催された第123回本商工会議所会員総会における宇宙飛行士 毛利衛さんの講演(「宇宙から学ぶ~我々は何故挑戦し続けるのか~」)の一端を紹介したいと存じます。毛利さんは、二度にわたる宇宙飛行の体験から、「ユニバソジロ」という、宇宙と生命の本質に関する独自の見方・考え方を提唱されております。この中で、46億年前に誕生した地球において約40億年前に発生した有機体が紆余曲折を経て現在の人類にまで進化し得たのは、個々の生命体の環境への挑戦の結果であり、個が挑戦し、その成功体験を他の個と情報交換(つながり)し、全体としての能力を高め、繁栄するという「生命のつながり」の重要さを力説されておりました。また、これからの私たちは、現在の地球的諸問題を前に、個人から人類、人類から地球生命へと視点を移し、つながりを考えることの必要性を説くなど、講演の内容は、示唆に富むものでした。

さて、犬山商工会議所におきましては、先月もお話ししたように、財務状況が厳しさを増す中にあって、中小・小規模事業者から求められる支援が質的・量的に拡大するなど、その社会的環境は少なからず変化しております。こうした変化を正しくとらえ、これにうまく適応していくことが喫緊の課題となっており、この取り組みの一環として、4月1日付けで職員の人事異動を実施いたしました。毛利さんのお話しに即して言えば、まずは、個々の職員が新しい環境に挑戦し、これによって得たノウハウ等を共有し、会議所全体の支援力を強化することにつなげられればと考えております。

折しも、犬山市において、地方創生に向けた「総合戦略」(「いいね!いぬやま総合戦略」)が策定されました。この「総合戦略」では、人口の減少と経済・財政規模の縮小が進む現状を打破し、活力ある犬山の維持を目指すため、基本目標を設定し、諸事業を実施して行くことが計画されております。当会議所といたしましても、地方創生を重点活動対象と位置付け、犬山市、金融機関等とのつながりを強固にし、積極的に取り組むこととしております。

皆様のご支援ご協力をお願いする次第であります。

出ずるを量りて入るを為す

2016年04月 1日

国会では、28年度の予算案審議が進められておりますが、我が犬山商工会議所におきましても、新年度の事業計画と予算を策定する時期となりました。

 今回は、その策定状況を踏まえ、28年度における当会議所の事業運営に対する姿勢について、思うところの一端を述べさせていただきます。

 近時、商工会議所に対し地方創生や小規模事業者支援に係る事業への取り組みの強化が求められる中、当商工会議所にあっては、財務面において収入が頭打ちであることに加え事業費や人件費がかさみ、収支予算が逼迫化する傾向にあります。しかし、地域「商工業の改善発達と社会福祉の増進に寄与する」使命を有する商工会議所としては、為さなければならないことは為さなければなりません。ただ単に、「入るを量りて出ずるを為す」とうそぶいて済ましている訳には参りません。詰まるところ、こうした状況の下で行き着く対応策としては、入るを増やし、不要な出ずるを減らすことの他はありません。

 会議所の「入るを増やす」方法は、新規会員を獲得し会費収入を増やすことであり、あるいは共済事業等への加入者を獲得し手数料収入を増やすことであります。また、県、市からの補助の拡大も必要ですが、昨今の財政事情から実現は容易ではありません。一方、「出ずるを減らす」方法は、先ずは、経費の削減であります。これまでも、人件費の抑制措置、各種事務経費の圧縮などに取り組んできておりますが、更に踏み込んだ取り組みが必要であると考えております。

 こうした中、28年度、当商工会議所は、「経営発達支援計画」(現在、国の認定を申請中)に基づき、地域小規模事業者に対する各種支援に全力を投球することとしております。これらの支援事業に係る具体的な業務は、量的にも質的にも多大なものとなることが予想され、その効率的な実施体制づくりが急務となっております。とりわけ、現下の財務状況に鑑みれば、職員は、事業コストを意識した業務の遂行に努め、会議所の労働生産性を高めていくことが求められております。

 以上のように、犬山商工会議所としては、小規模事業者の持続的発展を図るため、自らの持続的発展にも力を入れていかなければならないことを自覚し、今後、役職員が一体となって会員の増強や共済事業等の普及に向けたキャンペーンに取り組み財源を確保するとともに、職員各人の支援能力を向上させ、かつ、これを共有化することにより、組織として高い水準の支援力を発揮する体制の整備に努めて参る所存でおります。

 皆様のご理解、ご支援をお願いする次第であります。

つり橋にかける犬山の創生

2016年03月 1日

我が国経済は、緩やかな回復基調にあるものの、中国を始とした新興国経済の減速、株安、円高など景気の下振れリスクへの注意も必要な状況になっております。こうした中、地域中小企業の業況の厳しさは、依然として解消されるには至っておりません。

さて、ご案内のとおり、現在、犬山市においては、本年度末の完成を目指して「犬山市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の検討が進められております。こうした地方創生に向けた取り組みの一環として、先頃、犬山市、犬山商工会議所及び犬山市内の金融機関の三者間において、地方創生に係る連携・協力体制を構築するための協定が締結されました。その締結式における挨拶の中で、私は、ある新聞記事の一つを紹介いたしました。それは、「つり橋支店長、駆ける」という、当日の日経朝刊に掲載されたものでありました。これは、静岡県三島市の歩行者つり橋「三島スカイウォーク」の誕生にまつわるもので、観光資源は多いものの待ちの姿勢が染みついた地元関係者が多い中、日本一のつり橋を作るという意気込みの下、銀行上層部を説得するなど実現に駆け回り、ついにこれを実現させ「つり橋支店長」の異名をとった、当時静岡銀行三島支店長の大橋弘氏についての記事であります。この記事について、金融機関の地域づくりへの協力を切に期待する意味でお話をした次第であります。

実を申しますと、当地犬山におきましても、この"つり橋"構想は存在しております。平成9年、当会議所が高橋会頭の下で「犬山市の将来像」を描いていた折、その担当委員長であった私は、栗栖と坂祝間の木曽川に"つり橋"を架けることを提案いたしました。しかし、当時は地元の皆さんのご理解が得られないなどのこともあり、断念せざるを得ませんでした。

その後、当地を取り巻く環境も大きく変わり、とりわけ栗栖地区のにぎわいの喪失には心を痛めておりますが、自然環境は、当時のまま残っております。近年、インバウンドを含め増加を続ける観光客を視野に、栗栖と坂祝をつり橋で結び、橋上からの木曽川の眺め、猿ばみ城への周遊路といった新たな観光資源を手に入れることは、観光立市犬山にとって、地方創生の大きな目玉の一つになるものと考えております。先の「犬山市まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、重視する視点の一つとして、「体験」と「人の交流」をテーマに、「あたらしい観光の魅力の発掘」が掲げられていることは、正にこの思いを示しているものと解釈しております。

私といたしましては、今後、機会を見つつ、つり橋の実現に向け、地元の方々の理解、国等に対する働きかけ、金融機関の協力を始めとした民力の結集等に駆け回る所存でおります。皆様のご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。

城下町の復興

2016年02月 1日

お正月の1月はあっと言う間に過ぎ去ると言う実感が2月号の会頭Messageを執筆するに当りひしひしと思われました。

新年から株の下落が続きました。又原油価格の下落が重り、中国経済の鈍化、そしてサウジアラビアとイランとの関係が悪化しました。

北朝鮮の水爆実験が行われ、大きく世界が動いています。グローバルな経済の背景を把握して分析していなければなりません。どこか第2次世界大戦が起きる前の時代に似た所が散見出来ます。

さて、1月11日で城下町の火災から1年が経過しました。一刻も早く城下町の復興を実行に移して行かなければなりません。お城と共に城下町が現存する市町は全国でも犬山のほかほとんどありません。この貴重な城下町を後世に贈って行く覚悟が必要です。

戦後全国に都市計画路線が引かれ全国の市町そして城下町にも引かれ道路の拡巾が行われました。その結果車道と歩道が整備されましたが城下町は無くなってしまいました。

幸い元犬山市長の石田さんの骨折りで、犬山の城下町の都市計画路線を廃止することが出来ました。これも全国で一例か二例のことです。そのお蔭で江戸時代の道巾が現在まで残すことが出来ました。

犬山の城下町が人の住む全国唯一の博物館として、明治村が人の住まない博物館として犬山に大きな観光資源となりうる可能性を持っています。世界に誇る犬山城下町の復興に犬山商工会議所も全力投球で臨む覚悟です。

皆様方のご支援を心よりお願い申し上げます。

もはや「地方創生」しかない!

2016年01月 1日

明けましておめでとうございます。

平素は、犬山商工会議所の事業活動に対し格段のご理解、ご協力を頂き、厚く御礼を申し上げます。

新しい年を迎えるに当たり、この一年を振り返るとともに、思うところの一端を申し述べさせていただきます。

昨年以降、日本経済は、消費税引上げの悪影響から脱しつつ、円安、原油安といった追い風を受けて企業収益にも改善が見られ、基調とすれば緩やかな回復経路をたどり、現在に至っております。こうした中、年央ごろから中国を始とした新興国経済の減速を背景に輸出が低調に推移しており、今後、米国の金融政策と相まって新興国経済の動向が大いに気になるところであります。

さて、昨年来、我が国経済の再生を論ずるに当たり、"地方創生"が盛んに喧伝されており、私も機会があるごとにその意義を強調して参りました。

少子高齢化、グローバル化等が進む我が国において、その弊は地方において著しく、とりわけ、中小企業の大宗を占め、これまで地域経済の維持・発展を支えてきた小規模事業者は、質・量両面にいて弱体化しております。このまま手を打たずにいれば、地域経済そのものが衰退する危機に直面するといっても過言ではありません。

こうした事態を見据え、商工会議所といたしましては、本年以降、中長期的視点から、①小規模企業を育成し地域経済の自立的存続を可能とする規模(数)を確保すること(小規模事業者のマクロ・量的な発展)、②個々の小規模事業者の実態に合ったカスタムメイド型の支援を通じその経営発達を図ること(ミクロ・質的な発展)を目標に、支援事業計画を策定し、実施することとしております。地域の経済社会の維持、成長を支える原動力の役割を担う小規模事業者の持続的発展こそが「地方創生」を実現する要の一つであり、この意味で、本年を、小規模事業者づくり(支援)元年、言い換えれば、新しい地域経済づくり元年と位置付け、精力的にチャレンジをしていく所存でおります。

本年は、丙申(ひのえさる)の年に当ります。前回の丙申である1956年は、その「結語」で、我が国は、『・・・もはや戦後ではない。・・・世界技術革新の波に乗って、新しい国造りに出発すること』が必要であるとし、新たな成長に向かってのチャレンジを提唱したあの「経済白書」が出された年ですが、60年の時を経たこの巡り合わせに何らかの意味を見出したような思いでおります。

 本年も、皆様方のご支援、ご協力を切にお願い申し上げます。

「隠れたチャンピオン」の輩出を!

2015年12月 1日

 毎年10月、11月は他地域との交流事業が集中する時期であります。今年も当商工会議所を中心に参加者を募り、日南市、石垣市、韓国ハマン郡、中国襄陽市の各地を訪問し、親密な交流を重ねて参りました。とりわけ、韓国、中国については、歴史問題、領土問題を背景とした政治・外交面での我が国との軋轢が続く中、民間・経済ベースにおける友好関係の維持・増進に向けた意欲を確認し合えたことは有意義であったと思っております。折しも、11月1日、日中韓サミットが3年半ぶりにソウルで開催され、両国との関係改善も一歩一歩前に進んでいる感があります。同サミットでは、経済貿易分野における協力の一層の強化、高度化を図るとともに、日中韓FTA等の交渉加速化に向けて更なる努力を行っていく旨の合意がなされました。今後、3国間で紛争を避け、平和を指向する流れが奔流となり、相互の経済や商工業の成長・発展が推し進められて行くことを念願する次第であります。

 さて、経済のグローバル化の進展を背景に、上述の日中韓FTAやTPPといった自由貿易協定(経済連携協定(EPA))交渉が活発化しており、我が国企業を取り巻く経済環境は大きく変化することが予想されます。中小企業の海外展開の促進は、地方創生の柱の1つに位置付けられており、地方の中小企業にとってもアジアなどの海外市場に販路を求める精力的な努力が求められることになります。この意味において、2000年以降、中小企業の積極的な海外展開を通じ、EU内で「独り勝ち」の優等生となったドイツに学ぶべき点は多々あると思われます。一般に、ドイツの中小企業の強さは顧客ニーズへの徹底した対応による高付加価値化と海外の優秀な人材の活用を重視した経営戦略にありますが、また、こうした中小企業の海外展開において政府や関係機関・団体の支援事業が大きな役割を果たしてきたことも看過できないと言われております。ちなみに、ドイツ商工会議所のアンケートによれば、ドイツの企業が海外展開する際の相談先として「国内の商工会議所」を挙げる者が43%あり、海外への展開面で地元の商工会議所の存在は大きなものとなっているようであります。

 こうした中、犬山商工会議所といたしましては、現在、原産地証明書の発給業務を通じ、貿易取引の円滑な進展をサポートしておりますが、今後、日本商工会議所を始めとした関係機関・団体とのネット―ワークを強化し、FTA/EPAの利用促進に向けた取り組みを行うとともに海外販路の開拓、専門家の派遣等の諸事業を実施し、当地域の中小企業の海外展開を支援して参りたいと考えております。

こうした取り組みの中から、将来、当地域にも「隠れたチャンピオン企業」と呼ばれる優良企業が生まれることを大いに期待する次第であります。

ノーベル賞とTPPで活路を!

2015年11月 1日

10月5日、2つの朗報が飛び込んできました。1つは、2015年ノーベル生理学・医学賞の受賞者に北里大学の大村氏が選ばれたというものです。また、これには、翌6日、物理学賞が東京大学の梶田氏に授与されるとの報が重なることになりました。今年も昨年の物理学賞3名に続き2名の複数受賞となり、2000年以降における自然科学分野での受賞者総数を米国に次いで2番目に多い21名と伸ばし、この分野における我が国の基礎研究能力の高さを改めて実証する結果となりました。

ここで、近時において我が国が受賞した研究成果について、あえてキーワードを挙げるとすれば、「地方」と「中小企業」ではないかと思っております。前者は、受賞者の学び舎が神戸大(山中氏)、徳島大(中村氏)、山梨大(梶田氏)、埼玉大(大村氏)といった地方大学であり、地方の実力の一端を象徴していることがその根拠です。後者については、「青色LED」の中村氏に代表されるように、受賞者は、大学の研究者を除けば小さな企業の出身であり、また、「IPS細胞」の実用化において中小企業が先陣を切って活躍している旨が伝えられるなど、中小企業の研究能力によるところが大きいという事実がその理由です。こうした状況は、地方の中小企業者にとっては大いに心強く思われます。

もう1つの朗報は、TPP(環太平洋経済連携協定)が5年(日本参加後2年)に及ぶ交渉の結果、大筋合意に達したというものです。この先、参加12か国の署名及び批准を経て協定が発効すれば、モノ、サービス、投資などの分野において世界最大規模の自由貿易圏が誕生することになります。商工会議所としては、基本的には、「中小企業にも大きなビジネスチャンスを与えるもの」と歓迎しております。もっとも、TPPのメリットを地方の中小企業にとって実効性あるものにするためには、支援措置が必要不可欠であることは申すまでもありません。

こうした中、今回の協定には、中小企業がTPPの恩恵を受けられるように

これをサポートするための取り決めが、この種の協定では初めて、条文化されることになった点は大いに評価できます。これを受け、政府からは「中小企業のための対応本部を設置し、支援策を全国に分かりやすく発信したい」旨の表明がありましたが、より広範かつ強力なサポート体制の構築が期待されるところです。

今後、犬山商工会議所は、日本商工会議所等と連携し、TPPの普及とその利用の促進に向けた取り組みを積極的に進めて参る所存でおります。

 この2つの朗報は、現在、地方創生に向け官民を挙げた取り組みが進められている中、地方の中小企業が進むべき一つの方向を示す出来事ではないかと考える次第であります。

「民の知見」を活用しよう

2015年10月 1日

 先頃、2020年東京オリンピックの公式エンブレムの白紙撤回問題が発生しました。以来、本問題については、様々な人からいろいろな意見が出され、現在までその尾を引いております。本エンブレム問題について、誤解を恐れずにあえて私見を述べれば、今回のオンリンピックが求めるコンセプトを表わす上で優れたものならば良しとすべきであり、この意味で、優れたデザインだと見ておりました。見た目が既存のものに似ているから良くないものとレッテルを貼り、一律に切り捨てる姿勢は如何なものかと思った次第であります。

 東京オリンピックに関しては、もう1つ、主会場となる新国立競技場の建設計画が白紙撤回された問題があります。こちらの方は、デザイン及び景観破壊の問題、使用目的・用途の問題、費用の問題が浮上し、とりわけ建設費の肥大化が大きな論点となり、計画策定プロセスの不透明さと相まって、白紙化に至ったものと理解しております。もとより、これらの問題は、相互に密接に関連しており、一つだけ取り上げて云々することの愚は言うまでもないことであり、ただ単に高額だからダメといった論には賛同できません。私としては、良いもの、社会的資本・遺産として今後何十年も残るものは、ある程度金が掛かって当然といった気構えが必要であると思っております。

 さて、今般、犬山市では、新体育館が平成28年7月にオープンすることを機に、現体育館を解体する計画が表明されました。本計画の背景としては、周辺環境にそぐわない外観形状、スポーツ施設としての利用目的の終了、維持経費の負担といった、新国立競技場のケースと同じ問題点が挙げられております。

 現体育館がある地区は、イベント等が多く開催されることに加え、近時、犬山城への観光客が増える中、多くの人が集まる場所となっておりますが、物販等の面で中心となりうる施設が少ないことが指摘されております。

 こうした中、当会議所では、これらの問題点をクリアし、現体育館を有効に利・活用する在り方につき検討を重ね、外観面では、犬山城周辺環境に適合し景観を高めるような改修工事を施し、用途面では、商業、催事など地域ニーズに応えられるものとして、これを再利用する方向が建設的ではないかとの結論に至りました。そして、地方創生の一環としてこれを推進するに当たっては、民間の資金・経営ノウハウといった「民の知見」の活用が有用であると考えております。

 こうした経緯を踏まえ、かつ、人口の減少が進み都市インフラの在り方が新築から改修の時代へと変移し、ストック建物の活用が今後大きな課題となることが予想される中、犬山市に対し、現体育館の利・活用を図る観点から、これを民間に譲渡等して欲しい旨を要望することとしております。

 皆様のご理解、ご協力のほどを、よろしくお願いいたします。

「国際交流平和大国」日本

2015年09月 1日

 昭和16年12月8日の真珠湾攻撃を機に太平洋戦争が始まりました。その約2ヶ月前の10月10日に当時の犬山町中本町に私は生まれました。昭和19年の春、父に赤紙の召集令状が届きました。『俺が行かねばこの戦争は終わらない』と言って呉服屋の三代目の父は全ての在庫品を同業の他店に買って頂き、『この金で俺が帰って来るまで食べていろ。』と母に渡して出征をしたと母から聞かされていました。昭和19年の暮れに、父はフィリッピンのマニラ沖で昭和19年9月24日に戦死したと公報が届きました。祖母は必ずどこかで生きていると息子の死を受け入れませんでした。

 昭和21年の秋、同じ船の乗組員の戦友が訪ねて来られ『仏壇にお参りにまいりました。』と父の母に伝えられたが、『息子は死んではいません。仏様のお参りはお断りします。』と戦友を追い帰したことを知ったのは50才の時で母は75才でした。その戦友Sさんは『私は母親の気持ちを察することが出来ず大変失礼なことをしてしまい、その事にお詫びを申し上げに参りました。』と、Sさんは85才になられどうしても自分が死ぬ前に私の父の最後を伝えたかったと言われ訪ねて来られたのでした。それまで何もわかりませんでした。私の母は28才で未亡人となり戦後の食料難を乗り越えてきました。

 私は3才の頃、空腹のあまり碁石や炭をよく食べたと母から聞かされていました。小学校5年生の頃、昼食の弁当を学校へ持って行く事が出来ませんでした。それは我家ではシャビシャビのお粥でしたので弁当箱に詰めることが出来なかったからです。昼休みに家へ昼食に帰るのはN君と二人でした。そして再登校する時のあいさつは『めし食ったか。』でした。二人共『ああ食ったぞ。』と言いながら二人共嘘でした。水道の蛇口から腹いっぱい水を飲んだだけでした。

 終戦ではなく敗戦70年を経過した今、日本はどの様な方向に進路を取るのでしょうか。世界中の軍需費の総額は莫大な数字です。そして地球上のいたる所で紛争や内戦が続いています。その武器や弾薬そして軍需品はアメリカ、ロシア、中国製の物が多くを占めています。又、軍事演習による武器弾薬軍需品の消耗は多額の数字です。経済が軍需産業に頼らなければならない国家に向うのでしょうか。平和産業のみでは国家が成り立たないのでしょうか。農業大国、水産大国、林業大国、工業大国として世界の国々から尊敬される日本になることを強く念願致します。国際交流平和大国として世界中にお役に立てる国家を目指すべきと思います。未来永劫、戦争は決してしない国づくりを着実に実行して行かなければなりません。そして戦争の悲劇を後世に伝えて行くことが大変重要と考えます。

ふりかえれば未来

2015年08月 1日

日本と中国、韓国の間には、歴史認識を巡る対立があり、その一環として提起される領土問題等の解決がはなはだ困難なものとなっております。

 振り返って、1012年9月9日、ロシアのウラジオストックで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)において、野田首相が尖閣諸島を国有化する意向を胡錦濤国家主席に伝えたところ、同主席は、烈火のごとく怒り、猛反発、中国全土に激しい反日デモが広がった出来事は忘れることができません。

 歴史とは何でしょうか。過去に起こった「本当の事実」を記録したものというのが普通の答えではないかと思います。では、だれが「事実」であると認定するのでしょうか。英国の歴史学者E.H.カーは、「歴史とは現在と過去との対話である。」と述べております。彼によれば、「事実」とは、歴史家がその目を通して見たある過去の出来事を歴史的に重要だと評価したもの、ということになります。要するに、歴史的「事実」は一つではないということであり、だれの目から見ても、また、いつの時代においても同じという意味での「本当の事実」はないということです。現在の目を通して過去を見ざるを得ない以上、時代とともに歴史的「事実」は変化するものとも言えます。また、カーは、歴史とは、「過去の出来事と未来の目的との対話」であるとし、過去についての解釈評価は、現代の課題に沿って変化していくものであるとも述べております。すなわち、歴史は、現在の問題を解決し、未来に進むためにあるということです。

 ここで、西洋史学者であった木村尚三郎の「ふりかえれば未来」という言葉が浮かびます。過去を振り返って見つめ、そこから学ぶことにより、未来の在るべき姿が見えてくるという趣旨のこの言葉は、歴史のとらえ方において、カーのそれと一脈通じるところがあるように思われます。

こうした見方によれば、歴史認識(過去の評価解釈)は、現在の解決すべき課題、将来の進むべき方向によって変化していくものということになります。ここに歴史認識を巡る対立を解消していく上における一条の活路を見いだせるのではないかと考えるのは、私だけでしょうか。

 日、中、韓は、いずれも、より良い未来の方向を目指し、過去に向き合う必要があります。この際、歴史認識、歴史観の相対性を自覚し、極端に走らない中庸の精神が大切であると考える次第です。

 

今こそ、観光により交流人口を増やそう

2015年07月 1日

 このところ、円安・株高で、市場は大賑わいの感がありますが、6月8日内閣府から発表された、本年1-3月期の我が国GDPは、前期比1.0%増、年率換算で3.9%と大幅なプラス成長となり、消費税引き上げ以降における景気低迷からの回復を裏付けたものとなりました。一方、同じく8日に公表された、「景気ウオッチャー調査」によれば、株高資産効果や外国人観光客増加により商品等の売上げが伸びている反面、円安による原材料価格等の上昇から利益が減少しているなど、街角における円安・株高の影響は様々であるように見受けられます。

 さて、本年も、6月1日、「木曽川うかい」が開幕いたしました。夏場における犬山の観光資源の一つとして、集客力を発揮してほしいと思っております。 とりわけ、円安環境下、外国人観光客の増加には大いに期待が掛かるところであります。「爆買い」と表現されるインバウンド観光の経済効果が大きな注目を集めている今こそ、外国人に対し、「うかい」に限らず犬山独自の歴史、文化、自然の魅力を訴えて当地への来訪を促進し、地域の創生を図っていく絶好の機会であると考えております。

地方創生の切り札は、農・商工連携と観光振興であり、「農・商工・観連携」が重要であるということは本誌5月号でも触れたところであります。観光は、「人に始まり、人に終わる。」と言われております。この意味で、観光資源は、人と人との交流をもたらす拠点とも言うことができます。現在、犬山にある観光資源は、元から観光資源として作られたものではありません。これは、「うかい」が1300年前に漁業の一つとして始まったということからも理解できるところであります。このことは、観光は、観光産業に携わる一部の人のみが担えば良いというものではないことを示唆しております。「観光立市」犬山であるためには、これからは、既存の観光資源を磨くとともに、農業者が、商工業者が、あるいは両者が連携し、それぞれの得意とする分野において、持てる資源を活用して人と人との交流を活発化する取り組みを通じ、新たな観光交流資源(拠点)を作りだすことが必要であると考えております。

 現在、全国各地におきまして、地方創生のため人口減少問題の克服や成長力の確保に向けた「ビジョン」及び「総合戦略」作りが活発化しております。出産、育児支援等により'自然増'を、また、生活環境、就業環境等の整備により'社会増'を図るなど、人口減少に歯止めを掛ける取り組みの重要性は言うまでもありません。こうした中、農・商工・観が連携して観光交流資源を開発・発掘し、来訪者を増やすことにより、人口の'交流増'を図って行くことは、当地犬山であればこその資源を有効に活用する地方創生策であると確信する次第であります。

軍需産業に依存せず平和産業立国を!

2015年06月 1日

 昨年9月多くの犠牲者を出した御嶽山の噴火がまだ記憶に新しい中、4月下旬以降、今度は箱根山の火山活動が活発化しており、人々の不安感を高めております。一般に人は、不安を感じると自己を防衛する心理が働き、その結果の一つとして、財布のヒモを引き締める行動をとる傾向があると言われております。これを我が国の経済状況に敷衍して、巨大地震などの自然環境面での不安、雇用・賃金・年金といった経済面での将来への不安、戦争・紛争やテロといった国防・治安面における安全への脅威など、個人的、社会的な不安心理は、消費意欲を委縮させ、その結果として経済を冷え込ませ「消費不況」を引き起こしているという行動経済学的な説明も納得がいくものと思われます。
 さて、5月15日、かねてから侃侃諤諤の議論が交わされている安全保障関連法案が衆議院に提出されました。今後、国会において審議が尽くされ、妥当な結論に達することが期待されます。本法案が提出された背景としては、東アジアを中心としたパワーバランスの変化や国際テロの脅威の増大といった、近時における我が国を取り巻く安全保障環境の大きな変化が指摘されていることは、ご案内のとおりであります。
 一方、安保法制の整備は、こうした国防上の必要性に加え、防衛産業の振興を通じて経済産業を活性化して行こうという意図があることも無視できません。本来、技術というものは、戦闘機用のレーダー技術が自動車の衝突防止やETCシステムに活用される例、反対に、ビデオカメラ技術がミサイルに利用される例などに見られるように、軍民両用性を有するものであります。技術の持つこの性質に鑑みると、我が国の技術水準の向上と国内産業の活性化を図って行く視点から防衛技術開発を推進することの意味もあながち否定できないとも思われます。
 しかし、今日の我が国の世界に冠たる技術立国としての地位は、軍需産業抜きにして獲得したものであります。「機密」という制約がつきまとう軍需用技術には競争原理が働きにくく、産業発展の要であるイノベーションが阻害され、経済合理性からはデメリットが大きいとの指摘もなされております。
 こうした点を考え合わせると、民生用ニーズを前提に、自由な競争と開放的な研究により生み出されるイノベーションを活発化し、経済の成長を図っていくことが王道ではないかと考える次第であります。
 戦後70年の節目を迎える本年、こうした方向で安全で豊かな国を創生していくことは将来世代に対する私たちの責務であると、改めてその重さに感じ入っております。

「農・商工・観連携」で犬山創生! 

2015年05月 1日

 3月19日、日本商工会議所第121回通常会員総会に出席をいたしました。
 ここで、その内容の一端についてご紹介させていただきます。
総会の冒頭、日商の三村会頭からは、「新たな日本再出発の礎を築く」と題したその挨拶の中で、今こそ日本の再出発に向けて本格的な成長戦略の出番であり、我が国の潜在成長力を引き上げるため、資本の蓄積、労働力の確保、生産性の向上対策などサプライサイド政策の展開が必要である。このため、企業には、これまでの貯蓄主体から本来の投資主体としての行動が期待されており、とりわけ、地域経済の中核的役割を担う中小・小規模事業者が事業を力強く推進できることが大変重要であるとの発言がありました。最後に、三村会頭は、我が国が直面している「人口急減と超高齢化の加速化」と「地方疲弊の深刻化」といった構造的課題に対し、商工会議所が一丸となってその克服に取り組み、地方創生をけん引すべきであり、その切り札として観光の推進、農商工連携の一層の加速化が不可欠であるとの認識を示されました。
 また、来賓として臨席された安倍総理大臣からは、三本の矢が奏功し景気は改善しているものの、苦境にある小規模事業者も少なくなく、コスト転嫁対策、下請け対策等を精力的に実施する旨の表明がありました。さらに、総理は、経済の好循環に向けて賃上げの浸透の必要性を強く訴えるとともに、地方の創意・工夫を発揮した地方創生について、商工会議所が果たす役割に大いに期待していることに言及されました。
総会記念講演では、元総務大臣、日本創成会議座長の増田寛也氏が「地方や民間主導による地方創生に向けて」のテーマで、人口減少、「地方消滅」といった危機的状況の下、若者に魅力ある労働環境の創出、地方大学の活用による健康的、自立的居住環境の形成などの必要性と商工会議所への期待について、その思いを語られました。
 さて、犬山は、年間入場者数が50万人を突破した犬山城やユネスコ無形文化遺産登録候補である犬山祭車山行事を始めとする様々な観光資源があり、近時、注目される機会が増えております。犬山商工会議所におきましては、従来から提唱しております農商工連携の推進に、観光の振興を加えた、「農・商工・観連携」を新たに標榜し、犬山における地方創生に取り組んで参る所存でおります。なお、先月本誌で触れました、'地方創生版'プレミアム商品券事業は、市当局のご高配を得て、プレミアム率20%で総額2億9千4百万円分の商品券を7月上旬に発行する運びとなりました。
 本年度は、犬山創生に向け、やれることは何でもやるの気概をもって、諸般の事業を実行いたしますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

今こそ、プレミアム商品券

2015年04月 1日

我が国の景気が持ち直しつつあるようであります。
3月9日に公表された10-12月期のGDPは、年率換算で1.5%増となり、3四半期ぶりにプラス成長となりました。円安により輸出が増加基調に転じるとともに消費税引き上げによる需要の反動減も一巡する中、生産にも回復の動きが出ております。また、昨今の原油価格の下落は、エネルギー価格の低下などを通じて、企業業績の改善や家計の実質所得の押し上げに寄与することが期待できます。こうした景気動向を反映し、株価は上昇しており、2月中旬には1万8千円を超え、リーマン・ショック前の水準を回復し、今や2万円に迫ろうかという状況になっております。
こうした中、中小企業に限って見れば、「都市部での回復が全体を押し上げる形になっており、地方の中小企業にあっては、コスト増加分の価格転嫁の遅れや個人消費の鈍さが業況改善の足かせ」(商工会議所2月LOBO調査結果)となるなど、厳しい状況が続いております。犬山商工会議所といたしましては、当地域中小企業の持続的発展を目指し、中小企業個々の課題を踏まえて伴走的な支援を展開することとしております。
折しも、地方創生の一環として、国は、地方における消費喚起等の対策用に2500億円の交付金を平成26年度補正予算に盛り込み(2月3日成立)、当該交付金を各自治体に配分することを決定しました。
この交付金の活用方法としては、プレミアム付き商品券事業が推奨されており、犬山市においても、27年度、「地域消費喚起・生活支援型交付金事業」としてプレミアム商品券の発行を当商工会議所に委託実施する計画であります。
今回の商品券事業は、地域の実情に配慮しつつ、「景気の脆弱な部分にスピード感をもって的を絞った対応」が求められており、政策効果がより高いものとすることが重要であります。現時点においては、プレミアム率は、事業の趣旨及び近隣自治体の動向等を踏まえると20%が妥当であり、事業規模は、3億円近くになるものと考えております。
いずれにしましても、商品券事業の成否は、先ずは消費者にとって如何に魅力のあるものとするかにかかっているため、今後、犬山市当局を始め関係の方々との調整を重ね、事業設計を進めることとしております。
本商品券事業が、これをテコに当地域の消費を喚起、誘発し、中小商工業の景気回復を実感できるものとし、地方創生の第一歩となることを期待し、出来うる限り早期に事業を実施するよう努めて参りますので、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。 

城下町の復興に向けて

2015年03月 1日

去る1月11日、城下町地区において発生した火災は、6棟を全・半焼する大火となり、忌まわしい不慮の災禍として、私どもの心に刻まれるものとなりました。 幸いけが人等はありませんでしたが、被災された方の心的、物的被害は計り知れないものがあり、心よりお見舞いを申し上げるとともに、先行き、一日でも早い復興が強く望まれるところであります。
 被災地の復興は、建物等ハード面での現状を回復(復旧)すればそれで良いというものではありません。
被災された方々は、その土地、建物等を中心に築かれた社会関係の下でそれぞれの生活を営まれてこられた訳であり、復興の目的は、第一義的には、災害規模の大小はあれ、被災により損なわれたこうしたかけがえのない社会関係を再構築することではないかと思っております。しかし、現実的には、被災地の被害状況や被災生活を踏まえ、かつ、被災地における近い将来の社会的な変化・趨勢を考慮、先取りしつつ、新しい社会関係の構築(生活再建)に進まざるをえない場合もあろうかと考えております。また、こうした復興を進める中、東日本大震災では様々な復興モニュメントが製作されておりますが、このたびの城下町火災においても、被災した物の一部を保存しモニュメント化することにより、災禍を末永く記憶し、これを後世に伝えるとともに、失われた大切な懐かしい記憶を呼び起こす縁(よすが)とすることも一考かと思っております。
いずれにせよ、行政を始めとした支援機関・団体にあっては、被災者の方々の復興に向けた思いを充分に汲みつつ、早急に、まちづくり支援に取り組んでいかなければなりません。
 犬山商工会議所といたしましても、火災の重大性に鑑み、緊急相談窓口を設け、
被災された事業者からの事業再建・継続に係る相談等に応じているところであります。
 今後、犬山市等における復興支援計画が明らかになる中で、これと連携して必要な支援を実施して参る所存でおります。また、現在、犬山まちづくり㈱で「復興基金」が計画されておりますが、会員の皆様には、その募集の開始をまってご案内することとしておりますので、よろしくご協力のほどお願いいたします。

国際友好平和大国

2015年02月 1日

新春を迎えて、少し考えてみました。『日本はこれからどの方向に、どこへ行くのでしょうか』

経済大国、軍需大国、宗教大国、独裁大国、農業大国、漁業大国、林業大国、エネルギー大国、技術大国、いかなる大国の前にも平和大国を目指さなければなりません。平和の為の経済であり、平和の為の軍需であり、平和の為の宗教であり、平和の為に独裁が必要な時も有るかもしれません。

ゴルバチョフ首相は、ソ連を民主化する為には、強力な独裁者が必要であると自ら初代ソ連大統領になり、民主化を押し進めました。最近になってイスラム国という国のことが報じられています。いかなる宗教といえどもテロ行為は許されることではありません。軍需産業の拡大を計り、巨万の富を築く死の商人の存在を容認することは絶対に出来ません。農業、漁業、林業の技術革新と拡大を計り、食料大国を目指さなければなりません。

新エネルギーの研究開発を加速させてエネルギー大国となることも重要です。日本を取り巻く海底には、多大な資源が存在しています。しかしながら、いかなる大国を目指すとすれども、一番大切なことは国際友好平和大国となることではないでしょうか。

「地方創生」に期待!

2015年01月 1日

明けましておめでとうございます。
平成27年の新春を迎え、お慶びを申し上げるとともに、新しい年に期するところの一端を申し述べさせていただきます。
昨年は、アベノミクス2年目ということで、経済の回復、デフレからの脱却の道すじをたどりつつ一喜一憂する状況であったと感じております。地域の中小企業にあっては、4月に実施された消費税率の引き上げによる消費需要の減退からの回復力が弱いことに加え、円安による輸入物価の上昇に伴う原材料費等の高騰を背景に、事業収益の改善が進まず、依然として厳しい状況を脱し切れておりません。また、消費税再引き上げの是非を判断する材料の一つとされた7-9月期のGDPが、確定値において年率換算でマイナス1.9%と大方の市場予測に反し下方修正となった背景といたしましても、中小企業の業況回復からの遅れが指摘されております。
こうした中、国においては、重要政策課題として掲げる「地方創生」を実現するためには中小企業の活性化が不可欠であるとの観点から、「まち、ひと、しごと創生本部」を立ち上げるとともに、「中小企業需要創生法」を成立させ、地域の中小企業を支援する体制の構築が進められております。
このような状況の下にあって、当地商工業者の活力強化を支援する上において、当商工会議所が果たさなければならない役割は、これまで以上に大きなものになっていると認識しております。これを踏まえ、当商工会議所といたしましては、地域商工業者の声を聞き、商工会議所の活動に反映させることを基本としつつ、組織力及び財政・運営基盤の強化を通じた会員サービス事業の充実に努めるとともに、日本商工会議所と連携した関係機関への提言・要望活動の推進、産業振興・観光振興の推進、他地域の商工会議所等との交流・連携活動を推進することとしております。
 とりわけ、中小企業の大宗を占める小規模事業者に対しましては、先に成立、施行されている「小規模基本法」及び「小規模支援法」を活用して、その持続的発展に向けた伴走型支援を着実に実施して参ることとしております。
 戦後再生した我が国も古希を迎える本年、新たなる日本再生を確たるものとするための第一歩を当地犬山において踏み出す所存でおります。
 皆様方のご支援、ご協力を切にお願い申し上げます。

「ハロウィン緩和」大歓迎

2014年12月 1日

 10月31日と言えば、知る人ぞ知る「ハロウィン」の日、近年、我が国においても一大行事化しており、2014年の市場規模は、1,100億円と推定され、今やバレンタイン市場規模を上回るまでになっていると言われております。
 この日、日銀は、「ハロウィン緩和」と呼ばれることとなった、追加の金融緩和を決定しました。その効果はてき面で、株価は暴騰、円は急落と、市場は、お祭り会場さながらの状況を呈したことは、記憶に新しいところであります。今回の金融緩和措置の背景として、消費税率引き上げ後の需要の落ち込み等で、物価の上昇が鈍化しており、日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現が危ぶまれる事態となっていることが示されております。要するに、長年にわたり国民に浸透したデフレマインドを払拭することがその最大の狙いである訳であります。今後、今回の株高、円安の効果を、個人消費の回復や企業の設備投資の増大など実体経済の改善につなげられるかどうかが我が国経済再生のポイントであり、正にこれからが「正念場」であると、私なりに気が引き締しまる思いでおります。
 さて、同じ10月31日、私は、沖縄県石垣市で開催される「石垣島まつり」に参加するため、同市を訪問いたしました。本年は、第50回の節目に当たり、「ゆかりのまち・親善・友好都市交流会」など記念セレモニーも開催される盛大なものとなり、まつりの期間中、石垣市商工会との絆を強くするなど有意義に過ごすことができました。
ここで、改めて、石垣市(島)について触れさせていただきますが、石垣市は、石垣島と尖閣諸島で構成される、日本最南端、最西端に位置する市で、人口48,870人、八重山地域の行政、経済、文化等の中心地であります。主な産業は、農・水産業、畜産業及び観光業であり、サトウキビ・パイナップル・マンゴー、本まぐろ・かつお、石垣牛・アグー黒豚などが名産品として知られております。観光立市宣言を掲げる同市(石垣島)は、ニューヨークタイムズが本年1月に発表した「2014年に行くべき52の場所」の18位にランクインされており、新空港「南(ぱい)ぬ島石垣空港」が開港したこともあり、昨年、石垣をはじめとした八重山への観光客数は、過去最高の94万人にのぼり、観光消費額も580億円を記録しました。ちなみに、一昨年の犬山市への観光客数は、593万人、観光消費額は、約134億円との調査結果がありますが、彼我のこの差にはちょっと考え込まされるところであります。また、石垣市商工会では、本年、石垣島の資源を活かした事業を支援するため、その資金をクラウドファンディングにより調達する「石垣島ファンド」を構築するなど、先進的な取り組みを行っております。
このように、石垣市では、内外から人の流入が増え、これを商機とした事業展開を図る気運が高まっておりますが、今回の訪問では、その活気にあふれた姿を見聞し、良い刺激を受けたことを実感したところであります。
このたび、こうした2つの「おまつり」に出くわし、感慨も新たに犬山に帰ってきたことを思い出す次第であります。

犬山祭、ユネスコ無形文化遺産登録へ!

2014年11月 1日

 10月1日に発表された日銀短観(9月分)によれば、大企業の製造業における業況判断DIは、プラス13と前期から1ポイント改善しましたが、非製造業では6ポイント悪化し、プラス13となりました。一方、中小企業では、製造業がマイナス1と前期から2ポイント悪化、非製造業も2ポイント悪化しDIは0となりました。商工会議所が実施した9月の早期景気観測(LOBO調査)においても、業況DIはマイナス24.2と前月から3.7ポイント悪化し、採算DIもマイナス25.8と1.7ポイント悪化するという結果となりました。この背景として、円安の進行に伴うエネルギー・原材料コストの上昇に加え消費税引き上げに伴う需要減退からの回復の遅れが指摘されております。
こうした中、9月27日、犬山商工会議所が発売を開始した本年度2回目のプレミアム商品券は、午前中には完売となり人気の高さをうかがわせましたが、これによる市内の消費需要の下支え効果が期待されるところであります。
 さて、秋の犬山お城まつりも近づき、車山揃えも待ち遠しい時節になりました。ご承知のとおり、犬山祭の車山行事は、「山、鉾、屋台行事」として全国の同種行事31件とともに一括して、ユネスコの無形文化遺産への登録を申請中であります。予定では、平成28年11月に開催される政府間委員会における審査を経て決定される運びとなっております。
 近時、地域の"たから"である文化遺産を地域のにぎわいの創出、まちづくりに活かす必要性が喧伝されております。安倍内閣は、その「日本再興戦略」において、「地域の文化財を観光資源として積極的に発信し活用する」ことを提唱しております。
 文化には力が、人々に元気を与え、地域社会を活性化させ、魅力のある社会づくりを進める力があると言われております。こうした意味において、「暦のごとく生活の一部となり、コミュニティの核となり、多くの人々に興奮と感動を与える」犬山祭は、犬山に更なる飛躍をもたらすポテンシャルを秘めた文化遺産であると言えます。
 しかし、先に犬山市が東海3県及び東京、大阪の居住者を対象に実施した「犬山の観光に関する基礎調査」では、犬山祭の知名度は、犬山城、明治村等に比べ、極めて低いという結果が出ております。こうした折、ユネスコ無形文化遺産への登録決定は、その知名度を向上させる上で大きな力となると考えております。
 ちなみに、ユネスコ無形文化遺産へ登録されるためには、ただ古い歴史があるということではなく、地域の人々が自らの文化として、守り、残したいという強い意志があるということが求められております。早期登録に向けた皆様方の熱いご支援をお願いする次第であります。

『地方創生・犬山創生』

2014年10月 1日

 先ごろ、4~6期のGDPが発表されましたが、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動減などから、前期比1.7%の減少となり、予想されたこととは言え、景気の落ち込みが数字的に裏付けられました。直近では駆け込み需要の反動も和らぎ、7~9期にはプラス成長になることが期待されております。しかし、地域中小企業にあっては、エネルギー・原材料価格の高騰など経営環境の悪化が依然として懸念される状況にあります。
 さて、去る5月、日本創成会議が「消滅可能性都市」リストを公表したことは記憶に新しいところです。これは、20~39歳の女性の人口を地域の将来を決定づけるものととらえ、2010年から2040年の30年間において当該人口の減少率が50%を超える自治体を、消滅する可能性があるとしたものです。犬山市は、幸いこのリストには入っていませんが、当該減少率が24.4%と推計されており、人口減少問題を免れることはできません。元より、人口問題を解決する道は、少子化対策に限定されるものではなく、正に地域の再生・活性化の実現そのものが重要であると言えます。
 こうした中、第2次安倍改造内閣の発足と同時に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、国を挙げて人口問題の克服と地域活性化に取り組む体制が整いました。今後、具体的な政策の立案における石破創生担当大臣のバイタリティとリーダーシップに大いに期待するところであります。
 犬山商工会議所におきましても、小さくともゆとりをもって安心して暮らせる地域づくりを目指し、諸事尽力しているところであります。こうした折、先般ご紹介した大型複合商業施設の当市への誘致が諸般の事情により断念せざるを得なくなったことは、地域経済の活性化、雇用の創出、人口の増加など様々な面での効果が期待されただけに残念なことと思っております。
 当面の取り組みといたしましては、市制60周年記念事業の一環に位置付けられた「プレミアム商品券事業」の第2弾秋バージョン、同じく記念事業として、「つながりでチカラを」をテーマに掲げて企画した「第11回犬山市産業振興祭"ワイワイ犬山フェスティバル"」などを、総力を上げて実施し、地域の活力の創生につなげていきたいと考えております。
 また、先に実施した「会員増強キャンペーン」は、皆様のご協力の下、目標を大きく上回る成果を上げ、組織率を61.3%に伸ばしました。加えて、かねて課題としておりました、「経営革新等支援機関」の認定認可を8月27日付で得ることができ、中小企業支援体制を充実させる面において一歩を進めました。
当会議所といたしましては、今後とも組織・支援機能面での強化を図りつつ、会員を始め地域の皆様方のお知恵、お力をお借りして、言わば"犬山創生本部"として、犬山の再生・活性化に向けた事業にまい進して参る所存でおりますので、よろしくお願いいたします。

「 尊敬される日本 」

2014年09月 1日

 世界中いたる所、旅をして日本へ布教に訪れた、フランシスコ・ザビエル牧師の言葉に「日本人ほどすばらしい民族は今まで見たことがない」そして又明治維新後の日本政府が初めて設置したフランス大使館に赴任したクローデン大使は「もし世界で一つの民族のみ残すとしたならば、私はすかさず日本民族を選ぶであろう」と言って居ります。それほど日本に対す評価は大変良いものであったことが伺えると思います。
 今日、現在はどうでしょうか。戦後70年にもなろうとしています今日、戦後の教育、経済最優先の社会構造、日本古来の伝統文化の現状等を考査する上で十分に正しく伝承されて来ていると言えるでしょうか。敗戦という節目が日本の変貌の時であったのではないでしょうか。
 平和産業だけではどうしても経済のボリュームが拡大出来ない、そこで軍需産業を拡大することで経済発展をして行こうと日本の産業界が考えた時、日本の技術力、能力を持ってすれば大きく前進出来ると確信します。しかしながら、その日本の発展の姿は世界の国々はどの様に思い、どの様な見方に変わるでしょうか。
 経済大国日本を目ざすのではなく、尊敬される日本を目ざすべきではないでしょうか。平和産業のみで世界中の人々にお役に立つ事を目ざす日本であり産業界であってほしいと強く念願致します。
8月15日の終戦記念日に当り一筆、思いを述べさせて頂きました。

「武力戦争」はやめ「経済戦争」を!

2014年08月 1日

 会議所の事業も第2四半期に入りました。消費税引き上げ後の需要減も底打ちの兆しが現れており、今期、景気は、緩やかに改善するものと見ております。
 さて、ご案内のとおり、政府は、7月1日、集団的自衛権行使を限定容認する閣議決定を行いました。この集団的自衛権の行使問題につきましては、憲法の解釈、行使の要件、戦争抑止効果などを巡って、それぞれ賛否の意見が分かれるところとなっております。
もとより、私は、国どうしが武力をもっての戦うことは避けるべきですが、経済面における戦いは、ある意味必要なことであると考えております。今や、我が国の津々浦々までグローバル化の波が押し寄せており、とりわけ、経済活動面においては、TTPに象徴されるように、その影響は、極めて大きなものとなっております。これは、国の産業経済の存立を賭けた戦い(経済戦争)に直面しているということであります。グローバルな規模において、エネルギー・資源の確保、人材の獲得、技術開発等における競争がし烈さを増す中において、これが経済戦争である以上、国と企業がそれぞれに勝つための戦略を立て、それを着実に実行することが必要であります。こうした流れの中で政府が推進している「日本再興戦略」は、必要な施策の追加や内容の深堀により「常に進化していく成長戦略」と位置付けられていることから、我々商工会議所には、我が国の経済成長の実現を目指して、現場の声に基づいた政策提言活動を実施していく責務があるものと考えております。
 日本成長戦略の要は、全国385万の中小企業の活力を強化することであります。中でもその9割を占める小規模事業者は、地域の経済や雇用を支える重要な存在であり、経済の好循環を浸透・拡大させていく上において、その活力を最大限に発揮することが必要不可欠であります。このため、商工会議所は、地域中小企業の成長への挑戦、とりわけ、小規模事業者の「事業の持続的発展」を、なお一層強力に後押ししていかなければなりません。折しも、6月20日、「小規模企業振興基本法(小規模基本法)」及び「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律(小規模支援法)」が成立し、小規模事業者を支援する体制が整備されました。今後、両法に基づく支援内容・支援方法の決定を待って、具体的な支援に取り組んでいくこととしております。
 また、当商工会議所におきましては、こうした取り組みと併せ、現在、「会員増強キャンペーン」を実施しております。会員の増大は、自主財源を確保し、会議所の事業運営基盤を強化する観点から非常に重要な課題の一つであります。皆様の力強いご理解・ご協力をお願いする次第であります。

大型商業施設を地域資源に

2014年07月 1日

 地域の商業は、長きに亘ったデフレ環境下での売上げの減少に加えて施設の老朽化が進んでおり、経営環境は依然として厳しいものがあります。
こうした中、近時、大型商業施設の新規開業が再び増加する傾向にあります。
当地犬山におきましても、橋爪東の国道41号沿い約11万坪のエリアにおいて、民間による複合商業施設と住宅の開発計画が持ち上がっております。現状、同エリアは、農地で、市街化調整区域であるため、開発するには、市街化区域への編入などの手続きが必要であり、今後、行政サイドの動向が注目されるところであります。
 こうした大型商業施設の開発が実現すれば、商業活動の活発化や施設の建設に伴う設備投資需要の発生等による地域経済の活性化に加え、地域の雇用創出、住宅入居者の流入と定着に伴う市人口の増加といった諸効果が期待でき、私としては、歓迎すべきことと思っております。
しかし、大型商業施設の新規立地には、課題も多々あります。とりわけ、地域商業への影響とこれへの対応がその最たるものではないか考えます。これは、言わば古くて新しい問題であり、決定的に有効な解決策は見いだせないのが実情であります。
私は、既存の商店には、大型商業施設には無い個性、顔、伝統といったそれぞれの特性・魅力が備わっているはずであり、これらを今一度よく検証して、商業的な役割面と商店・商品の魅力面における差別化を鮮明にして、消費者に訴えていくことが重要であると思っております。大型商業施設の出店を奇禍ではなく奇貨ととらえ、自らの事業活動の在り方を再構築すべく努力してみることに尽きるのではないかと考えております。
 一方、大型商業施設に対しては、それが持つ「大きな空間に多くの人が集まる」という特性を活かして、市内のいろいろな組織・団体と共催、連携した各種の物産展やイベントを実施し、地域商業の振興、地域の活性化を進めていく観点から、当該大型商業施設の運営者との協力関係を構築するとともに、目先の収益のみを追求した、いわゆる「焼畑商業」的経営を脱し、自らのCSRを自覚した事業運営の実施を求めていきたいと考えております。こうした大型商業施設と地域社会との共存に向けた活動において、商工会議所は、中心的な役割を担っていかなければならないと考えております。
 当地の開発計画につきましては、大型商業施設を地域資源の一つと位置付け、これとの共存・協力を通じた地域づくりをどうするか検討しつつ、合意形成を図っていくべきであると考えておりますので、皆様のご理解、ご支援をお願いいたします。













犬山商工会議所

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